4月 23, 2018 21:49 Asia/Tokyo
  • 持続可能な開発における女性の役割
    持続可能な開発における女性の役割

現代の世界において持続可能な開発は、自然環境保護における重要なアプローチの1つとして提起されています。前回の番組では、持続可能な開発についてお話しました。今回は、持続可能な開発における女性の役割について考えることにいたしましょう。

前回は、自然環境の保護が現在、世界における持続可能な開発の最も重要なテーマの1つになっていることについてお話しました。持続可能な開発の実現は、一般市民の意識的、本格的な参加なしには不可能です、このため、今日、この目標達成に向けた一般市民の参加の下地作りが、各国の政府に使命として課されています。

一般市民とは、ある社会に暮らしている全ての人々を指します。しかし、研究者の間では、特に女性が自然環境の存続にとっての大きな資本だとされています。その理由は、自然や自然環境が神からの預かりものの一部であり、歴史を通して女性たちがその保護や維持において、より責任ある役割を果たしてきたことにあります。

古代においては、自然現象の多くは女性の神話に関連付けられてきました。水や火の女神、大地の母、美や実りの女神、太陽の女神、癒しの女神、農業の女神といった表現は、自然環境における女性の役割を示すものと言えます。

 

現代においても、自然環境の保護や持続可能な開発における女性の役割が、これまで同様に提唱されています。

1992年6月にブラジルのリオ・デ・ジャネイロの地球サミットで採択された、環境と健康の保護を目的とする、最も権威ある国際的な行動計画・アジェンダ21でも、女性がこのプロセスにおける主要なグループとされています。それは、家庭や社会面での女性の役割、そして倫理にかない精神性にあふれた女性の言動が、常に社会に対する必要な影響力により、大きな目的の推進において重要な要素とされているからです。

持続可能な開発における女性の役割

 

一般的に、女性は家庭の運営や子どもの躾、そして次世代への文化や知識の伝達において重要な役割を果たしています。子どもの躾は、女性に委ねられるのが普通であり、子どもは生まれた後は生活様式や周りの環境とのコミュニケーションなどを、母親から学び取ります。女性が自然環境の危機の重要性を理解すれば、自分の家族を初め、自らが属する集団組織のメンバーに、必要な認識を伝えるとともに、特にこの価値ある遺産を子どもに継承させることができるのです。

さらに、集落に居住する女性たちは農業や、地方の伝統習俗の形成において大きな役割を担っていることから、自然環境や天然資源の保護を目的としたグループ活動において大きな力を持ち、環境の美化に、より大きな役割を果たすことができます。このため、今や自然環境や天然資源の保護、そして持続可能な開発の達成に向け、女性の役割はさらに大きな重要性を帯びてきています。

今日、女性が持つ知識や思考、機能が持続可能な開発や自然環境保護を初めとする社会、経済、政治面のすべてに影響することは、数多くの学術的な研究調査や証拠資料によって証明されています。

女性が社会の様々な問題を管理し、計画する力をつけてきたこともさることながら、女性の行動によるほかのいくつかの効果が見られます。その1つとして、世界で最も多くの買い物をするのが、(主婦を初めとする)女性であるということが指摘できます。家庭における主婦の責任、夫や子どものニーズに応えることへの義務感はともかく、資本主義世界の消費志向をベースとしたアイデンティティの形成も、自然環境に影響を及ぼしうる要素の1つです。それは、自然や自然環境が今や、特に産業化の時代における人々の消費志向の犠牲になっており、次第にバランスを失ってきているからです。現代人の消費志向というアイデンティティは、世界を環境破壊というマイナスの変化に向かわせている要因として、一考を要するものです。

 

村落の家庭における、自然環境の分野での女性の役割は、決して否定できません。世界の多くの国では、水や燃料、飼料となる牧草の収集や保管を担当しているのは女性です。彼女たちはさらに、漁業や農業にも従事している可能性もあります。彼女たちの活動は、森林や湿地、農業用地にも影響を及ぼしています。

女性と天然資源の密接な関係により、自然環境が維持され、気候変動対策の成功や持続可能な開発につながる可能性があります。森林の多い村落地域に住む家庭の経済における5つの基本的な要素は食料、燃料、牧草、建築資材や調理器具、植物性の染料や薬草を初めとした家庭の必需品であり、これらは樹木による収入から得られるものです。そのため、集落部に住む女性は森林から得られる資源の減少を非常に恐れています。それは、彼女たちは森林がなくなってしまった場合には、薪や牧草を探すためにさらに苦労することになり、重い荷物を背負ってそれまで来た道を引き返さなければならないからです、

