12月 28, 2021 00:24 Asia/Tokyo
  • コーラン、第12章ユーソフ章ヨセフ
    コーラン、第12章ユーソフ章ヨセフ

今回は、コーランの第12章ユーソフ章ヨセフを見ていくことにいたしましょう。

慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において

コーラン第12章ユーソフ章ヨセフ、第3節には次のようにあります。

我々は、啓示とこのコーランを送ることによって、最高の物語を汝に語っている。これ以前にも汝は気づかないものだった」

 

 

ユーソフ章はメッカで啓示され、全部で111節あります。この章は、人間の美しい特徴、醜い特徴を、非常に見事な形で示しています。この章は、神の預言者ユーソフの教訓にあふれた興味深い運命について述べているため、ユーソフ章と名づけられています。ユーソフは、神を求める賢い人物として紹介されています。この人物の中には、清らかさ、忍耐、寛容さ、誠実さといった美徳がくっきりと存在しています。

 

ユーソフ章は、様々な点から、コーランの他の章とは異なっています。この章の様々な部分は、他の章とは違って、全てが互いに結びついており、一つの物語を完成させています。10以上の部分に分かれた物語が、非常に優れた魅力的な表現によって述べられています。また、他の章では、通常、神の預言者たちの物語が、反抗的な民との闘争と共に述べられていますが、この章では、ユーソフの物語の多くは、彼の波乱に満ちた人生と、それをどのように乗り越え、エジプトの為政者にまでのぼりつめたのかについて述べています。

 

 

神は、預言者ユーソフの物語の中で、清らかさと自己抑制に関する最高の教えを提示し、誰でもこの物語を読めば、おのずと、それにひきつけられていきます。そのためコーランは、それを最高の物語と予備、そこには、知識ある者たちのための教訓があるとしています。

 

とはいえ、これは、人類を導くために、歴史の中から過去の民の物語を選び出し、分かりやすく印象深い言葉で述べるという、コーランのやり方です。明らかに、物語は、人間にとって特別な魅力があり、あらゆる時代における人間の生活と織り交ざっています。先人たちの物語は、彼らの貴重な経験を集めたものであり、透明な鏡のように、様々な民族の成功や失敗、美しさや醜さの歴史を映し出しています。そのため、シーア派初代イマーム、アリーは、息子への遺言の中で、次のように語っています。「私は先人たちと共に生きたわけではなかったけれども、彼らの行いを観察し、彼らの状態について考えた。そしてその痕跡を旅し、彼らの一人になったかのようだった。私は、彼らの歴史的な経験から悟った事柄ゆえに、まるで彼らの最初の人物と、最後の人物と共に生活をしたかのようだった」

イランのテレビドラマ預言者ユーソフ

 

ここからは、預言者ユーソフの物語に入ります。第4節には次のようにあります。

「ユーソフが父にこう言ったとき[を想い起こしなさい。]『父よ、私は夢の中で、11個の星と太陽、月が私の前にひれ伏すのを見ました』」

 

コーランは、ユーソフの物語を、彼の意味深い驚くような夢によって始めています。ユーソフはある朝、興奮した様子で父親の許にやって来て、自分が見た不思議な夢のことを明らかにします。それは、彼の人生における新たな幕開けを意味していました。ユーソフは言いました。「父よ、私は昨夜、夢を見ました。11個の星が空から落ちてきて、太陽と月も、それらと一緒でした。全てが私の許にやって来て、私の前にひれ伏したのです」 この不思議な夢の話を聞き、預言者ヤアクーブは考えに沈みました。「この夢は、私の息子が、星や太陽、月にもひれ伏されるほどの地位に上り詰めるということを示している。何と華やかで興味深い夢であることか」 そのため、ヤアクーブは心配そうな様子でユーソフに向かって言いました。「その夢を兄弟たちに話してはならない。彼らはお前のために危険な計画を立てるだろう。神はお前を選び出し、夢を解釈する知識をお前に教え、お前とヤアクーブ一族に完全な恩恵を与えてくださるだろう。以前にも、お前の先祖たち、イブラヒームとイスハークに完全な恩恵が与えられたのと同じように。お前の主は全知全能の方である」

 

ヤアクーブには12人の息子がいました。そのうちの2人、ユーソフとベンヤミンは同じ母親から生まれ、ヤアクーブは特に、この2人をかわいがっていました。なぜならヤアクーブにとって、最も幼い子供たちであり、当然、誰よりもよく面倒を見てやらなければならなかったからです。また特にユーソフの中には、普通ではない痕跡が見られました。それにより、ヤアクーブは彼らを特にかわいがっていたのです。兄弟たちは、このような父と子の関係をねたみ、「私たちは若くて強いのだから、父親の生活の面倒を見ることができるというのに、ユーソフとベンヤミンは、私たちよりもかわいがられている」と話していました。このような嫉妬心により、兄弟たちは、陰謀を企てます。彼らはこう言いました。「ユーソフを殺すか、あるいは遠い地の果てに置き去りにして、父の愛情が届かなくなるようにしてしまおう」 彼らは嫉妬に狂っていたため、自分たちの誤った行いの結果について考えることはありませんでした。

