7月 18, 2023 15:20 Asia/Tokyo
  • エラム庭園
    エラム庭園

今回は、イランの最も美しい庭園の一つ、「エラム庭園」についてお話しましょう。

エラム庭園

 

これまで数回に渡り、イランの様々な時代の庭園作りについてお話ししました。イランでは、広大な地理と気候の多様性により、歴史を通して様々な形の庭園が造られてきました。今回は、イランの最も美しい庭園の一つ、「エラム庭園」についてお話しましょう。エラム庭園は、その歴史や美しさ、その他の特徴により、2011年6月、ユネスコの世界遺産委員会の会合で、イランの他の8つの庭園と共に世界遺産に登録されました。

 

エラム庭園

 

イラン南西部の町シーラーズには、数多くの庭園があり、その自然の特徴により、これらの庭園は常に、春のように緑が多い場所として知られています。デルゴシャー、ジャハーンナマー、ゴルシャン、ナーレンジェスターン・ガヴァーム、ハーフェズとサアディの墓、ハフト・タナン、エラム、これらは、文学と詩の町、シーラーズの最も代表的な美しい庭園です。シーラーズは、エラム庭園をはじめとする重要な庭園の存在により、イランの庭園作りの中でも、特別な地位を誇っています。中でもエラム庭園は、イランで最も美しく、最も古い歴史を持っています。

 

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エラム庭園の歴史は、11世紀から12世紀のセルジューク朝時代に遡ります。この庭園は、ティムール朝によって殺害されたアル・モザッファル朝最後の王、シャー・マンスールの時代に繁栄を遂げました。ティムール朝は、シーラーズにある幾つかの庭園を目にし、その美しさに感銘を受け、サマルカンドにも、エラムという名の庭園を造りました。サファヴィー朝時代のエラム庭園の状況については、正確な情報が残されていません。しかし、ザンド朝時代、ジャハーンナマーやナザルなどのシーラーズの多くの庭園が建設、あるいは再建されたため、エラム庭園も、この王朝の指導者の所有物となり、シーラーズの他の建物や庭園と同じように修復されたと見られています。ザンド朝末期には、エラム庭園は、およそ75年の間、大部族ガシュガイ族の首長に保有され、本拠地とされていました。エラム庭園の最初の建物は、ガシュガイ族の最初の長であったジャーニーハーンによって、ガージャール朝の王、ファトフアリーシャーの時代に建設されました。建物の建築は、著名な建築家の一人、ハージ・モハンマド・ハサンという人物によるものです。

 

エラム庭園

 

ガージャール朝のナーセロッディーンシャーの時代、ミールザー・ハサン・ナスィーロルモルクが、エラム庭園を買い取り、それまでの建物の代わりに別の建物を建てました。彼の死後、1893年に、途中だった装飾を完成させたのは、アボルガーセム・ハーン・ナスィーロルモルクでした。エラム庭園は、1963年、シーラーズ大学のものとなり、1966年から71年には、この大学の関係者の管理のもとで修復が施され、そこに広い敷地が加えられました。エラム庭園は、1973年にイラン国家遺産に登録されました。シーラーズ大学は現在、この庭園を、植物研究のための庭園として、一般の人々に公開すると共に、熟考に値する変更を加えています。

 

エラム庭園

 

エラム庭園は、シーラーズの北の高山地帯の裾野にあり、ナフル・アーザム川は、その存続に大きな役割を果たしています。この庭園は、北西部から南東部、河川の北側の旧市街に位置しています。高山の傾斜の緩やかな山すそに庭園が位置するのは、他のイラン式庭園の多くにも見られるもので、その昔、庭園の広さがいかに重要であったかを物語っています。

 
エラム庭園の外観は、ここ数十年で大きく変化しています。この変化は、庭園の所有者や使用方法によるものです。現在、エラム庭園の中で真っ先に目に入るのは、中心となる長い通路で、シーラーズの建築を示す特徴的な装飾や建築を伴ったあずまやが見られます。庭園の現在の敷地面積は、11万平方メートルです。庭園は、非常に大きな長方形をしており、西から東にかけて傾斜になっており、建物は西の高くなっている場所に集まっています。地面の傾斜が急であることから、庭園のメインの通りや別の通りにも階段があり、この地面の起伏が、庭園の美しさを倍増させています。

 

エラム庭園

 

エラム庭園のメインの建物は3階建てで、建築、模様、彫刻、タイル細工、漆喰細工の点で、ガージャール朝時代の芸術の傑作とされています。地面と同じ高さにある地下は、中央に大きな広間があります。エラム庭園の空間は、木の植え方や通りの配置の仕方、デザインの点で、シーラーズのみならず、イランの全ての地域にある庭園の中でも類のないものです。芸術家の中には、「庭園作りの点から、エラム庭園は、サーサーン朝時代の庭園を思い起こさせるものだ」と考える人たちがいます。庭園のメインの建物の正面には、大きな池があり、その水面には、建物が映し出されています。この池の面積は335平方メートルで、池の底は、大きな17枚の一枚岩で覆われています。また、大きな川から流れる澄んだ水は、池の中を巡った後、周囲を流れる側溝に注ぎ、その後、メインの通りを横切る幅広い溝から、庭園の他の通りや花壇の周辺に流れ込んでいます。

 

エラム庭園

 

エラム庭園のメインの通りは、庭園の中央、大きな池や建物の前から始まり、庭園の先まで続きます。この通りの両側には、背の低いつげの木が生えて柵のようになっており、その真ん中には幅広い溝が流れています。この大きな溝は、庭園の中で、数多くの小さな溝に分かれています。また、この通りの両側に糸杉などの樹木が生えています。庭園の中央にある別の広い通りがメインの通りをさえぎっており、このようなデザインは、チャハールバーグを思い起こさせるものです。この2つの通りに平行して、庭園の全ての方角に別の通りが建設されています。

 

エラム庭園

 

シーラーズのエラム庭園には、美しい糸杉の木が生えており、樹齢が高く、庭園の象徴となっています。この庭園で最も高い糸杉の木は、35メートルで、シーラーズにある糸杉の中でも、最も高いものとなっています。概して、エラム庭園に生育する植物は、果実をつけるものとつけないものの2つに分けられます。エラム庭園は、植物学の研究に利用されており、多くの種類の植物が、いたるところに植えられています。

 

 


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