4月 04, 2018 17:39 Asia/Tokyo
  • 悲しみを抑制する方法
    悲しみを抑制する方法

今夜は、マイナスの感情の1つである悲しみと、これを抑制する方法についてお話することにいたしましょう。

人生における紆余曲折は、地球上に存在する陸地のようなものであり、様々な起伏が存在します。時には喜びに満ち溢れ、またある時には憂鬱だったり、寂しさを感じたり、やる気がなくなったり、悲しみに襲われたりします。生きていくうえでの強い感情は、私たちの生活において重要な役割を果たしています。私たちの社会的なコミュニケーションや経験も、こうした感情や興奮に基づくものです。喜びや恋愛といったプラスの感情により、よいエネルギーがもたらされ、悲しみや恐れといったマイナスの感情は、その人にマイナスのエネルギーを与えます。

一部の人々は、悲しみの要因が自分の友人や親族から離れて孤立することだと考えていますが、このことは悲しみの本当の理由とはいえません。それは、大勢の人々の間にいながら孤独や寂しさを感じる人は、決して少なくないからです。

もっとも、親族や友人の死、学業や職業における失敗や、家族関係の問題など一部の要素、そして傲慢さや欲求不満などのマイナスの精神状態、経済的な問題なども、精神的なショックやうつ病に巻き込む重要な要素とされます。しかし、時には生活上特に問題がなくても、悲しみやある種の閉塞感を感じたことがある方も多いのではないでしょうか。

 

悲しみを抑制する方法

 

大切なことは、強い感情の全ては、人間的な生活のために必要であるということです。悲しみ、恐れ、怒り、嫌悪感、愛はいずれも、周りの環境に適応し、人間としての本質を守るために必要なものと考えられ、適切な行動とされています。しかし、時には有益な感情が好ましくない感情にかき消されてしまうこともあります。一方で、悲しみは人間を苦しめる要素ではあるものの、心理学者は決してこれを有害で不要な感情だとは考えていません。この感情は、悲しみをもたらす状況をよりよくするため、適切な行動を見出そうとする動機を与えてくれるものでもあります。

このことから、悲しみ自体は価値がなく、その理由によって価値あるものとすることができる、ということがわかります。悲しみの理由が妬みなどであれば、それにより生じた悲しみもよいものではありません。しかし、宗教心や来世への信仰に基づく将来について個人的に考えたことによるものであれは、それは好ましいとともに、宗教上奨励されるものでもあります。憂いや悲しみを賞賛している伝承は、信徒たちに塞ぎこむのではなく、悲しみを踏み台にして日々の喜びにつなげるよう奨励しており、それによって彼らが自らをよりよく認識し、豊かな情操を得ることにつながるとしています。

 

コーラン

 

コーランによれば、精神的に安定している信心深い人は、喜びをもって輝かしい未来を見るべきだとされています。コーランは、預言者ムハンマドを筆頭とするイスラム教徒たちに対し、悲しみに打ちひしがれることなく、喜びを見つける技術を強化するよう求めています。それは、宗教的な社会における行動から生まれる要素は、社会の文化にプラス或いはマイナスの変化を生じ、最終的にその社会に希望や喜び、もしくは失望感や閉塞感をもたらしうるからです。

言うまでもなく、社会における喜びや希望は物質的、精神的な進歩やプラスの活動、努力の原動力となり、閉塞感や失望は物質的、精神的に堕落し、活力のない停滞した社会を生み出します。このため、伝承は、悲しみは悪魔や偽善者、不信心者や多神教徒から生じるものだと見なしています。

イスラムの聖典コーランは、喜びや希望により、永遠の命に比べて物質的な世界が小さいものであることを示し、悲しみを和らげ、喜びを増やす世界への扉を開いています。コーラン第27章、ナムル章、「蟻」第70節において、神は預言者に対し次のように述べています。

 “彼らの逸脱に悲しんではならない。彼らの陰謀に心を痛めてはいけない

コーランは、人生において悲嘆にくれることなく、心に悲しみを抱かないよう強調しており、第15章、ヒジュル章、「ヒジル」第88節において次のように述べています。

 “不信心者たちの何人かに授けた物質的な恩恵を羨んではならない。そしてそれを悲しんではならない”

 悲しみは、時には過去から生じ、精神的な問題を生み出す引き金となります。この場合、一部の人は悲しみから解放されるために音楽を聴き、また中には麻薬やアルコールに手を出す人もいます。現代医学は、こうした病気の根源を見出そうとするとともに、鎮痛剤やビタミン剤、睡眠薬や精神安定剤を使って、患者の症状をある程度和らげようとします。

しかし、こうした病気を癒すためにコーランが提唱しているプロセスは、来世での命があるという吉報により、希望をもたらすことです。コーランは、人間によく生きるという吉報をもたらしており、悲しみを癒しうつ病を解消する方法として、神を思い起こすことやよい行い、罪を悔い改めることを挙げています。

悔い改めることは、人間の内面を新しく作り直す要素として、罪悪感や困惑、失敗を減らしてくれます。神は自らを、失敗にとらわれることなく希望を持って自分の精神や魂を浄化するよう、人間を助ける存在であるとしています。

神を賞賛し祈りを捧げ、祈祷することも、エネルギーや力の源と人間を結びつけてくれます。人間は、こうした特別なエネルギーを獲得することで、容易に自分の内面を作り直すことができるのです。神はこの点について、また悲しみから解放されることにおける祈祷の影響に関して、コーラン第21章、アル・アンビヤー章、「預言者」第87節と第88節において次のように述べています。

“「また、ズン・ヌーンを想い起こすがよい。彼は民の中から腹を立てて出てくると、我々が彼を苦難に陥らせることなどないと考えた。そこで、彼はその暗闇の中で叫んだ。『神よ、あなた以外に神はいない。あなたは完全に清らかであり、私は圧制者の一人だった』 そこで我は彼の祈りを聞き入れ、その悲しみから彼を救った。我はこのように、敬虔な人々を救い出す”