アラムート地区のキリムからストリップ編みまで;長年の生きた伝統を継承するガズヴィーンの手工芸
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イラン北西部に位置し、テヘランから西へ130キロメートル離れたカズヴィーン州は、豊かな史跡や建築遺産を有すると共に、優れた手工芸品や芸術的技能の伝統も誇っています。
(last modified 2026-09-09T11:43:32+00:00 )
9月 09, 2026 20:28 Asia/Tokyo
  • アラムート地区のキリムからストリップ編みまで;長年の生きた伝統を継承するガズヴィーンの手工芸
    アラムート地区のキリムからストリップ編みまで;長年の生きた伝統を継承するガズヴィーンの手工芸

イラン北西部に位置し、テヘランから西へ130キロメートル離れたカズヴィーン州は、豊かな史跡や建築遺産を有すると共に、優れた手工芸品や芸術的技能の伝統も誇っています。

プレスTVによりますと、これらの技能の多くは世代から世代へと受け継がれており、この無形遺産の保存、実行、継承においては女性が特に重要な役割を果たしてきました。アラムート地区の色鮮やかな絨毯や繊細な細帯ストリップ編みから、独自の粗目生地製造や錦繍まで、それぞれの手工芸品はこの州の歴史、文化、先住民の知識の伝承を反映しています。

しかし、これらの工芸品は決して単なる過去の遺物ではありません。今日、カズヴィーンの職人らは、伝統的な技法、模様、デザインを保存しつつ、現代の嗜好や市場に合わせてそれらの調節・適応に努めています。こうして、彼らは古くから伝わる技術に現代生活における意義ある地位を与え、この伝統の単なる存続のみならず、進化の継続を確固たるものにしているのです。

 

では、以下に、カズヴィーンで最も有名な伝統工芸品とその背景を詳しく見ていくことにしましょう。

キリム:遊牧民の織物から発祥した色彩豊かな遺産

キリム(ペルシャ語ではゲリム)は伝統的な平織りの布地・織物で、床材、壁掛け、毛布替わりとして使用されます。その材料としては伝統的に羊毛、山羊毛、絹などの天然繊維や他の家畜の繊維が使われています。

キリムは、かつては主に実用的な用途があることから非常に価値あるものと評されていましたが、現在では装飾的な芸術作品としても高く評価され、現代の都市部の住宅にも欠かせない存在となっています。

伝統的なキリムは一般的に、天然の植物染料で染色されます。もっとも、場合によっては職人が完成した作品を茶葉やクルミの殻で洗い、見栄えを良くしたり、色を濃くする、また自然な古びた風合いを出すといったこともあります。

一般的なカーペット・絨毯とは異なり、キリムは多くの場合、あらかじめ決められた模様を持たずに織られます。実際、大半のデザインは製作者が作業を進める中で直感的に形作られ、熟練の技、経験、そして創造的な表現を通し、模様として生まれてくることがほとんどです。キリムは通常、ラグよりも小さく、3メートル×4メートルを超えることは稀です。

キリム、ジャージム、カーペット、ラグなどの織物の製造はガズヴィーンにおいて太古の昔から、特に地元の部族や遊牧民の間に流布していました。

 

これらの伝統の中でも、アラムート地方のキリムは、その印象的な模様、鮮やかな色彩の組み合わせ、そして独特の視覚的特徴で特に名声を博しています。この生産品が持つ特徴は、製作者の創造性とこの地域の文化的遺産の両方を見事に反映しています。

ストラップ(細帯)編み;繊細な手織りリボン

アラムート地区が誇るもう1つの伝統手工芸品として、ペルシャ語でパンバーフィーと呼ばれテープ織りとしても知られるストラップ(細帯)編みがあります。伝統的な織物芸術のカテゴリーに分類されるこの芸術においては、通常幅 1 ~ 2 センチメートルの細い織物ストラップが製造されます。

