ヨーロッパは、グリーンランドを米国から守るためにイランやイエメンに依拠するか?
-
2016年1月12日、ペルシャ湾でイランに拘束されたアメリカ兵
ドナルド・トランプ米大統領が、たとえ武力行使であってもグリーンランドを米国が獲得すべきだと繰り返し主張していること、そして米国の行き過ぎた行動に対する欧州の対応の弱さは、欧州内外から広く批判されています。
【Pars Today 国際】デンマーク自治領グリーンランドを米国が併合すべきだというトランプ大統領の行き過ぎた主張に対する欧州の反応は、ドイツから13人、フランスから15人の兵士をそれぞれグリーンランドに派遣するといった見せかけの行動にとどまり、SNSユーザーや国際世論の失笑を買っています。
アメリカの攻撃に対するイランとイエメンの模範的な抵抗、特にイラク西部アサド空軍基地とカタールのアル・ウデイド基地に対するイランのミサイル攻撃、そしてイエメン抵抗勢力による米軍艦艇や戦闘機との衝突(トランプ大統領のイエメン戦争からの撤退につながった)を踏まえると、ヨーロッパが米国からグリーンランドを守るために、果たしてイランとイエメンが米国に対して用いたような効果的な手段に訴えるのか、という疑問が浮上します。
根本的な疑問
一見すると、EUがグリーンランドを米国の圧力から守るためにイランやイエメンに頼るかどうかという問題は、笑止で誇張されているように思われます。しかし、より深いレベルでは、この問題は重要な地政学的現実を示唆しています。すなわち、異なる勢力が米国の覇権に対抗する方法の根本的な違いです。近年、イランとイエメンは米国の直接的な圧力と攻撃に対して強固かつ粘り強い抵抗を示してきたのに対し、欧州はグリーンランドのような自国の利益に直接関わる問題であっても、多くの場合慎重かつゆっくりと、そして極めて受動的に対応してきました。この2つのアプローチを比較すると、国際体制における「抵抗能力」と「抵抗する意志」の乖離が明確に浮かび上がってきます。
ヨーロッパとグリーンランド
グリーンランドは、政治的にはデンマークの一部ではあるものの、米国にとって地政学的に極めて重要な地域とされています。特に北極圏という戦略的な位置にあること、豊富な天然資源の存在、そして大国間の対立における役割から、この地域は極めて神経を要する問題となっています。かつて米国がグリーンランド購入の意向を公然と表明した際、ヨーロッパ諸国の反応は主に驚き、嘲笑、そして外交的声明に留まり、抑止力も、対抗的威嚇も、武力行使もありませんでした。ヨーロッパは、強硬手段よりも外交という手段によるこの問題への対処を好んだのです。
イランとイエメンの抵抗
これとは対照的に、イランとイエメンは近年、アメリカからの直接的な圧力に屈しないのみならず、対抗措置によってアメリカに多大な代償を強いていることを示してきました。2016年1月12日の事件、つまり2隻の艦船でイラン領海に侵入したアメリカ兵の逮捕、そしてイランイスラム革命ゴッツ部隊司令官の故ソレイマーニー将軍暗殺後のアサド空軍基地に対するイランによる攻撃(ここ数十年で政府によるアメリカ軍基地への直接攻撃は初めて)は、イランがアメリカに対して抵抗を基盤としたアプローチを取っていることを明確に示す例と言えます。
アル・ウデイド空軍基地へのミサイル攻撃は、米国によるイランの核施設爆撃に対するイランの強硬な反応でもありました。この行動は、イランが自国の利益を守るために直接対決に踏み切り、その代償を受け入れる用意があるという明確なメッセージを示したのです。またイエメンでは、同国のイスラム抵抗組織アンサーロッラーが紅海および、シオニスト政権イスラエル占領地におけるアメリカとその同盟国への無人機とミサイル攻撃によって、包囲戦や消耗戦の状況下でも勢力均衡を覆す能力があることを示しました。紅海における米艦隊への深刻な損害、特に空母ハリー・S・トルーマンから紅海に沈んだF-18戦闘機2機の喪失は、イエメンのミサイルと無人機攻撃に対するアメリカ軍のパニックに陥った性急な対応の結果に他なりません。
行動の相違の要因
この行動の違いは、いくつかの要因に根ざしています。第1に、ヨーロッパには長年、首尾一貫した独立した政治的アイデンティティが欠如しており、トランプ大統領の威圧に抵抗できるフランスのド・ゴール将軍のような強力な指導者が不在だったことが挙げられます。第2に、ヨーロッパは政治経済構造上、米国に深く依存していることが指摘できます。第2次世界大戦後数十年間、ヨーロッパの安全保障はNATO北大西洋条約機構と米軍の駐留に基づいていました。ヨーロッパ経済もまた、多くの分野で米国と密接に絡み合っています。
