ペルシャ語ことわざ散歩(224)「他人の腐ったロープで井戸の中に入る」
皆様こんにちは。この番組では、イランで実際に使われているペルシャ語の生きたことわざや慣用句、言い回しなどを毎回1つずつご紹介してまいります。
今回は、「他人の腐ったロープで井戸の中に入る」ということわざをお届けしましょう。
この表現はペルシャ語では、Baa tanaab-e puusiide-ye kasii tuu-ye chaah raftanとなります。
この表現の第1の意味としては、「他人の間違ったアドバイスにより、自らをトラブルや困難に巻き込む」ということになります。
また、もう1つの意味は、他人の意見や発言を鵜呑みにして、その真偽のほどを確かめたりよく検討もせずに信じ込み、必ずしも信憑性のない発言に基づいて自分の決断を実行に移して失敗し、その結果を悔やむ、ということです。
ちなみに、このことわざで言う「腐ったロープ」とは、誤った内容の発言や考え方、さらには一生を台無しにもしかねないやり方や、不適切なアドバイスなどに例えられています。
文字通りの意味から考えても、腐ったロープにつかまって井戸の中に入ろうとすれば、命綱でもあるロープが切れてそのまま井戸の底に真っ逆さまに落ちることは、容易にご想像いただけるかと思います。
このことわざは、ある物語に由来しています。昔、ある大きな家に泥棒が入りました。その家の主人は泥棒の気配に気づきましたが平静を装って妻に対し、わざと大声で「庭にある井戸の底に金を隠しておいたから気を付けておいてくれ」と告げます。泥棒はこれで気をよくして金目のものがあると思い、喜びいさんで家の主人の目を盗んで井戸の中に入りました。その間に家の主人とその妻は「今日は星がきれいだから屋外で寝よう」ということで、何と井戸の上に布団を敷いて寝てしまいました。そこで井戸の底に閉じ込められた泥棒は、「おーい助けてくれ!お宅の主人の話に乗せられた」と大声で助けを求めたということです。
ちなみに、私が実際に聞いたことのあるこのことわざの使用例についてご紹介しましょう。
ある程度のまとまった預貯金のある人が、それを元手にして小さな事業を起こし、自分の身の丈に合った形で起業しようとしていました。ところが、この人は自分の親戚で非常に欲深な人から目を付けられ、あるビジネスへの投資の話を持ち掛けられました。そこで、投資に詳しい人に相談したところ、「他人の腐ったロープで自分を井戸の底に落としてはいけない」とアドバイスされ、得体の知れないこの話を断ったということです。
それでは最後に、このことわざと同じような内容について述べられているコーランの節をご紹介し、今日の締めくくりといたします。コーラン第49章、アル・フジュラート章「私室」第6節には次のように述べられています。
「信仰心に目覚めた人々よ、みだらな人物があなたにあることを知らせたならば、その内容についてよく検討し、一部の無知な者に危害を与え後悔することのないようにするがよい」
この番組は、IRIBイランイスラム共和国国際日本語通信パールストゥデイがお送りしています。