イランが、英独仏によるスナップバック再発動を違法とみなす理由とは?
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欧州トロイカとされるフランス、イギリス、ドイツの首脳ら(左からマクロン仏大統領、スターマー英首相、メルツ独首相)
いわゆる「欧州トロイカ」と呼ばれる英独仏によるスナップバック(対イラン国連安保理制裁の一斉再適用を可能にする仕組み)の再発動プロセスの開始に対処するため、国連安全保障理事会会合が29日金曜、非公開で実施されました。
【ParsTodayイラン国際】イールヴァーニー・イラン国連大使はこの会合後、欧州3カ国によるスナップバック・プロセス開始の発表は「違法」であり、「拒否」されるべきだとして、「この行動はJCPOA包括的共同行動計画(通称:対イラン核合意)紛争解決メカニズムを迂回するものだとの見方を示しました。また「イランは外交に尽力しているが、脅迫や強制の下では決して交渉しない」とし、「欧州トロイカの行動はイランを脅迫し、政治的圧力をかけるためのものに過ぎない。また、フランスとイギリスによる安保理の非公開会合開催の要請も、違法かつ政治的動機に基づく行動を正当化し、安保理を自らの目的のために、そしてイランを不利な立場に追い込むための道具として利用するために提起されたものだ」と述べています。
イランは、欧州によるスナップバック発動を拒否する理由をいくつか列挙しています。まず第1に、JCPOAを承認した安保理決議2231は、協定参加国によるスナップバックを規定しているものの、欧州は実際にはJCPOA維持のための効果的な行動を一切取っていません。またイランが、欧州諸国が協定本文に定められた特定の条件を満たさない限り、この手段を行使できないと主張している一方で、その条件は未だ満たされていません。そして、イランは「JCPOAに基づく責務履行を削減する措置は他国の義務違反への対応措置であり、協定条項の枠組み内で実施されたものである」と主張しています。したがって、スナップバックを発動する法的根拠は存在しない、というのがイラン側の見解です。また、イランは「スナップバック再発動を示唆し、今まさに発動したことで、欧州諸国は国際合意を平和と安全の維持ではなく、政治的圧力の手段として利用している」と考えています。イランの視点から見て、欧州によるこのような行動は外交と交渉のプロセスを損ない、相互信頼を破壊するものです。イランはまた、欧州がJCPOA内に定められた責務を履行せず、同時にイランに対して圧力手段を用いているとして、繰り返し批判しています。
興味深い点として、欧州トロイカを代表するイギリス国連大使は29日金曜、自国の対イラン行動を正当化し、スナップバック発動までの30日間は外交の終焉を意味しないと主張するとともに「我々の提案は依然として検討中であり、我々は外交に引き続き尽力しており、イランが我々の提案に基づいて解決策を見出すことを奨励する」と表明したことが挙げられます。
所謂4+1グループとされるイランの協議相手側(国連安保理常任理事国にドイツを加えた、アメリカ以外の5カ国)であるヨーロッパの3カ国、即ち英独仏は、JCPOA核合意における責務を履行していない身でありながら今月28日、安保理に正式に対イラン制裁の復活のトリガーメカニズム(スナップバック)再発動通知を送付し、その条件を明示するとともに、今後30日間のうちに制裁復活プロセスを停止できる核合意についてイランと交渉する用意があると発表しました。
こうした中、英独仏によるスナップバック発動プロセスの開始に関して、西側と東側の三大国、すなわち米国、ロシア、中国の立場が明確に異なっていることは注目すべきものです。マルコ・ルビオ米国務長官は、欧州諸国によるこの行動を歓迎し「今後数週間のうちに、米国大統領の国家安全保障覚書第2号に基づく指示に従い、国際的な対イラン制裁と制限の解除プロセスの円滑な完了に向け、欧州諸国および安保理の他の理事国と協力する」と発表しました。
これに対し、ロシアと中国は英独仏の行動を批判し、「この行動は正当性を欠く」と表明しました。これに関してロシア外務省は、イランが長年にわたりJCPOAを忠実に履行してきたことを想起しつつ、「英独仏による安保理の対イラン制裁の復活(スナップバック)は違法であり、非難する」と表明しています。
在オーストリア・ウィーン国際機関ロシア常駐代表のミハイル・ウリヤノフ氏は、「欧州3カ国によるスナップバック発動の試みは不当な行為だ」としてこの決定を撤回するよう求めました。中国外務省も、EUによるスナップバック発動に反発し、安保理での対イラン制裁再発動は非建設的な行動であるとし、「イランの核問題は重大な段階にあり、協議と交渉を再開する必要がある」と強調しています。
興味深いことに、欧米当局でさえも英独仏による対イラン行動の有効性に深刻な疑問を抱いています。アメリカの外交シンクタンク・クインジー研究所は「欧州のトリガーメカニズム発動は賭け事同然で、対イラン外交破壊のリスクあり」と題した記事で、「欧州が協力よりも強制の道を選べば、好機は完全に閉ざされる可能性がある」としています。アメリカの外交専門誌フォーリン・ポリシーもトリガーメカニズム発動の成功に疑問を呈し、「国連安保理による制裁の復活は象徴的なものであり、イランを直接狙い撃ちにはできず、ロシアと中国もその実施を妨害する可能性がある」との見解を示しています。
したがって、スナップバックの開始によりヨーロッパは実際に手持ちのカードを使い果たした形となり、イランとの協議を継続する用意はあるものの、今後予想されるイランと米国との間接交渉においてもはや立場がなくなるものと見られます。