ソーシャルネットワークの問題点の一部
前回は、SNS・ソーシャルネットワークサービスが短期間のうちにユーザーの間で注目され、また特別なサービスを提供していることについてお話しました。 しかし、ソーシャルネットワークは多くのメリットがある一方で、非常に脅威的なものでもあります。社会学の専門家は、この先進技術が人々や社会にもたらす悪影響について警告しています。今回は、ソーシャルネットワークの問題点の一部についてお話することにいたしましょう。
SNS依存症による問題
ソーシャルネットワークは、独自の特徴を持つことからユーザーにとって非常に魅力的なものです。このネットワークのメンバーになることの特徴として、バーチャル空間における他人との交流、コンテンツの送信、写真の共有、他人の見解やコンテンツに意見や感想を提示するといったことが挙げられます。しかし、このようにバーチャル空間に継続してい続けることは、ユーザーが次第にこの空間への依存症に陥る引き金となります。
ソーシャルネットワーク依存症に陥った人は、このネット空間から離れると、もう一度そこに戻るまでは落ち着きを感じられなくなります。その理由は、そうしたユーザーが長時間にわたってバーチャル空間やインターネット上の友人から離れていることができないことにあります。このことにより、その人は孤立し、実際に他人に面会しての関係を築いたり、親戚や知人に面会するのではなく、自宅にこもってバーチャル空間の中で時間を過ごすようになります。こうしたSNS依存症の人々は、SNSでのやり取りに多くの時間を費やし、それによって本当に必要なことができなくなり、職業や社会生活、人付き合い、ひいてはその人の個人的、社会的な生活全般に影響が及ぶことになるのです。
ネットワーク上での人間的な愛情関係は、写真やグラフィック、意見やコメントを書くといったものによるのが普通です。これにより、時間が経つにつれてユーザーは現実に人と接する際に感情を示す能力を失っていきます。この問題は、長期的に見て、人間の社会性や社交能力にも影響を及ぼし、その結果その人は現実の世界で問題に直面すると考えられます。
実際に、ソーシャルメディアは次第に個人主義を広め、人々を孤立や引きこもりに追い込んでいます。人々との物理的な付き合いがないことは、次第にうつ病や不安症状といった各種の精神病をもたらします。さらに、長時間コンピューターの前に座って体を動かさないことは、肥満やそのほかの肉体の病気の原因にもなります。
一方で、専門家による調査からは、SNSのメンバーのほとんどが、自分の人生のよい部分や幸せな瞬間のみを他人に見せ、悩みや問題は明かしたくないと考えていることが分かっています。このことから、自分の生活に問題を抱えている人は自分と他人を比べて、自分の生活が劣っていると感じ、失望感や劣等感を抱くようになります。
SNS上での個人的な領域の侵害と個人情報の漏洩による問題
インターネット上の通信網は、世界のあらゆる場所における他人との連絡ややり取りを楽にする上で、驚くべき役割を果たしています。人間は、社会的な存在であり、他人との交流の広がり、様々な信条や文化との出会いを楽しいと感じるものです。しかし、バーチャル空間での付き合いには危険が潜んでいます。そうした危険の1つとして、利潤を追求する一部の欲深な人々が、架空な別の人物を装ってネット空間に入ってくることが挙げられます。例えば、ユーザーは自分の名前や年齢、性別などを偽り、本当の自分のものではない個人情報や写真を提示することができるのです。この問題は特に、低年齢のユーザーにとってより大きな危険をはらんでいます。こうした付き合いの結果は、時として非常に憂うべきものとなり、それは最終的に強奪や人質事件、性的な悪用のほか、時には殺害にまで至っています。
