コーラン第60章アル・ムムタヒナ章試問される女(1)
-
聖典コーラン
今回はコーラン第60章アル・ムムタヒナ章試問される女についてお話します。
慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において
アル・ムムタヒナ章はメディナで下され、全部で13節あります。
この章では、主に、神のための友好と敵対、多神教徒との友好の否定、預言者イブラヒームからインスピレーションを得るようにとのイスラム教徒への呼びかけ、友好と敵対の境界、移住した女性たちと彼女たちへの試練、またそれに関する戒律、イスラム教徒の女性たちと忠誠を誓う際の条件が述べられています。
アル・ムムタヒナ章の第1節を見てみましょう。
「信仰を寄せた人々よ、私の敵とあなた方の敵を友人としてはならない」
イスラムの預言者ムハンマドは、メッカ征服を準備していましたが、預言者の教友の一人は、一人の女性に書簡を渡しました。その書簡をメッカの多神教徒のもとにもって行き、預言者がメッカに向かおうとしていることを伝えさせようとしたのです。大天使ジブライールは、この出来事を預言者に伝えました。預言者は、シーア派初代イマームアリーの他、数人を呼び、彼らにメッカに向かうよう求めました。そしてこのように言いました。「道の途中で一人の女性に会うだろう。彼女はメッカの多神教徒のための書簡を持っている。その書簡を彼女から奪うのだ」
預言者はそれにより、イスラムの軍勢がメッカに移動していることが公になったり、軍の秘密が暴かれたりするのを阻止しようとしました。こうして彼らがそこに行き、預言者に言われた場所でその女性に出会い、書簡をその女性から奪いました。女性は、そのような書簡は知らないといいましたが、イマームアリーはこう言いました。「預言者が私たちに嘘を言ったのでもなければ、私たちが嘘を言っているのでもない」 それから剣を抜き、言いました。「書簡を渡しなさい」
その女性は問題が深刻であることを悟ったとき、隠していた書簡を出して渡しました。イマームアリーたちはその書簡を預言者に届けました。預言者は、その書簡の書き手を呼び出し、彼に、「どうしてこんなことをしたのか」と尋ねました。彼は言いました。「預言者よ、神に誓って、イスラムを受け入れた日から一瞬たりとも不信心者になったことはなく、あなたを裏切ったこともありません。しかし、私の家族はメッカで多神教徒たちと一緒に暮らしています。だからこうすることで、多神教徒を味方につけ、彼らが私の家族に嫌がらせをするのを防ごうとしたのです。でも私は、神が最終的に彼らを打ち負かすこと、私の書簡が役には立たないことを知っていました」
預言者は、この人物の行いが意図的な裏切り行為ではなかったことを知っていたため、彼の謝罪を受け入れ、彼を許しました。この出来事の中で、彼は裏切りを意図していなかったものの、イスラムの敵への愛情表現と見なされました。そのとき、アル・ムムタヒナ章の最初の数節が下され、イスラム教徒に対し、「信仰を持つ人々は、神の敵と友好的な関係を持つ権利はない、なぜなら神の敵は、敬虔な人間の敵でもあるからだ」と警告しました。
アル・ムムタヒナ章の第1節を見て見ましょう。
「あなた方は、彼らがあなた方に真理としてやって来たものを信じず、あなた方と預言者を、あなた方の主である神への信仰を理由に[メッカから]追い出したというのに、彼らと友好を誓い合う」
「彼らは信条においてあなた方に反対し、行動においても、あなた方との闘争に立ち上がっている。そして、あなた方の最大の誇りである神への信仰を、大きな罪と見なしている。それなのに、あなた方は彼らに愛情を表すのか」 コーランはその後、さらに次のように加えています。
「もしあなた方が私の道における戦いと我々の満足をひきつけようとしたがために[祖国を]追われたのなら[、彼らと友好を結ばないように]。あなた方は隠れて彼らと友好関係を結んでいるが、私はあなた方が隠していること、あるいは明らかにすることを、よりよく知っている。あなた方のうち、誰でもそのようなことをすれば、間違いなく、正しい道から外れたことになる」
アル・ムムタヒナ章の第2節では、内容をより明らかにするために理由が述べられています。
「もし彼らがあなた方を支配すれば、あなた方の敵になるだろう。彼らの手や口は、あなた方に向かって悪く広げられる。彼らはあなた方が不信心者になるのを望んでいる」
「それなのになぜ、彼らと友情を結ぼうとするのか?彼らのあなたたちに対する敵対は非常に根深いものであり、あなたたちを支配したなら、彼らはいかなる行いも厭わず、その手と口であなたたちに嫌がらせを加えるだろう。何よりも悪いのは、彼らがあなたたちをイスラムから不信心に戻し、最高の資本である信仰を手放させようとしていることだ」
アル・ムムタヒナ章の第3節は、メッカの多神教徒に手紙を書いた人物のような人々に対し、次のような点を指摘しています。「自分の親類を守るためにイスラム教徒の秘密を暴いたりしてはならない。最後の審判の日、人間の行い以外に役に立つものはない」
「最後の審判の日、あなた方の親類や子どもたちが、あなた方に利益をもたらすことはないだろう。[その日、神は]あなた方と彼らの間を分かつ。神はあなた方が行うことを見ておられる」
ここで、彼らは互いに分けられ、結びつきは断たれます。信仰を持つ人々は楽園へと向かい、不信心者は地獄へと向かうのです。