 

この物語では、人間の嫉妬の影響がはっきりと述べられています。時に、人間は嫉妬にかられて、理にかなわない行動に出てしまうことがあります。嫉妬深い人間は、自分の成長や美徳に向かう代わりに、他人を破壊しようとするのです。

 

ユーソフ章の第11節には次のようにあります。

「[兄弟たちは父親の許にやって来て]言った。『父よ、なぜあなたは、ユーソフに関して私たちを信じてくださらないのです? 私たちは彼の善を望んでいるというのに』」

 

ユーソフの兄弟たちは、兄弟としての愛情をかけるふりをして、彼を殺害するか、あるいは遠くに置き去りにしてしまう計画を練り、殊勝な態度で父親の許に来ると言いました。「父よ、なぜあなたは、ユーソフを自分のもとから遠ざけ、私たちに委ねることがないのですか?なぜ私たちでは、兄弟を守ることができないと思うのですか? 私たちは明らかに、彼の善を求めています。明日、彼を町の外に連れ出し、散策させたいと思います。木の実を食べさせ、遊ばせるのです。もし彼のことが心配なら、私たちが必ず、兄弟である彼のことを守って見せます」

 

このようにして、兄弟たちは、ユーソフを父親から引き離すための陰謀を画策しました。父のヤアクーブは言いました。「私は彼と離れるのが悲しい。また彼が狼に食べられてしまい、あなたたちがそれに気づかないのを恐れる」 兄弟たちは言いました。「彼が狼に食べられてしまうはずはありません。私たちは力が強い。彼を守るでしょう。だからそのようなことは起こりません」 こうしてユーソフの兄弟たちは、父親の同意を得て、ユーソフを連れ出すことに成功しました。

 

朝になり、彼らは父親の許にやって来ました。ヤアクーブはユーソフを兄弟たちの手に委ねました。彼らは出発しました。ヤアクーブは不安そうなまなざしで子供たちを見送りました。兄弟たちは、父親が見ている間はユーソフに優しくしていましたが、父には見えないことが確信できる距離まで来ると、ユーソフに対して持っていた憎しみをぶつけ、彼を殴り始めました。ユーソフは助けて欲しいと懇願しましたが、兄弟たちは耳を貸しませんでした。こうして彼を井戸のそばまで連れて来ました。

伝承には次のようにあります。兄弟たちがユーソフの体を井戸の中に投げ落とそうとしたとき、ユーソフは突然、笑い出しました。兄弟たちは、そのような場面でユーソフが笑い出したことに驚きました。するとユーソフは、「自分はこのことを忘れない。いつのことだっただろう。あなたたちのような力のある兄弟を持ったことを喜び、これほど力強い援助者を持った人間は、日々の出来事を悲しんだりはしないだろうと考えていた。あの頃、私はあなたたちを頼りにしていた。だが今、私はあなたたちのわなにはまってしまった。神はあなたたちに私を支配させた。神以外の者に頼ってはならないということを私に学ばせるために」

 

この物語はこう続いています。「そのとき、我々はユーソフに啓示を下した。いつの日か、あなたは彼らがあなたに気づかない中で、彼らに、この悪しき陰謀を明らかにすることだろう。つまりあなたは、いつの日か権力の座につき、兄弟たちがあなたに助けを求めてくる日がくる。だがあなたは非常に高い地位にいて、彼らはあなたが自分の兄弟であるとは信じられないだろう。その日、あなたは彼らにこのように言う。『あなたたちは押さないユーソフという兄弟と一緒に、こんなこと、あんなことをしませんでしたか?』 そして彼らは自分たちの行いを恥じ、後悔するだろう」

しかし、このとき兄弟たちは、自分たちの卑怯な陰謀を実行し、ユーソフを井戸の中に突き落としてしまいました。

 

夜、兄弟たちは泣きながら父の許にやって来ました。ユーソフの帰りを待ちわびていた父は、兄弟たちを見て、そこにユーソフがいないことを悟り、激しく動揺しながら、ユーソフはどこかと尋ねました。兄弟たちは言いました。「私たちは競争に夢中でした。ユーソフには争う力がないので、荷物と一緒に座らせていたのです。私たちは競争に夢中で、ユーソフのことを忘れてしまいました。そのとき、狼がやって来て、彼を食べてしまったのです。でも、あなたは私たちの言うことを信じてはくれないでしょう。でも私たちは嘘はついていません。あなたも、以前に、彼が狼に食べられると予想していました」 

 

 


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