12月 17, 2021 17:53 Asia/Tokyo
  • 聖典コーラン
    聖典コーラン

これまで2回に渡り、コーラン第7章アル・アアラーフ章高壁についてお話ししてきました。今回も引き続き、この章を見ていくことにいたしましょう。

慈悲深く、慈愛あまねき神の御名において

アル・アアラーフ章は、一連の問題を取り上げた後で、ヌーフ、フード、サーレハ、ルート、ショアイブ、ムーサーなど、神の預言者たちの辿った運命について触れ、昔の民の教訓に満ちた歴史を示そうとしています。まず、預言者ヌーフの運命で始まり、ヌーフと、彼の反抗的な民との会話がでてきます。また幾つかの節では、ヌーフが自らの民の許に遣わされたとき、彼らに伝えられたのは、唯一神信仰という真実に注目することと、偶像崇拝を否定することでした。ヌーフは、眠っていた良心を目覚めさせ、彼らに偶像崇拝をやめさせようと努めました。

 

「我々はヌーフを自分の民の許に遣わした。ヌーフは彼らに言った。『私の民よ、唯一の神[のみ]を崇拝しなさい。彼の他にあなた方にとって崇拝の対象はいない。[もしそうしなければ、]私はあなた方に降りかかる大いなる日の懲罰を恐れる』」

唯一神の信仰は、ヌーフだけでなく、神の全ての預言者が呼びかけていた事柄です。

唯一神

 

アル・アアラーフ章の重要な物語の一つは、ムーサーがフィルアウンの利己的な統治と戦った物語です。とはいえコーランは、この章だけでなく、別の章でも、様々な箇所で、この教訓に満ちた出来事に触れています。アル・アアラーフ章の第103節には次のようにあります。

 

「それから彼ら[、以前の預言者たち]の後に、自らの節とともに、フィルアウンとその民の長老たちの許にムーサーを遣わした。だが彼らは[その節を受け入れず、]彼に圧制を行った。見るがよい。堕落した人々の結末がどのようなものであったかを」

 

この節は、利己的な力に対抗することが、社会に公正を広めるための神の預言者たちの第一の計画だったことを示しています。ムーサーは預言者に任命された後、まず、フィルアウンとその側近たちの許に行きました。ムーサーは、自分が預言者であることを証明するために、様々なしるしや奇跡を携えていましたが、フィルアウンたちは、ムーサーの言葉を受け入れず、利己的で非論理的な態度によって、彼に圧制を加えました。第104節には次のようにあります。

「ムーサーは言った。『フィルアウンよ、私は世界の主の使徒である』」

これは実際、ムーサーのフィルアウンに対する最初の対応であり、真理と偽り、正義と悪の対決の場面でした。このムーサーの言葉は、唯一の神のみが、世界の主であることを指しており、フィルアウンと彼の統治に対する宣戦布告でした。ムーサーは続く第105節で、自分の要求を提示します。

「そこでイスラエルの民を私と一緒に行かせてくれ」

フィルアウン

 

ムーサーの目的の一つは、イスラエルの民をフィルアウンの圧制から救い出し、エジプトの土地を離れさせることにありました。しかしそれには、フィルアウンと話し合う必要がありました。なぜなら、社会の逸脱や腐敗と闘うためには、まず、その社会の為政者、政治、経済、文化の鍵を握る人々から変えていかなければならないからです。そうすれば、他の人たちを改革する道が開けるでしょう。イスラエルの民は当時、卑しい奴隷としてエジプトの人々に捕らわれ、耐え難い辛い作業に利用されていました。ムーサーは、自分が確かに神の預言者であることを証明するために、2つの大きな奇跡を示しました。第107節には次のようにあります。

 

「突然、自分の杖を投げた。するとそれは明らかな竜になった」

杖が竜に代わるのは、明らかに大きな奇跡であり、一神論者によれば、それは超自然的な力によってのみ、可能なことです。続く第108節では、ムーサーのもう一つの奇跡について述べられています。

「[ムーサーが]服の中に隠していた手を示した。するとそれは、見る者のために突然、白くなった」

 

これらの奇跡を目にした後のことについて、続く第109節を見てみましょう。

「フィルアウンの側近たちは言った。『明らかに、これは賢い魔術師だ』」

彼らは、ムーサーに対抗する方法について互いに意見を交わし合い、フィルアウンにこう言いました。「ムーサーとその兄弟のハールーンについては急いではならない。それに関する決定は後回しにした方がよい。だが、役人たちを全ての町に送り、賢くて優れた魔術師たちを集めなさい」

