May 14, 2018 16:28 Asia/Tokyo

アメリカのトランプ大統領は、繰り返しの脅迫や政治的な吹き込みを数ヶ月間行った後、現地時間の8日午後、核合意は意味がなかったと主張し、国連からも承認されていたイランと6カ国の核合意から離脱する大統領令に署名しました。

核合意はイランと安保理常任理事国にドイツを加えた6カ国の協力の成果でした。しかしその後、イランのローハーニー大統領の言葉を借りれば、核合意における問題要素のひとつであるアメリカが、核合意から離脱しました。

アメリカは核合意参加国のひとつとして、安保理決議2231に基づき、イランに対する制裁を解除し、イランにおける投資や経済活動を阻害する行動を控えることを取り決めました。しかし、トランプ大統領の決定により、アメリカが約束を守らないことを明らかにしたのです。

ローハーニー大統領は、8日夜、アメリカが核合意離脱を宣言した後、テレビのインタビューで国民に対して次のように語りました。

「イランはこれまで核合意における取り決めを守ってきたが、アメリカは決して核合意の取り決めを守ってこなかった。アメリカの核合意離脱は、予想できたことだった」

 

 

ローハーニー大統領は、次のように語っています。

「核合意は維持される。我々は他の参加国とともに平和的な道を歩み続けるが、もし核合意による利益が得られない場合、新たな決断を下すことになる。これはトランプ大統領のイランに対する経済的圧力のための心理戦だ」

 

 

アメリカは一方的に核合意から離脱しました。シオニスト政権イスラエル、サウジアラビア、バーレーンをのぞく世界各国は、核合意に対する支持を表明し、アメリカの行動を残念だとしました。

EUのモゲリーニ外務安全保障政策上級代表は、8日夜、イランとの核合意は12年間の外交の成果であり、世界各国のものだとして、イランの政府関係者に対して、誰に対してもこの合意に損害を与えることを許さないよう求めました。

少なくとも、IAEA国際機関の28の公式報告は、イランの核計画に決して逸脱がないことを示しています。また、核合意以後のIAEAの10の報告も、イランが核合意の取り決めを完全に守っていたことを物語っています。

アメリカは、イランは弾道ミサイル実験により、国連決議を遵守していないと主張しています。この立場は核合意や核協議と何の関係もありませんが、アメリカは核合意に調印した当初から、これを口実にして、イランに追加制裁を課していました。

アメリカの専門家、ジム・ウォルシュ氏は次のように語っています。

「事情は単純だ。イランの計画に関して、アメリカの情報組織は長年ある主張を行ってきたが、イランが秘密裏の核兵器製造計画を有していたことを示す証拠はまったく存在しなかった。しかし、核合意が締結されたとき、メディアは決して、すべての主張は偽りだったとしなかった」

12年間にわたり偽りの主張を行った後、アメリカCIA長官をつとめていたポンペオ国務長官は、彼の就任を検討する上院の会合で、これが偽りであることを認め、次のように語りました。

「核合意以前、イランが核兵器を製造しようとしていた証拠は入手されず、また、核合意の調印なしにイランがこのような能力を獲得したという証拠も入手していない」

 

ポンペオ国務長官

 

しかし、トランプ大統領が設けた核合意にとどまるための条件は、実際のところは口実に過ぎませんでした。軍事施設の査察や、安保理決議を無視した核合意の内容修正、イランの防衛力の制限といった事柄は非論理的な事柄であり、これはアメリカが核合意の修正以上の目的を追求していることを示しています。

アメリカのイランに反対する政策や、EUにおける立場の変化に対しては、この行動に対する緻密な分析と、今後進みうるシナリオを考えることで、それらに対応できる新たな政策を採択することが必須です。

多くの人は、トランプ大統領がおろかで、外見は大人の子供じみた人物だと考えています。ここで疑問となるのは、この過剰な要求が、アメリカがイランに対して求めるすべてのものなのか、という点です。アメリカの空想的な目的は、イラン国民を再び支配することです。トランプ大統領はこうした行為を全面に押し出し、すべてにおいて、「べきだ」という言葉を使っていますが、アメリカが横暴な行動に出られた時代は、すでに終わっているのです。