これらのストラップはバンドのようにも見え、見かけは繊細ながらも非常に強く耐久性があります。この手工芸品は、旧来からこの地域の女性によって製作されており、特に衣類やファッションに広く応用されています。特に衣服の襟、スカートや袖の端、ベルト、靴ひも、携帯ストラップ、ネクタイ、乳幼児用の抱っこ・おぶい紐などの装飾にも使用できます。

また、この手工芸品のうち、より太い糸で作られたものは、テントの固定のほか、馬やラクダの口輪の製作など、より実用的な用途にも使えます。

この手工芸の起源はほぼ不明のまま現在に至っており、その出現の正確な時期、あるいはこの技術がイランに伝来した状況についてさえも明確な記録は存在しません。しなみに、この種の手工芸品の最古の例は、古代エジプトのものと考えられています。

 

この工芸品は天然繊維、場合によっては合成繊維を用いて作られています。しかし、伝統的には製作者が使用する主な素材の1つは、地元では麻糸(植物素材の糸)として知られる絹糸でした。

独自の粗目生地製造(波織り):カズヴィーンの歴史に根ざした織物

ガズヴィーンに存在するもう1つの織物製造として、ペルシャ語で波織りを意味する、モウジバーフィという手工芸があります。これはサーチムバーフィ、マシュテバーフィ、ジーラーバーフィなどの複数の呼称が知られています。これは一種の粗目生地製造、独自の伝統的な織物技法で、その外観とモチーフはチャードルシャブと呼ばれる生地に似ていますが、そのパターンと構成はより複雑です。この手工芸の名称の由来は、縦糸の長さに沿って形成される明確で連続的なジグザグ模様と、かぎ針編みの技法に関係があるとされています。

伝統的に、この手工芸は大小さまざまな正方形に織られ、クルド語を話す遊牧民の間では紺色、オレンジ色、濃い赤色が最も特徴的な色として用いられてきました。その他にも、緑、クリーム色、黒、青、そして様々な濃淡の赤などが広く使われていました。

この手工芸はカズヴィーン地方に長い歴史を持ち、サファヴィー朝時代からこの地域で栄えてきたと考えられています。その伝統が今なお継続されていることは、この地方の織物文化の永続性と、それを何世代にもわたって守り続けてきたコミュニティの存在を反映しています。

なお、このモウジバーフィー手工芸は、2011年にガズヴィーン州の寧目でイランの国家無形遺産リストに正式に登録され、その文化的重要性と地域の伝統手工芸品における地位が認められました。

独自の錦繍・ダハイェク刺繍

そしてガズヴィーンが誇る伝統的な刺繍技術で、ペルシャ語でダハイェク(10分の1刺繍)と呼ばれる錦繍があります。この伝統工芸は装飾刺繍の特徴的な形式で、そのルーツはサーサーン朝時代にまで遡ります。ダハイェクという言葉はペルシャ語で「10分の1」を意味し、針と糸が一点を10回通過し、ステッチで生地に固定されるという技術自体を指しています。このプロセスにより、この針仕事の特徴的な質感と外観を生み出す顕著な装飾効果が生まれます。

この伝統刺繍は、衣服の縁飾り、鏡のフレーム、精巧なカーテン、取っ手やバッグ、はさみ、帽子、装飾パネル、コーランのカバー、金銭袋、ペン立てなど、幅広い品々の装飾に用いられてきました。

この技法に必要な繰り返しの縫製に耐えられることから、一般的にはサテン、カシミヤ、ベルベットなどの生地が、その強度と質感からこの手工芸の素材として好まれています。イスラム時代には、この伝統刺繍は宗教美術や装飾の一部にもなっていました。イランの芸術家らは、この技法を用いて、イスラムの聖地カアバ神殿に関連するカーテンや覆い、そしてシーア派イマームとその子孫の聖廟の装飾的な覆いを装飾していました。

 

日常生活用品や宗教芸術においてこの伝統刺繍が今もなお存在し続けていることは、イランの織物伝統、職人技、そして文化的表現の間に存在する永続的なつながりを物語っているといえます。

無形文化遺産の宝庫

もっとも、これらの手工芸品はカズヴィーン州の豊かな伝統工芸の氷山の一角に過ぎません。現在までに、カズヴィーン州の44の伝統芸術と技術が、イランの無形文化遺産として正式に登録されています。

