イランの選挙(5) ~イランと他国の議会制度~
第10期イラン議会選挙と第5期専門家会議選挙が、明後日2月26日に実施されます。イラン国会は290議席から成り、議員は国民の直接投票によって選出され、任期は4年です。
イランの議会制度は、長年の歴史と経験を持つ世界の多くの議会制度と比較して、民主的な要素や基準を有しています。イランの国家議員が有している幅広い権限は、世界の進歩的な議会制度にも匹敵します。
イランイスラム共和制の40年未満の歴史における議会制度は、西アジアの国々の多くの議会と比較して、成功した経歴を有しています。地域の 多くの国、とくにペルシャ湾岸のアラブ諸国は、政治や経済、文化の構造において、西側をモデルとしてきましたが、民主的な機関が欠如しています。これらの 国の一部では、議会は影のような存在で、多くの場合、その地位に必要な影響力が欠如しています。多くのアラブの政権は民主的な合法性が欠如し、基本的に民 主体制が欠如している政府を有しています。このため、実際、統治体制に、市民に選択の権利が付与されているという意味での民主主義は存在しないのです。
クウェートはペルシャ湾協力会議の加盟国の中で、選挙で選ばれた議会を持つ唯一の国です。クウェート議会は50人の議員で構成され、4年ご とに選挙が行われます。また閣僚は、選挙で選ばれた人々ではありませんが、責務に基づき議会に参加します。少し前まで、女性には投票や立候補の権利があり ませんでしたが、改革が行われ、2006年の議会選挙で女性が選挙に参加できるようになりました。こうした中、クウェート社会における女性の政治的な参加 の原則はこれまで、完全に実現されていなかったのです。
こうした制限の別の例として挙げられるのが、サウジアラビアの議会です。サウジアラビアでは議会制度は任命制となっており、顧問としての側面を持つ議員は国王によって任命され、任期は4年となっています。
中東の王国オマーンでも、1981年に初めて政府顧問評議会が特別な形で結成されました。この顧問評議会は任命制で、その任務も経済や政治情勢に関する意見表明と将来の方針に関する提案の提示に限られていました。
1999年、カーブース国王の指示により、新しい顧問評議会と地域の代表の連合が政府顧問評議会に取って代わり、オマーン人はある程度まで、国家の責務を担うことができるようになりました。この評議会は現在59人の議員を有し、議長は政府よって決定されます。
オマーンの新たな議会は、以前の政府の議会の代わりに、1992年1月、始動しました。この議会は経済や社会の政策に関して、閣僚を質疑応 答にかけることができます。こうした中、この議会では女性の参加は許されていませんでしたが、1995年、初めて女性が選挙で立候補することが許されまし た。議員の数も59人から80人に増加されました。こうした中、オマーン議会の傍らで、任命制をとる政府顧問評議会も活動しています。
オマーンの評議会と議会にはそれほど権限がなく、議員には一部の閣僚を批判する許可だけが与えられています。こうした中、国防、外務、内 務、財務大臣などの重要な閣僚の批判はできません。この議会は人々の生計の問題に関して議論することができますが、戦争や平和の政策、あるいは外交政策に ついては介入することができません。
UAEアラブ首長国連邦では、2006年末、連邦議会選挙が行われましたが、その議員の半数は首長によって選ばれます。5年前、大規模な民 主運動が起こったバーレーンでも、議員の半数は国民の直接選挙では選ばれません。バーレーンではここ数年間に生まれた変化により、ある程度まで選挙によっ て議会を構成するための状況が整えられました。とはいえ、バーレーンの人々はたった二回の選挙で、議会の40議席を選ぶことができただけです。このような 中で行われた選挙は、政治的な圧力や息苦しさを伴うものでした。
カタールでも、2007年に初めて議員の半数が選挙で選ばれました。ヨルダンも同様で、国王がいつでも議会を解散させることができます。
各国の議会制度は多くが類似性を有していますが、その権限においては根本的な違いがあります。民主的な議会制度を有することは実際、政治的発展の前提条件でもあるのです。議会制度は、憲法の枠内で人々の要求に完全に応えることができる状況にあるべきです。
イランイスラム共和制においては、議会がすべての問題において権限と役割、影響力を有しています。イランの議会は近隣諸国のそれと比較し て、高いレベルでの民主構造を有しています。議会で議員が有する幅広い権限により、彼らの役割は、先進国の多くの議会と同じように、重要な決定において突 出したものとなっています。
例えば、アメリカの立法権、つまり議会は上院と下院という二つで構成されています。どちらも立法において平等な権限を有しています。立法権 の責務は行政権を監視することです。憲法に基づき、議会は様々な法律を可決することで行政権の行動に影響を及ぼしています。行政権によって計画され議会に 送られる年間の予算案は、可決、修正、あるいは否決することで、議会に、政府の政策に影響を及ぼす可能性を与えます。
アメリカの上下院は行政権の機能不全、管理不足を調査することができます。議会は大統領が指名した閣僚などを承認し、大統領を弾劾すること ができます。イランの議会でもこうした権限や責務が議員に与えられており、監視の役割を担う議会は、法の制定、年間予算の可決、政府の実行している計画や 取り決めの監視と承認、閣僚の信任、また閣僚や大統領に対する弾劾といったことを行うことができます。
半大統領制をとるフランスでは、議会は内閣に対する不信任決議を提示することができます。こうした中、大統領もある条件の下で議会を解散さ せることができます。フランスの議会は国民議会と元老院の二院制です。下院にあたる国民議会は577人の議員がおり、5年ごとに国民によって選出されま す。また上院にあたる元老院は343人の議員で構成され、9年ごとに間接選挙で選ばれ、3年ごとにその3分の1が交代します。
フランスには憲法評議会という名の選挙を監視する機関が存在します。憲法第56条によれば、この評議会は二つのグループで構成されていま す。その一つが憲法評議会の任命される議員で、9人で構成されています。この議員のうち3名は大統領によって、3名は国民議会の議長によって、残りの3名 は元老院の議長によって9年間の任期で任命されます。この評議会は議会選挙が正しく行われているかについて決定を下し、憲法に基づき、選挙と国民投票はこ の評議会の監視のもとにあります。憲法評議会の決定には抗議できず、その実行は一般、行政・司法関係者にとって必須事項となっています。
こうしたことが示しているのは、イランの議会制度が真正性を有し、人々の意志と見解に基づいているということです。実際イランの選挙は民主 主義の表れであり、議会もまた人々が自らの将来を決定していることを示しています。明らかなことは、どの国の民主的な議会制度の存在も、体制における民主 主義の下地を表すものだということです。選挙が政治、社会、文化のすべての機関に包括的な影響力を有していることから、人々の選挙への参加は社会運営にお ける人々の役割を決定し、発展の度合いを測るための重要な指標とみなされています。