他人に侵されない個人的な領分を持つことは人権の1つであり、これは人権に関する法律や規約でも強調されています。SNSによるバーチャル空間では、ユーザーは自分の個人情報をプロフィールに掲載し、個人的な写真のほか、パーティーや旅行、そのほかの個人的な活動の様子を公開します。こうした写真などを閲覧することは、友人や家族、特に遠く離れている人々にとっては問題ありません。しかし、実際にはこうした情報が全く見知らぬ人にいきわたってしまう可能性も存在します。利潤を追求する一部の人々は、別人を装ってこうした写真や情報を手に入れ、特にはこうした写真をバーチャル空間上に公開することもできてしまうのです。
一方で、個人情報の多くを無料で諜報機関に提供してしまう人もおり、これによってその後、情報を漏洩された人々が住んでいる国の安全に対する、危険な行動体系が組織されてしまうこともあります。SNS同士の間で、個人情報の売買が行われるのは通常のことです。最近、元CIAの職員だったエドワード・スノーデン氏が暴露したところによれば、アメリカなどの国の政府は人々のメールアドレスなどの個人情報、そして通話記録、個人的な信条までをも把握しているとされています。このことから、バーチャル空間では侵されざる個人の領域という概念は、もはや意味を成さなくなっています。
SNSによる広告宣伝の急速な普及に付随する問題
SNSの特徴の1つは、そのネットワーク上においてニュースや情報が広がる速度です。中でも重要な点は、正しくないニュースやデマが拡散する可能性です。こうしたうわさは、ネットワークに加盟している人々の間に急速に広まる可能性があり、時には人々を様々な問題に直面させることになります。例えば、もうすぐ大地震が起こるというデマを広めることで、1つの都市の人々の多くに恐怖感を抱かせることもできるのです。あるいは、経済情報や一部の政治家に関するうわさが、市民の精神的な健康に破壊的な悪影響を及ぼす可能性もあります。
SNSは、その独自の特徴から宣伝を行うための最高の場所といえます。このため、多くの資本家はSNSにおける自らの製品の宣伝に関心を持っています。しかし、こうした宣伝においては、倫理的、宗教的な価値観、さらにはほかの社会の本来の構造にはそぐわない価値観や習慣が提示されます。こうした宣伝では主に、ヨーロッパ式の生活文化や価値観が他国の人々に強要され、彼らから考える時間や選択の余地を奪ってしまうのです。
洋風の生活様式や逸脱した信条の伝播、民衆の扇動のために利用されるSNS
西側諸国は、SNSを通じて世界の人々をヨーロッパ風の生活様式や文化に仕向け、自分たちの価値観や信条を、現代世界における最高の生活様式であると見せようとしています。
宣伝によるもう1つの悪影響は、本来の筋道から逸脱した信条を宣伝し、人々を邪道に外れた目的に導くことです。唯一神信仰以外の逸脱した分派による思想は、社会には出てこないことから、SNSによる大々的な宣伝活動を行い、好ましくない自らの持論を、特に若者をはじめとする人々の間に広めようとしています。一方で、人々の宗教信仰を弱めるために、一神教の儀式や原則に様々な疑問を呈します。彼らは、こうしたやり方によって、人々の宗教信仰に疑問をつきつけ、そうした疑問のもとに精神性からかけ離れた締りのなさを広め、逸脱した自らの信条を宣伝することに努めています。
SNSは、各国の政治の舞台や外交上のやり取りにおいても注目すべき役割を果たしています。SNSにおいて政治家が政治的なメッセージを発信することは、各国間の関係に好ましい効果をもたらすこともあれば、逆に各国の内政に他国が干渉したり、国内での騒乱を組織化する引き金となる可能性もあります。それは例えば、ある国での騒乱や革命において外国の政治家の一部が、SNSを通じてその国の人々を反政府運動に扇動するといったものです。
今日、注目すべきことはテロリストや過激派がSNSの可能性を利用していることです。例えば、テロ組織ISISは現在、SNSの潜在的な可能性を利用して、兵士を募集しており、世界に自らの犯罪の映像を公開しています。
次回は、SNSが児童青少年にもたらす問題や悪影響の一部についてお話する予定です。