「パンのことを考えるんだ。メロンには水分しかない」
昔々のこと。2人のレンガ職人がいました。彼らは友人同士で、その仕事は日干しレンガを造ることでした。毎日、朝から晩まで、大量の土と水をこね合わせて泥にし、それを木枠に流し込んではレンガを作っていました。そうして、わずかな賃金を得ては細々と暮らしていたのです。
昔々のこと。2人のレンガ職人がいました。彼らは友人同士で、その仕事は日干しレンガを造ることでした。毎日、朝から晩まで、大量の土と水をこね合わせて泥にし、それを木枠に流し込んではレンガを作っていました。そうして、わずかな賃金を得ては細々と暮らしていたのです。
ある日の午後、2人とも疲れておなかをすかせていたところ、一人が言いました。
「どんなに働いても、何にもならない。食べるものにも事欠くありさまだ。手に入る金は、ようやくパンが買えるばかりのもの。君はパンを少し買ってきてくれないか。僕はもう少し作業をして、レンガを作るから」
こうしてもう一人がパンを買いに行くことになりました。
市場に到着すると、キャバブを売っている店、スープを売っている店が大勢の客で賑わっています。様々な料理の匂いに、益々腹が減ってきました。しかし、できることは何もありません。金が足りなかったのです。彼は必死に我慢して、キャバブやスープ、様々な料理を売っている店をやり過ごしました。パンを売る店の近くまで来ると果物屋がありました。果物屋には、なんとも瑞々しくて美味しそうなメロンが並んでいます。彼はもう長い事、メロンを食べていませんでした。そこで考えました。
「もう少し金があったら、今日のお昼に、パンとメロンを食べることができたのに。でも残念ながら、金が足りない」
そこで彼は、メロンを諦め、パンを売るお店に行こうとしました。しかし、足が言う事を聞きません。今度はこう考えました。
「そうだ、パンの代わりにメロンを買うことにしよう。メロンも悪くない。腹を満たすこともできるだろう」
こうして、持っていた金をはたいて果物屋でメロンを買い、友人の待つ作業場へと戻りました。
彼は、帰る途中で、友人から感謝されるだろうか?と考えていました。彼は、パンの代わりにメロンを買ったことで、なかなか良い事をした、と思ったのです。友人のもとに着くと、彼はまだ作業中でした。友人の額からは汗が流れ、おなかをすかせていることは明らかでした。彼は買ってきたメロンを後ろに隠し、友人に言いました。
「何を買ってきたと思う?」
友人は言いました。
「早くパンを出してくれ。もうおなかがぺこぺこだよ。もしかしたら、パンの他にも何か買うことができたのかい?じゃあ、僕は手を洗ってくるから、クロスを広げて準備しておいてくれよ」
男は友人のこの言葉を聞くと、少し心配になりました。
「メロンじゃ空腹を満たせないかもしれない」
友人が手を洗って戻ってくると、男は気まずそうに膝を抱えていました。そして、クロスの上にはパンではなくて、メロンが置かれていました。友人は事の成り行きを理解しました。そこで、怒りを抑えて言いました。
「メロンに心を奪われたのか?パンの代わりにメロンを食べて、夜まで泥を踏み、レンガを作れると思ったのか。パンにはエネルギーがあるんだ。メロンは甘いけれど、水分ばかりじゃないか」
その日、二人は、昼ごはんの代わりにメロンを食べ、日が暮れるまで、腹を鳴らしながら、作業を続けました。このときから、何か重要なものに対して、まったく価値のないものを比べるときに、こう言うようになりました。
「パンのことを考えるんだ、メロンには水分しかない」