フィルアウンの目的は、魔術師たちの魔術によってムーサーの奇跡を退け、人々の前でムーサーに恥をかかせ、それから彼を殺害し、ムーサーとその兄弟、ハールーンの物語が、永遠に人々の記憶から消し去られるようにすることにありました。そのためフィルアウンは、全ての人をこの対決の見物に招きました。それは、フィルアウンが自分の勝利を確信していたことを示しています。

こうして約束の日が訪れました。魔術師たちは準備を整えていました。彼らは特別な物質を入れた杖と縄を用意していました。これらの杖と縄は、太陽の光りを浴び、熱を帯びると動き出すものでした。不思議な場面が広がっていました。ムーサーは、たった一人で、大勢の観客が見守る中、魔術師たちと対峙していました。魔術師たちは、高慢な態度でムーサーに言いました。「あなたから始めるか、それとも私たちから始めようか」 ムーサーは言いました。「あなたたちから始めてください」 魔術師たちが縄を中央に投げると、大きな魔術が行われ、人々の心に恐怖が生まれました。

 

その後、あちこちから歓声があがり、フィルアウンとその側近たちの口には満足の笑みが浮かびました。そのとき、神の啓示がムーサーに下りました。第117節と118節には次のようにあります。

「我々はムーサーに、自分の杖を投げなさいと啓示した。すると突然、[大きな竜が現れ、]彼らの偽りの道具をたちまち飲み込んだ。[そのとき]真理が明らかになり、彼らが作ったものが帳消しにされた」

この大きな奇跡の後、状況が一変します。大勢の人々は逃げ出し、中には気を失った人もいました。不安そうな面持ちで恐怖におびえながら、その場面を見ていたフィルアウンとその側近たちは、自分たちの暗く曖昧な未来について考えていました。この場面は、彼らにとって思いもよらぬものだったのです。これは、フィルアウンの権力の基盤にもたらされた最初の一撃でした。

 

それ以上に大きなダメージとなったのは、魔術師たちの表情が完全に変わったことです。ムーサーの奇跡を目にしたあと、魔術師たちは地面にひざまずき、唯一の神の偉大さの前に平伏しました。彼らは、「私たちは世界の主に信仰を寄せました。ムーサーとハールーンの神に」と叫びました。魔術師たちのこのような態度の変化は、フィルアウンと側近たちにとって、全く予想していなかったことでした。魔術師たちは、フィルアウンから、ムーサーを打ち負かすことを期待されていた人々だったのです。しかし、彼の期待に反し、魔術師たちは、敬虔な人間の仲間になってしまいました。魔術師たちは、ムーサーの行いが魔術を超えたものであり、人類を超えた力に由来していることを悟りました。そのため、彼らは、フィルアウンの脅迫にも拘わらず、自分の未来を恐れずに、堂々と自分の信仰を表明しました。

 

神はその後、フィルアウンたちがナイルの流れに沈んだ出来事に触れ、圧制的で利己的な統治体制は、どれほど力を持っていても、最後には滅びるということを示しています。第142節をお聞きください。

 

「また我々はムーサーに30夜を約束し、その後でそれに10夜を加えた。こうして主の約束は40夜となり、ムーサーは兄弟のハールーンに言った。『私の民の中で、私の後継者となってください。[彼らを]改革し、堕落した人たちのやり方に従ってはならない』」

 

ここから先のいくつかの節は、ムーサーと神との語らいと、それに関する事柄が述べられています。第148節から後には、イスラエルの民が子牛を崇拝していたことについて、次のようにあります。

 

「ムーサーの民は、彼の[去った]後、自分の装飾品で子牛を作った。それは牛の鳴き声が出る、魂のない品だった。彼らは、それが彼らと言葉を交わすことも、彼らを[正しい]道に導くこともないのを知らないのか。彼らはそれを[神に]び、圧制者となった」

 

イスラエルの民は、長年に渡って、エジプトの人々が子牛を崇拝するのを目にしていました。一方、ナイル川を渡る際、川の向こう側に暮らす民の偶像崇拝も、彼らの興味を惹きつけました。彼らはムーサーに対し、自分たちにも偶像に似た神を据えて欲しいと頼みました。ムーサーは、そのような要求をした彼らを激しく非難しました。しかし、ムーサーが神との語らいに出かけ、40日も留守をしていた間に、サーメリーという人物が陰謀を企てました。サーメリーは、イスラエルの民の信仰の弱さを悪用し、女性の装飾品を集めて、金の子牛の像を作り、人々に、それを崇拝するよう言いました。サーメリーは、その像に細工をして、牛の声が出るようにし、言いました。「これはあなた方の神であり、ムーサーの神である」 イスラエルの民も、サーメリーの言葉を受け入れ、それを自分の崇拝の対象としました。コーランはそこで、このように語っています。「この動物が彼らと語ることはなく、人々を導く力もないことを、彼らは見なかったのか?」

 

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