一方で、この時期におけるアメリカの敵対的政策は明らかな面と暗い側面の2つの側面があります。明らかな側面は、アメリカの明白な敵対行為を示しており、あらゆる警告にもかかわらず、脅迫を続けることにこだわり、期限までに、核合意の内容の修正において国際的な支持を得ることもなく、この中で愚かな一連の行動を続けていることです。そして暗い側面とは、核合意による体制の原則に反対する政策を隠していることです。

イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師は、1年前、体制責任者との会合で、この状況について、次のように語りました。

「われわれとアメリカの問題の多くは、解決不能だ。なぜなら、われわれ自身、つまり、イスラム体制がこの問題となっているからだ。原子力も、人権も問題ではなく、アメリカにとっての問題はイスラム体制それ自体に対するものだ」

 

イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師

 

アメリカの立場や行動の本質を見ると、このような行動が、核合意以前にも存在していたということが明らかになるでしょう。言い換えれば、この一連の行動は、イランに対するアメリカの継続的な敵意を物語っているのです。

アメリカは偽りにより、核合意の違反で非難されないよう、行動しています。しかし、トランプ大統領が核合意の離脱を急いだことにおいては、論理的な理由はまったくなく、受け入れがたいものであり、またアメリカの計算を狂わせました。なぜなら、イランは核技術に関して、まったく違反した行動を取らず、IAEAも、イランの核計画の平和性と、核合意の完全な取り決め履行を報告していたからです。

イランは核活動を核合意以前の状態のレベルに戻すことができますが、これは正式に認められた権利なのです。

いずれにしても、イランからすれば、その立場は明らかです。イランのレッドラインは、利益が守られるまで核合意を維持することであり、核合意がその本筋からそれれば、イランは核合意にとどまることはありません。国際問題の専門家のハーディヤーン教授は、アメリカの反イラン的な政策について、次のように語っています。

「この圧力はシオニスト政権イスラエルのためだ。トランプ大統領はイランの体制転覆の政策を追求している。これに関して、アメリカの対イラン政策の中で、6つの集団が、イランの体制転覆を優先事項としている。シオニスト政権、アメリカのシオニストロビー、サウジアラビア、アメリカのサウジアラビアロビー、イランの反体制派テロ組織モナーフェギン、ネオコン集団だ。これらのグループはアメリカの各大統領時代、イランを国際社会の脅威であるかのように見せようとしているが、トランプ大統領はイランの体制の本質が問題を作り出していると結論付けるために、複数の脅威をまとめてひとつにしている。彼はまさに、いつにも増して、シオニスト政権の圧力を受け、イランの体制転覆政策を追求している」

一方で、アメリカの核合意離脱は、国際レベルで多くの批判に直面しており、侵略的な政権のみがこの行動に満足の意を表明しています。

シオニスト政権のネタニヤフ首相は、トランプ大統領の核合意離脱を勇気ある行動だとしました。このような支持は、政治的な栄誉や勝利の要因とはならないばかりか、トランプ大統領の国際的な孤立を物語っています。

 

シオニスト政権のネタニヤフ首相

 

この40年間のさまざまな時期や場面に現れた、イラン国民のアメリカに対する不信感の強さは、約束や取り決めを守らないアメリカ政府の行動の結果です。核合意も、アメリカにとっては、イランへの対抗の始まりだったのです。アメリカのカーネギー研究所と新アメリカ安全保障センターの専門家は、報告の中で、次のように記しています。

「イランは西アジアにおけるアメリカの利益にとって深刻な脅威のひとつとみなされ、アメリカはこの脅威の解決のために、イランに対して包括的な戦略を採択している。その戦略は、同時平行でいくつかの手段を利用する。この戦略の中心にあるのは、押し付けと協力を混ぜて行使することだ」

現在、アメリカの核合意離脱により、アメリカの対イラン政策というパズルの1ピースが、アメリカの手から離れることになりました。アメリカはこの取り決め違反により、短期的、中期的な戦略の利益を脅威に直面させています。

アメリカは現在も、イランと他の核合意参加国がアメリカの離脱宣言後に関して想定していたいくつかの選択肢に直面するため、準備することを余儀なくされています。イランの国会議員は、最高指導者のハーメネイー師に対する書簡の中で、イランの人々と体制責任者は、どのような状況であっても、敵が、その違法な要求をイランに押し付けることを許すことはないと強調しました。