2月 27, 2017 15:43 Asia/Tokyo
  • 喜びや自信を増すための自然の役割

今回は、喜びや自信を増すことにおける、自然や自然散策の役割について、コーランに述べられている事柄に触れながらお話することにいたしましょう。

現代人は、急速な技術革新の道を歩んでいますが、これにより機械化された現代の生活は、さらに複雑化しています。インターネット空間は不透明で、しかも懸念材料を伴うものの、非常に魅力的であり、日々拡大しています。携帯電話やコンピューターといった情報通信機器の驚くべき特徴により、私たちはこの文明の利器にのめりこみ過ぎる傾向にあります。こうした日常生活は、大きな精神的ストレスや圧迫感を伴うものであり、現在すでに様々な身体的、精神的な各種のトラブルが見られます。

これらの病気の医薬品による治療は、実際には問題の一時的な解決にとどまり、人間は安らぎや安全を求めます。国際機関は、ストレスを遠ざけることを1つの技術と見なしています。イスラムの聖典コーランは、この技術を身につけるためのいくつかの方法を提示しており、それらの1つがこれまでの番組でお話した、神を思い起こすことや神への信仰心です。さて、自然散策やそれにより得られる喜びも、生活していく上での重要な技の1つであることをご存知でしょうか。

しばらくの間、(携帯電話やパソコンなどの)電子機器を手放して、自然に目を向け、公園や海岸、森林などを散策してみてください。このことにより、自分が置かれている、緊張を生み出す立ち位置をしばしの間忘れることができます。自然との関係は、安らぎを得てストレスを忘れるための助けとなります。

コーラン第22章、ハッジ章「巡礼」、第46節では、生き生きとしたみずみずしい自然が生きるための精神や理知を人間に吹き込んでくれるとされ、次のように述べられています。

“彼らは、それによって考えることのできるような心を持つために、地上を旅しないのか?”

 

 

自然とかかわり、その美景を堪能することは、安らぎを得て人間の精神をいたわる上で考えられる最も単純な方法です。アメリカの行動科学の研究者による研究の結果、花を購入したり、これを植えたり眺めたりすることでプラス思考や喜びが生まれ、ふさぎ込んだ感情が遠のいて、安らぎにつながることが分かっています。家族や友人とともに自然環境の中に出かけていくこと、美しい花々や緑豊かな樹木を眺めることで、バランスの崩れていた行動や考え方が落ち着きを取り戻し、脳内にプラスの神経が生じることになります。

ある心理学者によれば、自然の風景は人間の精神衛生に深い影響を及ぼすということです。また、普段からよく自然に触れている人々は大都市に住む人々に比べて身体と精神面でより健康な状態にあるとともに、高血圧や心臓発作といったトラブルも少ないということです。さらに、そうした人々は各種の精神的なストレスに対処する能力も高いとされています。別の調査によれば、自然に関する画像を眺めるだけでも、マイナスの興奮やストレスが軽減されることが分かっています。

宗教の教えも、数百年前から人類に対し、自然の効果的な影響に注目するよう促しています。これについて、シーア派6代目イマーム・サーデグは次のように述べています。

“色とりどりに咲き乱れる美しい花々、緑豊かな木々を眺めるがよい。これらの自然は、他では決して味わうことの出来ない楽しみを、人間に与えてくれる”

シーア派初代イマーム・アリーも、次のように述べています。

"少なくとも、年に1回はスイセンの花の匂いをかいでみるがよい。なぜなら、人間の心の中には、ある種の状態が存在しており、それを吹き払うことができるのは、スイセンの花だけであるから”

 

神はコーランにおいて、大自然からの教訓に触れており、人類に対し地上を巡り歩き、自然の中で考え、神の恵みについて振り返ること、そしてその教えを活用するよう呼びかけるとともに、次のように述べています。

"それゆえ、全てのものが死滅した後に、どのように大地が生き返るのか、神の慈悲の効果を、しかと見つめるがよい”

コーランの見解では、自然は草花の適切な生育に効果的であるとともに、人間の成長や成熟にも効果をもたらします。イスラムでは、大自然を眺めることが奨励されていますが、それは大自然が人々の精神を解放し、喜びを与えるといったプラスの効果をもたらすことによります。コーラン第50章、ガーフ章「ガーフ」、第7節と8節では、草花が喜びをもたらす存在であるとし、次のように述べられています。

"また、我らは大地をうち広げ、その上に山々を据え、あらゆる種類の美しく瑞々しい植物を生い茂らせる。それらは、悔い改める全ての僕が良く観察すべきことであり、教訓である”

さらに、コーラン第27章、ナムル章「蟻、」第60節には、次のように述べられています。

果たして、あなた方が崇拝の対象とする偶像と、天地を創造され、またあなた方のために天から雨を降らせるお方とでは、どちらがよりよいであろうか?それによって我らは、美しい果樹園を生い茂らせる。あなた方には、そこの樹木を成長させる力は決してなかった”

 

研究者による調査からは、緑の空間での活動が、人間の性格の改善や自信の回復の助けになることが分かっています。自然の調和や秩序により、人間には興奮や情熱、渇望が生まれ、これが人間に原動力としての動機付けを与えます。自然は、人間の心を惹き付ける美しい要素により、常に人間の安らぎや喜びの源、そして進歩や革新の下地となってきたのです。

自然に触れ、そこに聞こえてくる音に耳を傾けることで、心の内面の安らぎが促進され、それにより人間は本当の喜びや楽しみを感じることになります。人間は、自然に依存するとともに自然を必要としており、それは自然界における酸素の濃度が高いことや、様々な要素が見事に連携していることによります。人間の暮らしが機械化されればされるほど、自然を必要とするこの感情や、それによる心の空白がさらに明白化すると思われます。

大自然や公園、行楽地に出かけていくことで、人々の気持ちが大らかになり、人々の間に親近感が生まれるとともに、不快感や嫌悪感が少なくなる、ということを是非心に留めておいていただきたいと思います。家族で自然散策に出かけるプラスの効果は、出かける前に既に現れるもので、家族のメンバーは出発を前に嬉しさで興奮し、それまでの不快感を忘れてしまうほどです。

山に出かけることで、人間の意欲や勤勉さも増強されます。野原などに出かけることは、心理学的に大きな効果があり、私たちの心の安らぎが増します。コーランの教えによれば、こうした状況の中で生み出される1人きりの静かな瞬間は、私たちに物事を良く考え、日常生活での問題を振り返り、気晴らしをするチャンスを与えてくれます。その結果、私たちの持つ様々な能力をさらに伸ばし、現実を理解し、問題を解決するためのよりよい条件が整うことになります。是非、この技を身につけて、喜びを味わっていただきたいものです。