視点;イラク民兵組織とアメリカ
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米無人機によるイラク民兵組織の拠点への攻撃
29日日曜夜、シリアと国境を接するイラク西部アンバール州にある同国の民兵組織、ハシャド・アルシャビの拠点が、アメリカの無人機による攻撃を受け、80人近い殉教者と負傷者を出しました。
米国がハシャド・アルシャビを標的にしたのは今回が初めてではありません。米国と同盟国はこれまで何度も、ハシャド・アルシャビを略奪者、モラルへの違反者、分裂主義者と非難し、テロ組織ISISに立ち向かうこの民兵組織の役割に疑問を呈し、何度も同組織の拠点を軍事攻撃しています。ここで浮上する重要な疑問は、「米国はなぜ、この民兵組織を敵視するのか?」ということです。
第1の重要な理由は、ハシャド・アルシャビと米国のアイデンティティが真っ向から対立することが指摘できます。この民兵組織は、イラク国内で民兵を動員する役割を担っています。そして、その力を地域に展開する抵抗の枢軸が目的を遂行するために投じています。もう一方の抵抗の主要な敵が米国なのです。
ハシャド・アルシャビは抵抗というアイデンティティに照らし、米国が地域に干渉する行為全般に、またイラクに特化した形でも反発しています。また、シリアのアイノ・アルアサド基地に最も近い、イラク領内のガーイム基地を経由するイラクーシリア間の米軍の往来を監視しており、米軍に一連の制限を生み出しています。
さらに、この組織はイラク国内に存在するイランに最も近い勢力とされ、一方で米国は世界最大のイランの敵とみなされています。米国防総省は、今回ハシャド・アルシャビの基地に夜襲を仕掛けた後、「ハシャド・アルシャビに属するイラクのヒズボッラー部隊はイランと緊密な関係にある」と表明しました。
第2の理由は、「ハシャド・アルシャビへの米国の敵対はシオニスト政権イスラエルの利益確保のため」と指摘することができます。イラクで同民兵組織が台頭してくることは、各抵抗グループが地域での位置づけを高めることを意味します。これは西アジア地域の米国の最大の同盟政権・イスラエルの利益に反することにつながります。この観点から、イスラエルのカッツ外相は、米国がハシャド・アルシャビを攻撃したことを歓迎すると同時に、これを1つの転換点と呼びました。
第3の理由は、ハシャド・アルシャビに対するアメリカの敵対が、イラクにおける同組織の権力掌握を妨げることにあるということです。米国とイスラエル以外にも、サウジアラビアがこの民兵組織に対する最も重要な反対者とされています。ハシャド・アルアシャビは確かにアラブ系の勢力であるものの、サウジはレバノンのシーア派組織ヒズボッラーやパレスチナ・イスラム抵抗運動ハマス、そしてイエメンのアンサーロッラーを反サウジのアラブ運動とみなしており、ハシャド・アルシャビに対しても同様な捉え方をしています。このため、米国はサウジの政策に同調しないアラブ系勢力の台頭を食い止めようと考えているのです。
第4の理由は、ハシャド・アルシャビがイラクにおいてISIS掃討の真剣な意志を固めていることが挙げられます。しかし、その一方で米国はISISの完全な掃討を追求するどころか、ISISの戦闘員をシリアからイラクに入国させようとしています。今回米軍無人機に攻撃されたハシャド・アルシャビの拠点がある地区は、かつてISISの戦闘員数百人をイラクに移送させた経由地だったとする事実があります。
これらの理由で、米国はハシャド・アルシャビに「敵対勢力」というレッテルを張り、この民兵組織に対する軍事作戦に血道を上げていると言えるのです。
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