これらには、先に紹介した波織り、パッチワーク、伝統的な製本、皿作り、イスラム建築で使われる持ち送り装飾・ムガルナスの製作、銅細工、ステンドグラス、絨毯織り、キリムやジャージームの製造、そして伝統的な手製の靴・ギーヴェ、州内ターケスタン地方の伝統的なギーヴェ刺繍などが含まれます。

これらの伝統はすべて、カズヴィーンの工芸職人らが幾世代にもわたって受け継いできた、実に多様な技術の結晶であり、特に伝統的な織物や刺繍においては、女性が重要な役割を担っています。

現在、この州には少なくとも7500人の芸術家や職人が伝統工芸に従事しています。

カズヴィーン州伝統工芸・文化遺産・観光総局のマルヤム・マハダヴィ局長によれば、この分野は昨年1665人の雇用を創出し、160万ドル相当の美術品の輸出に貢献したということです。

こうした統計的な数字は、カズヴィーンの伝統工芸品が、同州の文化遺産の重要な一部であると共に人々の生活を支え、地元の職人技を地域外の市場と結びつける活気ある経済セクターでもあることを裏付けています。

長年にわたるイランの書道の伝統の中心地・カズヴィーン

さらに、ガズヴィーン州はイラン書道の中心地でもあり、宗教学校、サファヴィー朝の王室の庇護、師弟制度によって形作られた数世紀にもわたる芸術的伝統を守り続けており、多くの機関や若手芸術家らがその豊かな書道遺産を継承しています。

伝統を守り革新していく女性の存在

カズヴィーン州の手工芸産業において、女性は特に重要な役割を担っています。

カズヴィーン州女性・家族問題局のマルヤム・ビードハーム局長によれば、州内各地で多くの女性が手工芸産業に従事しており、工芸・文化遺産分野だけでも1万2000人以上の女性が就労許可証を保有しているということです。また、このことはこの州内の女性の生産能力の高さを物語っているといえるでしょう。

多くの女性職人らは、家庭や地域社会でこれらのスキルを伝承し、母親や祖母から学び習得しています。このことから、彼女たちは織物や裁縫の技術を超えたものを維持しているのです。こうした女性職人らはこれらの工芸品に秘められた独自のパターン、カラーパレット、先住民族の知識を保守しているのです。

クルミの殻、タマネギの皮、桑の葉、自生植物などの天然染料を手製ストラップ編みに使用すること、幾何学的で直感的なモチーフを世代から世代へと受け継ぐことは、最終製品に残る知識の例だといえます。しかし、女性は決して単なる伝統の「守護者」に留まらず、これらの伝統を現代経済の一部へと変化させる助けにもなっているのです。

伝統工芸を存続させることは、決してそれを過去に封印することではありません。製品の用途の工夫、新しい素材や組み合わせの試運転、都市や現代市場への伝統工芸の導入により、職人たちは受け継がれてきた技術と現代生活を結びつける新たな方法を見出しています。

今日、カズヴィーンの手工芸コミュニティは、伝統遺産が過去の遺物ではないことを証明しています。伝統遺産はもはや進化・適応し、現代生活の中で新たな役割を見出し続ける、生きた伝統なのです。

織物製作者や刺繍職人は、織り、染色、模様などの伝統的な手法を固守しつつ、同時にそれらの技術を駆使して、今日の消費者の好みやニーズを満たす製品を生産しています。たとえば、ラグはもはや床材としてのみならず、現代のインテリア装飾の要素と化しています。同様に、手製ストラップ編みで作られる繊細なストラップ・リボンは、現代の衣類、アクセサリー、ファッションデザインにも応用可能です。

このように、カズヴィーンの工芸品は今や、過ぎ去った時代の遺物以上の存在となっています。それらは、継続性、創造性、革新性によって支えられ、伝統的な知識を現代社会において意義深い位置づけへと導く新世代の芸術家らによって受け継がれてきた、まさに生きた遺産だといえるでしょう。

 

 


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