インターネット依存症の治療法
今回は、インターネット依存症の治療法について考えてみたいと思います。
心理学者や精神科医は、数年前からインターネットやソーシャルネットワークへの依存症状の問題に注目しています。この現代病は、一部のインターネット使用者に影響を及ぼしており、一部の国ではインターネット依存症から脱出する為の専門のクリニックも設けられており、訪れる患者の数は日々増加しています。
インターネット依存症が広まり始めてから、この症状に対する誤った対処法が取られてきました。例えば、一部の家族はコンピュータを売却し、また一部の政治家はネットカフェの閉鎖により、この現象の拡大を防ごうと努力してきました。しかし、研究調査の結果からは、このような方法ではこの現象の拡大を阻止出来ないことが分かっています。このため、社会がインターネット依存症を正式に認知し、この問題の根本的な解決に乗り出さなければなりません。
現在、インターネットやソーシャルネットワークの過剰使用に陥っている人々の治療や支援ははじまったばかりであり、その治療法に関する本格的な研究はまだ行われていません。現時点では、衛生機関により喫煙や麻薬、アルコール飲料や賭博をやめる方法に関するガイドブックが出版、使用されているのみとなっています。
インターネット依存症の最善の治療法は、インターネットの使用を段階的に減らすことです。これにより、患者はこの技術を正しく活用するようになります。治療に当たる人々は、インターネットの使用を突然やめることは出来ないと考えています。それは、この依存症の患者の多くは様々な理由で、インターネットの使用をいきなり中止することができないからです。
インターネット依存症から抜け出そうと決意している人が先ずやるべきことは、自分が依存症状に陥っている現実を認識し、その依存の程度を知ることです。この症状の患者の多くは、自分が依存症状に陥っていることをなかなか認めようとしません。このため、この症状を治す為に専門医にかかるといった行動を起こさないのが普通です。前回の番組で提示された基準に注目すれば、人間は誰でも自分がインターネット依存症にかかっているか否かを、きちんと識別できます。それでは、ここからはインターネット依存症から脱出する方法を、皆様に提案していくことにしましょう。
インターネット中毒に陥っている人は、コンピュータ使い始める時に、自分がどのように感じているかについて調べる必要があります。彼らは、仮想空間に入る前には大抵、ストレスやマイナスの気持ちを抱いていることが多いのです。そして、インターネットを始めると、落ち着きや希望、そして自分の居場所を取り戻したと言う気持ち、また自分は尊敬に値する存在で、他者から好かれている、守られていると言う気分を味わうのです。
忘れてならないのは、インターネット依存症の治療も、他の精神障害と同様に、インターネットに逃避するようになった原因を確認してから、実施されるべきだということです。インターネット依存症に陥っている人は、自分の抱える問題や感情をきちんと把握しなければなりません。この依存症状に陥る原因としては、緊迫した場合に生じる神経性の要因も考えられます。ストレスは、インターネットやチャットルームに夢中になることで解消されるものではありません。インターネット依存症から脱出するには、それぞれの患者を知ることが重要であり、また専門医にかかって、自分や家族の問題を申告することが絶対的に必要であると思われます。
インターネット依存症にかかっている人の多くは、家族や友人、そして自分がかつて楽しんでいた社会活動から、自分を切り離してしまっています。このため、身近にいる人々や、自分の愛する人ともう一度関係を持とうと努力することは、この依存症の治療に非常に効果的な方法と言えます。このことはまた、新たな経験や社会的な立場を生み出します。さらに、インターネット上の友人から、現実に自分に付き添ってくれる人々や友人の支援や優しさにシフトチェンジすることも、極めて有益です。それは、実際の友人の優しさにより得られる充実感は、決してバーチャル空間上の友人とは比較にならないからです。
インターネットやソーシャルネットワークにのめりこんでいる人は、人生に対する見方を変え、歩みを踏み出す必要があります。まず、インターネット中毒が自分に引き起こしている、最も大きな問題を5つ、さらに、インターネットの使用を制限することによる、5つのプラスの効果を挙げ、これらをリストに書き出してみることです。これらのリストを常に持ち歩き、実生活からバーチャル空間に逃げ出したいと思ったときに、このリストを眺め、今自分がどのようなメリットを失おうとしているか、またどのような弊害を受けることになるかについて注意喚起するのです。
次のステップは、インターネットを利用する時間の管理です。インターネットの利用者は、その利用時間を減らし、本当にインターネットが必要になるときまで一定時間我慢することを、義務付ける必要があります。このプロセスを厳密に守り、これを出来る限り破らないように努力することです。例えば、インターネットの使用前には、制限時間を定め、うっかり時間を忘れそうなときには、コンピュータが自動的に切れるプログラムを利用します。さらに、何かのご褒美としてインターネットを利用できる、という規則を設けるのもよいと思われます。
インターネットに強く依存している人は、インターネットの使用における習慣を変える必要があります。例えば、毎日午後の時間をインターネットの使用に充てている人は、これをより限定した形で朝の時間に移すことです。また、長編小説を読むことで、インターネットからかなり遠ざかることが出来、実生活がより重要なものとなってきます。さらに、博物館や映画館、公園、娯楽施設、スポーツ施設などに出かけ、人々と現実上の関係を作るようにします。インターネット中毒者は、長時間コンピュータの前に座っていたら、何を失うことになるか、どんな活動が中途半端で終わってしまうかを、自分に問いかける必要があります。そうした活動を書き留め、それらの活動を行うように努力すべきなのです。
そして、最終段階では、中毒に陥らせる、或いは夢中にさせるようなサイトやインターネットの一部を全体的な形で認識するようにします。日常において、こうしたサイトなどをなるべく閲覧しないようにし、バーチャル空間上の友人ではなく、現実の友人との付き合いに集中するように努力します。インターネットより重要で興味深い事柄を考えることで、自分の意識をそれらに集中させ、そうしたサイトへのアクセスを減らすようにします。出来る限り、より重要な問題を考えるように努力するのです。それは例えば、友人を招いて散歩に出かけたり、様々な習い事の教室に参加したり、ボランティア活動に参加する、といったものです。
これらのことを数週間にわたり実行した後では、インターネット依存症の患者は日常生活における行動や、精神的、社会的な状況が完全に変化していることに気づくはずです。その人は、わずかな忍耐により、実社会における生活の喜びを再び手に入れることが出来るのです。
もっとも、次のような点にも触れておく必要があります。それは、全ての社会においてテクノロジー製品の流入に際して、社会がインターネット中毒のような危機に遭遇しないよう、その正しい使用法を広めるべきであるということです。このため、社会文化の関係者や担当者や専門家は、この社会的な問題を治療し、或いは未然に防ぐという重大な責務を担っているのです。これについて、イランの大学教授モハンマディ・アスル博士は、次のように述べています。
「インターネット中毒は、完全に根絶することは出来ないかもしれない。だが、見識のある人々による適切な計画や思想、措置によりそれを最小レベルにまで押さえ込むことは可能である」
明らかに、公的な形で認識を広める為の教育計画の立案と、適切な社会的、文化的、教育的な計画の実行は、新たなコミュニケーション・ツールの利用に関する文化を広めるための、最もよく知られた確実で、低コストの手段であると言えるでしょう。