水資源についても、女性は似たような責務を担っています。集落地域や貧民が多く住む地域の多くにおいては、女性や子どもが水を確保する責務を担っているのが普通です。天然の水資源の減少により、女性たちは水を得るためにより長い距離を歩かなくてはなりません。女性や子どもは家庭内で最も水を多く使用することから、神からのこの恩恵の価値をよりよく実感しています。一方で、女性は男性よりも大気や水の汚染による被害を受けやすくなっています。温室効果ガスや気候変動、環境汚染の悪化は、特に農業に従事する多くの女性の生活に直接影響し、さらには彼女たちの健康にも影響を及ぼします。その典型的な例が、女性特有のガンの増加です。

 

今や、環境保護なくしての、人間中心の開発は不可能であることに疑いの余地はありません。同時に、自然環境の保護の実現に、女性の参加は決して欠かせないものです。このため、1980年代以降において、各国の政府や政治家、国際政治の専門家は自然環境の保護における女性の大きな役割に特別な注目を寄せています。

1985年には、ケニアの首都ナイロビで、第3回世界女性会議が開催され、将来に向けた戦略としての自然環境保護における女性の役割が正式に承認されました。

1991年にも、女性と自然環境に関する、初の国際的な女性会議がアメリカ・マイアミで開催されました。

1992年には、自然環境と持続可能な開発に関する国連の会議において、女性が持続可能な開発における主要なグループとして認められました。この会議には、文化の基盤作りに女性が積極的に参加することや、持続可能な開発の実現に必要な下地作りの必要性が強調され、さらにこの原則を実施した国々では目覚しいスピードで、持続可能な開発への動きが形成されています。西暦2000年に、189の国連加盟国により採択されたミレニアム開発目標でも、環境保護における女性の役割が強調されました。

持続可能な開発における女性の役割

 

今日、環境学の専門家は、女性が資源の適切な利用という文化の教育を受け、これを身につければ、この文化が家族のほかのメンバーにも伝達され、天然資源や自然環境の存続の下地が出来ると考えています。実際に、女性は自然環境に対する行動の修正において決定的な役割を果たすと思われます。このため、世界の多くの国では、女性の教育が計画の優先事項に据えられています。

自然環境問題の教育における第1の目標は、人間の生活の質の向上と維持です。また、こうした教育の社会的な目的は、地球に住む人類の寿命の延長を考えることをベースとしなければなりません。さらに、そのほかの目的として、地球の生物やその恩恵の維持、そして自然環境とその汚染源を突き止める計画が考えられます。

このため、自然環境保護の分野における女性の教育の主な目的は、女性や家族、社会の健康にとっての問題を解決するための意欲を女性に持たせ、能力を身につけさせることです。環境問題の解決を目的とした活動への参加を促すことにおいて、女性に能力を身につけさせることは、社会に能力を付けさせることを意味します、。必要な教育を受け、能力を身につけることで、女性は様々な形での参画により、自然環境保護における自らの役割を果たすことができるのです。

一方で、自然環境に関する決定に女性が参加することは、こうした計画が将来的に継続される上で重要な役割を果たします。現在、世界の多くの地域では、女性が環境保護の専門家や教育、革新、環境保護運動のリーダーといった役割を担っています。

緑化地帯運動は、ケニアの環境保護活動家だった、今は亡きワンガリ・マータイさんにより創立されました。彼女は、2004年にノーベル平和賞を受賞しています。また、ペルーの社会企業家アルビナ・ルイスさんと、彼女が立ち上げたNGOシウダ・サルダブレ(健やかな都市)は、廃棄物処理の分野で地元の社会に貢献しています。また、アフガニスタン・バーミヤン州の初の女性知事となったハビーベ・サラービーさんは、同国で初の国立公園バンデアミールを建設しました。しかし、これらの人々は自然環境保護の分野で行動を起こしたごく一部の人々に過ぎません、。今や、世界各地で、勇気ある多数の女性たちが、決して名声を博することなく、自然環境保護にまい進しているのです。