英紙ガーディアン:「トランプ氏への憎悪が米の新たな団結の秘訣に」
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ドナルド・トランプ現米国大統領に対する憎悪は、全米各州で同大統領への抗議を目的に路上に繰り出したデモ参加者に共通する要素となっています。
(last modified 2025-10-27T05:05:03+00:00 )
10月 21, 2025 19:40 Asia/Tokyo
  • 米国内での反トランプ・デモ
    米国内での反トランプ・デモ

ドナルド・トランプ現米国大統領に対する憎悪は、全米各州で同大統領への抗議を目的に路上に繰り出したデモ参加者に共通する要素となっています。

英紙ガーディアンが最近報じたところによりますと、与党共和党員の一部は、今月18日に行われた大規模な抗議デモ「ノー・キングス(王はいらない)」が暴力に発展すると予想していましたが、現実は全く逆のものとなりました。

【ParsToday国際】東部ニューヨークからテキサス州オースティン、カリフォルニア州オークランド、南部フロリダ州セントオーガスティンに至るまでの全米核都市で、数百万人のアメリカ市民が街頭に繰り出し、トランプ大統領の独裁的な政策への反対を表明しました。しかし予想に反して、これらの抗議デモは平和的かつ明るいムードに溢れ、政治的風刺に満ちていました。

抗議活動が始まる数日前、マイク・ジョンソン下院議長をはじめとする共和党の有力者らは、これらの集会を反米的なものと表現しようとしていました。ジョンソン議長はこれらの集会が「反米集会」で、その参加者は「マルクス主義、反ファシズム、社会主義、親ハマス」のグループに属していると主張しました。また、ミネソタ州選出のトム・エマー下院議員は、抗議活動を「民主党のテロリスト派の産物」だとし、ロジャー・マーシャル上院議員は州兵が関与している可能性さえも示唆しています。

こうした中、これらのシナリオはいずれも現実のものとはならず、暴力も軍事介入も生じませんでした。全米各地からの報道によれば、デモの雰囲気は平和的でありながらも情熱にあふれていたということです。

揶揄と怒りが混合

混雑した通りには、怒り、希望、そして揶揄が入り混じった光景が見られました。人々は文学的な引用から辛辣なジョークまで、トランプ氏とその取り巻きを揶揄する内容のプラカードを掲げていました。カリフォルニア州サンフランシスコでは、ウォルト・ホイットマンの詩を書いたプラカードを掲げた男性が、トランプ氏と故ジェフリー・エプスタインの友情を露骨に皮肉っていた女性の横を歩く様子が見られました。

多くの抗議デモ参加者は色鮮やかで膨らんだ動物の衣装を着ていましたが、これはトランプ政権の移民政策に反対するオレゴン州ポートランドの抗議活動で初めて使われた象徴的な手法で、政権が反対派から作り出していた「戦争で荒廃した国」のイメージを揶揄したものです。

第1次トランプ政権中に展開された、スローガンを連発する重苦しい反トランプ運動とは異なり、最近の「ノー・キングス」運動は冗句的でありながら、深く政治的な色合いを帯びたものとなりました。嘲笑と抗議が融合したこの運動は、恐怖ではなく嘲笑での対抗を決意した、1つの疲弊した社会の成熟の証だったと言えます。

多様な潮流の大規模な連合

批評家の間では、「ノー・キングス」運動には明確な議題・テーマが欠けていると言われています。しかし、民主社会主義者からリバタリアン、労働組合に至るまで、参加者の層が多岐にわたることは、この抗議活動の幅広さを物語っています。サンフランシスコのデモでは、農業労働組合のアステカの鷲の旗、社会主義者のバラ、そしてリバタリアンを自称する金色のプラカードを掲げた半裸の男性までが一緒に並んでいる様子が見られました。アメリカ建国の父たちの衣装を着た者、白い翼をつけた鷲の衣装を着た者、そして星条旗を身にまとった者など、参加者は実に多様性に富んでいました。

トランプ氏への憎悪;アメリカの新たな結束の鍵

こうした多様性は、権威主義に対抗するためにあらゆる立場から結集した、幅広く多様な連合の象徴だといえます。野党民主党は長年、支持基盤の過度な多様性を懸念してきましたが、トランプ氏の政策に対する共通の憎悪が、同盟の新たな絆となっている模様です。

真剣な抵抗から民間的揶揄へ

「ノー・キングス」運動は単なる抗議活動ではなく、アメリカの政治文化の変貌を反映しています。過去の運動が真剣さと怒りを基軸としていたのに対し、今回のデモは皮肉や揶揄、自由、そして市民活動が融合した形で形成されました。アナリストによれば、この抗議行動は、民主主義と法の支配という価値観に基づき、トランプ大統領の個人中心主義かつ権威主義的な政策に対抗する、一種の「リベラル人民戦線」の発端となる可能性があると見られています。

著者の解釈では、「ノー・キングス」の目的は単なるトランプ氏への対抗ではなく、「力と支配」に代わる「法と説得」のシステムの再構築にあります。人々はこれらの抗議活動に集結し、互いに自由に意見の相違を表明できる環境を守ろうとしているのです。

挑発に対する平和

デモ開始前には、トランプ支持派の連邦軍による衝突や介入の可能性を懸念する声も聞かれました。サンフランシスコでは、主催者が拡声器を使って挑発行為に抵抗し、連邦捜査官と接触しないよう人々に呼びかけており、「建物の外に制服警官がいたら、それは罠だ」との警告がなされていました。

しかし、いざ蓋を開けてみると、懸念に反してデモは平和的に行われました。ニューヨークでは、市内の5つの行政区で約10万人が参加したものの、ニューヨーク市警察は逮捕者は出なかったと発表しています。

怒り心頭のトランプ氏

おそらく、トランプ氏を最も怒らせた要素は、抗議集会の静けさと成功だったと見られます。トランプ氏は今月18日夜、自身のソーシャルメディアアカウント「Truth Social」に、戦闘機で群衆の上空を飛び、王冠をかぶり、抗議者たちにゴミを投げつける自身の姿を映したAI生成動画を投稿していました。

トランプ大統領のこうした子供じみた行動は、国民への憎悪の念を示したかったものと見られます。しかし、その日のデモに参加した数百万人もの市民は、この憎悪が双方向的なものであることを示しました。そしておそらく今回は、大統領の権威主義に対する国民の憎しみは、もっと強いものであったと考えられます。

 

 


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