イマーム・アリーの最後の言葉
(last modified Tue, 11 Apr 2023 14:00:00 GMT )
4月 11, 2023 23:00 Asia/Tokyo

偉人や賢者は、未来の人々にとって、人生の教訓となるよう、生涯の中で身につけてきた経験や知識を、説教や遺言などの形で言葉、あるいは文字にしています。

シーア派初代イマーム・アリーの殉教日は、イスラムラマザーン月21日、つまり本日に当たります。彼の全生涯は学ぶべきもので、子供たちや教友に、価値ある勧告を行っています。

イマームアリーの忠告のすべては価値あるものですが、彼の遺言は、特別な重要性を持っています。イマームアリーはこの遺言を、殉教する数時間前に語りました。

イマームアリーとの最後の面会で、子供たちはみな、彼の希望により、傍らに付き添っていました。彼らはイマームアリーの最後の言葉をきくため、目に涙を浮かべて優しい父を見守っていました。イマームアリーの寝室に入ったものはみな、彼の姿を見ると、泣かずにはいられませんでした。しかし、イマームは彼らをなだめました。

イマームアリーのまなざしは、彼らの心に深く染み入りました。彼は長男で後に、シーア派2代目イマームとなるハサンの涙であふれた目を見て、次のように語りました。

「息子よ、もし私を殺したものに寛容に接したいのであれば、それはおまえ自身の決定だ。もし相応の報いを与えることを決めたのであれば、私に浴びせた打撃に対して一撃のみを与えよ。この報復が宗教から逸脱しないよう気をつけるがよい。息子よ、筆と紙を持ってきてくれ。みなが集まっている場で語ることを、記録にとどめよ」

イマーム・アリー聖廟

 

イマームハサンは父の言いつけどおり、遺言を記録するため、筆と紙を持ってきました。

「慈悲深く慈愛あまねき神の御名において、私の最初の遺言は、唯一神以外に信仰の対象は存在しない、とすることだ。神はまさにひとつの存在で、同等のものは存在しない。またムハンマドは神の僕で、神が遣わした預言者だと証言する」

神の唯一性と、預言者の使命に対する証言は、子供のころから、イマームアリーの全存在を占めていました。預言者ムハンマドがハラーの洞窟に行き、神と語り合っていたころから、イマームアリーは預言者と秘密を共有していました。彼はまた、神の唯一性の光を見て、預言者の使命の薫陶を受けていました。

イマームアリーは神の唯一性と預言者ムハンマドの使命を認める証言を行った後、社会問題に目を向け、解放的な信仰、イスラム教徒の連帯と平和共存、困窮者への支援、社会の安全と安寧という4つの中心的な事柄について語りました。イマームアリーは短くも、永遠に残る、幅広い遺言の中で、次のように語りました。

「私は、あなた方、そしてすべての子供たちと家族、私の言伝を伝えるべきすべての人に対して、神を信仰し、ものごとを秩序あるものにし、相互に和解し、平和に共存するよう薦める。なぜなら、私は預言者ムハンマドが、人々の関係の修正・和解は、数年間にわたり礼拝を行うよりよい、と語ったのを聞いたからだ」

イマームアリーの遺言は信仰心を持つことへの勧告から始まっていました。現世の、あらゆる物質的なしがらみから解放されていることは、敬虔な人間のもっとも明らかな特徴の一部で、イマームアリーはそれを薦めています。人間は強い信仰心をよりどころとすることで、欺瞞に満ちた現世の執着を断ち切るとき、、独立し、解放され、心からの自由を感じるようになります。そうなれば真理以外のことを語らず、真理以外を求めることはありません。

その後、イマームアリーは、秩序と規律を守り、社会体制やその規約に責任を負うことがすべての人にとって必要だとして、信仰心とともに、秩序と規律を強調しています。秩序はレベルの高い、先進的な社会において、成功の第一条件であり、また社会関係の基盤を築く上で最も重要なものです。イマームアリーは、さらに平和と和解、友愛を強調し、それを社会に必要なものだとしています。

明らかに、互いに反目し、対立をあおり、距離を置くことは、団結の障害となり、発展や好ましい変化を阻害します。不和や強硬な態度、争いは、精神的、社会的な災害であり、社会の好ましい発展を侵害します。このため、イマームアリーは常に彼が気にかけていたイスラム教徒、特に困窮した人々や孤児への対応の重要性について、「孤児たちが空腹で苦しまないよう神に祈る」と語っていました。

イマームアリーは、イスラム教徒の問題解決に努め、困窮したものに手を差し伸べる必要性について、最も複雑で、最も被害を受けている社会集団は、親のない孤児たちだとして、彼らの基本的な必要性を満たすことを強調しています。イマームアリーは、この遺言で、孤児に関する勧告を行った後、隣人の権利を強調し、次のように語りました。

「隣人に対し、親切に接しなさい。あなた方の預言者もそれを勧告している」

イマーム・アリー聖廟

 

イマームアリーは、遺言の最後に、自らの財産や命をかけて神の道における戦いを行うよう求め、信徒たちに勧善懲悪と友情、団結を薦めました。彼は遺言の最後に、次のように語りました。

「息子たちよ、私が殉教した後、イスラム教徒の血を流し、信徒の長が殺されたと語ってはならない。殺人者以外は殺害すべきではない、私が剣による傷でこの世を去ったときには、彼に対して加えられるのは一撃だけだ」

こうして、イマームアリーはイスラム教徒の安寧や安全に特別な関心を寄せ、社会の無秩序や利己主義的な行動、他者に対する報復・侵害行為はイスラムや法に反するとして、イスラム共同体にそれを禁じるとしました。個人やあるグループがイマームアリーを殉教に至らしめたイブン・モルジャムに復讐しようとするときであっても、合法的な形でそれが行われるよう、自制を求めました。このように、イマームアリーは遺言の中でまず、人間が成長し、高みに至る最も重要な要素や、イスラム社会の重要な問題について語っていました。そして遺言の最後では、イブン・モルジャムに対しても公正に対処するなど、社会の公正確立、安全維持について言及しました。

イマームアリーはこの遺言の後、再び一人ずつそこにいた人々を見つめました。別れのときが近づいていました。彼が殉教を果たしたとき、その心は現世にとらわれず、安らかにこの世を去りました。

 


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