したがって、ヨーロッパは、たとえ自国の利益上必要であっても、実際には米国に対して攻撃的な政策をとれないのが現状なのです。この構造的な依存関係により、ヨーロッパは政治的意思を制限され、よりソフトな外交手段に頼る勢力と化しています。対照的に、イランとイエメンには米国への構造的な依存がなく、逆に外国の影響と覇権主義への抵抗を基盤として、本質的に政治的・安全保障上のアイデンティティを規定してきました。
特に1979年のイスラム革命後、イランは独立および、大国の覇権への対決を外交政策の基盤としてきています。イエメンもまた近年、特に内戦後、米国とその同盟国への抵抗を中核とする新たな政治的アイデンティティを見出しており、こうしたアイデンティティの違いが、行動の違いを物語っています。
根本的な疑問
しかしながら、ここで根本的な疑問が生じてきます。それは、ヨーロッパがイランやイエメンの米国に対する抵抗モデルからインスピレーションを得ることができるのか、あるいは得るべきなのか、ということです。端的に言えば、ヨーロッパはそのようなモデルには決して従うことはありません。なぜなら、強力なリーダーシップという問題はさておき、ヨーロッパの経済・安全保障構造は米国との直接対決を許容しないからです。ヨーロッパは米国の政策に公然と反対したJCPOA包括的共同行動計画(通称;対イラン核合意)のような問題においてさえ、効果的な実践的行動をとれなかった前歴があります。
しかし、だからといって、この2つのモデルの比較が無意味だというわけではありません。逆にこの比較は、国際体制において、たとえ経済的または軍事的に制約を受けていても、抵抗する意志を持つ勢力が力関係を変化させられることを示しています。イランとイエメンは、政治的意志と非対称抑止に依拠することで、米国に多大な代償を強い、アメリカを従来の立場から首尾よく後退させてきました。一方、ヨーロッパは、その莫大な経済力にもかかわらず、多くの場合、政治的意志の欠如のために劣等感や対米依存を感じ、アメリカの圧力に対して弱く受動的な立場を取ってきたのです。
グリーンランド及び異なるアプローチ
グリーンランド問題は、この現実を如実に表す例です。もしイランのような国がデンマークの立場だったら、全く異なる反応を示すはずです。しかし、ヨーロッパは外交的・法的手段、そしてせいぜい相互関税の発動といった経済・貿易手段を通じてのみの対応を強いられています。たとえ、これらの手段がアメリカの権力追求に対抗する上で限定的な効果しか持たないとしても已むをえません。このアプローチの違いは、政治哲学、権力構造、そして脅威認識の違いを反映しています。
結局のところ、ヨーロッパがグリーンランドを守るためにイランやイエメンに倣うか否かという問いに対する答えは明確であり、「NO」です。しかし、これは、一部の勢力が米国に立ち向かう一方で、植民地主義と戦争の歴史を持つより積極的な勢力が後退を選択する理由を理解するための窓口となります。この状況を変えるには、ヨーロッパは国際体制における自らの役割を再定義する必要があります。それは、安全保障上の対米依存を減らし、独立した利益を守る政治的意思を強化する役割です。この変革が起こるまで、ヨーロッパは米国の圧力に直面しても、行動よりも外交上の言葉に頼る勢力のままに留まると考えられます。
経緯の揶揄
この事件を目の当たりにするや、SNSユーザーらは直ちに行動に出て、空想的かつ揶揄的なシナリオを作り出しました。一部のユーザーは、「もし欧州がグリーンランドに関する米国の主張に同じ速度と強さで反応したければ、おそらく2050年までに「寒帯にある島の売買の予想される結果を調査する委員会」を設置し、2060年までに『深い懸念』を表明する声明を出すだろう」と投稿しています。
また別のユーザーは、「ドイツ兵13名とフランス兵15名をグリーンランドに派遣したことは非常に効果的だったため、米国は恐怖から島の分割払い購入を求めるだろう」と揶揄的なコメントを書き込んでいます。さらには、ヨーロッパがイランとイエメンから援助を受けたいなら、まず27時間にわたる会議を開き、「『援助』という言葉に軍事的な意味合いがあるかどうか」について合意すべきだと冗談めかしたコメントを投稿したユーザーもいました。
また、ヨーロッパの力を示すために、環境、文化、観光の各閣僚による合同代表団をグリーンランドに派遣し、「ソフトパワー」を使ってアメリカの行き過ぎを阻止すべきだと提案する者もおり、「凍てつく海岸で音楽フェスティバルを開催すれば、アメリカの考えが変わるかもしれない」とコメントしています。結論として、ヨーロッパは依然として、少数の軍人を派遣し、外交声明を出し、EU本部の会合でコーヒーを何杯かたしなむことでグリーンランドを守りたいと考えています。どうやらヨーロッパの意識においては、アメリカの行き過ぎに対抗する最善の方法は、相手側が疲弊して引き下がるまで十分な時間にわたる会合を開くことのようです。

