NATO事務総長が欧州の対ウクライナ支援の揺らぎについて警告した理由とは?
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NATO北大西洋条約機構のマルク・ルッテ事務総長
NATO北大西洋条約機構のマルク・ルッテ事務総長が、「欧州の対ウクライナ支援が揺らいでいる」として警告しました。
【ParsToday国際】ルッテ事務総長は2025年も終わりに近づく中、ウクライナへの継続的な支援の必要性を強調し、「欧州の決意が弱まれば、欧州大陸の安全保障リスクが深刻な規模に増大する」と警告しています。また、「NATO加盟国に対するプーチン・ロシア大統領のあらゆる攻撃的行動を抑止すべく、ウクライナは強固な立場を維持せねばならない」と主張しました。
ルッテ事務総長はさらに、NATO加盟国が軍事費を増額する必要性を強調しました。これは、去る6月にオランダ・ハーグで開催されたNATO首脳会議で既に合意されている約束事項となっています。
そして、「対ウクライナ支援および、国防費の増額というこの2つの事柄を実行すれば、我々は自国防衛に十分な力を持つことになる。プーチン大統領は決して、このような措置はとらないだろう」とし、ロシアによる東欧NATO加盟国への攻撃の可能性に言及しました。加えて「情報機関の評価によれば、この措置を講じなければ安全保障状況は早ければ2027年にも危険な段階に達する可能性があるため、再軍備プロセスを迅速に実行する必要がある」と警告しています。
ルッテ事務総長は続けて、「ロシアの軍事費が高いレベルにあることは、プーチン大統領による重大な脅迫の兆候である」と指摘し、「ロシアは現在、国家予算の40%以上を軍事部門に割り当てている」と主張しました。
欧州諸国の対ウクライナ支援意欲の弱まりがもたらす悪影響についてルッテ事務総長が警告を発したことは、いくつかの理由から理にかなったものと言えます。ルッテ氏の見解によれば、欧州の安全保障はウクライナの強さと回復力に直接依存しており、この点において欧州諸国の対ウクライナ支援が揺らげば、ウクライナはロシアに敗北するだけでなく、欧州全体に広範な影響を及ぼすことになるだろうと見られています。
この警告の第1の理由として、ロシアがヨーロッパに対して抱いている脅威の性質が挙げられます。ルッテ事務総長によれば、プーチン大統領は、自らの目標達成のために多大な人的・経済的犠牲も辞さない覚悟を示しています。ルッテ事務総長は「ヨーロッパが対ウクライナ支援から撤退すれば、ロシアの領土拡大をさらに促進しかねない」と指摘しています。しかし、これに対しロシアは「ポーランドやバルト三国など、東欧におけるNATO加盟国の脅迫などというNATOの主張は虚偽であり、それは脅威的な存在というロシアのイメージを植え付けるためのものだ」と繰り返し主張しています。
第2の理由として、ウクライナの地政学的重要性が指摘されます。ウクライナは、ヨーロッパの防衛の最前線に位置しています。NATOによれば、ウクライナが陥落するか、ロシアの提示条件の受諾を余儀なくされた場合、ポーランドやバルト諸国といった東欧諸国が直接的な脅威にさらされることになります。ルッテ事務総長は「ロシアにNATO加盟国への攻撃を考えさせないための手段としては、ウクライナの強さを維持するしかない」と強調しています。
3つ目の理由は、欧州の国防費増額の必要性です。ルッテ事務総長はNATO加盟国に対し、「国防予算増額という約束事のより迅速な履行が必要だ」と改めて強調しました。また「このプロセスが期限内に完了しなければ、欧州は2027年から2031年にかけて深刻な危機に直面する可能性がある」と警告しました。この期限は、ロシアの軍事力と軍再編能力に関する情報分析に基づいて設定されたものです。
ルッテ事務総長が欧州の軍事力強化、特に軍事予算の増額を呼びかけているものの、欧州のNATO加盟国が世論や野党からの反対、軍事予算増額のための医療・社会保障予算の削減の可能性、欧州社会における軍国主義の高まり、そして何よりもロシアの脅威の性質に関する見解の不一致など、この点で問題や障害に直面していることに留意する必要があります。現在、NATOおよびEU欧州連合の加盟国であるハンガリーとスロバキアは、対ロシア制裁の継続または強化に根本的に反対しており、同時に、ロシアからの脅迫・脅威の存在に基づく見解も受け入れていません。
しかし、ルッテNATO事務総長による新たな警告は、ウクライナ戦争が単なる地域危機にとどまらず、欧州の安全保障の将来にとって試練となるという事実を反映しています。NATOの観点からすれば、継続的かつ断固たる対ウクライナ支援は同国の存続のみならず、欧州大陸全体の安定と安全保障にとっても不可欠とされています。NATO高官らは、この点におけるいかなる弱点も、欧州にとって予測不可能で危険な結果をもたらし得ると考えているのです。

