コーラン第20章アル・アンビヤー章預言者(2)
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聖典コーラン
今回も引き続き、コーラン第21章アル・アンビヤー章預言者を見ていくことにいたしましょう。
慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において
前回の番組でもお話したように、この章はコーランの21番目の章で、全部で112節あります。この章は預言者がメッカからメディナに移住する前に、メッカで下された啓示です。この章では、神の16人の預言者の名前が、彼らの状態、あるいは、姿形を説明したりする形で述べられています。
アル・アンビヤー章の第30節から33節では、創造世界における神のしるし、神による世界の管理について述べられています。
「不信心者たちは、天と地が閉ざされていたのを我々が開き、水から生き物を作ったのを見なかったのか。[それでも彼らは]信仰を寄せないのか?」
(30節)
研究者によれば、世界は最初、ガスの塊でしたが、それが爆発し、次第に分かれて地球や太陽系などの惑星が生まれました。伝承にも、最初は空から雨が降ることも、大地から植物が生えることもなく、どちらも閉ざされたような状態だったとあります。しかし、神はその2つを開きました。そして天からは雨が降り、大地からは植物が生えたのです。
アル・アンビヤー章の第31節には次のようにあります。
「また、大地にしっかりとした山々を据え、人間たちが揺らぐことのないようにした。そして山々の間に広々とした道を現し、通れるようにした」
この節は、神の偉大な恩恵の一つに触れ、こう語っています。「我々は大地にしっかりとした山々を据え、人間が揺らぐことのないようにした」 山々は盾のように大地に根ざしており、それが、内部のガスの圧力によって生じる地面の激しい揺れを防いでくれます。もし山がなかったら、大地は常に強風に晒され、休まることはなかったでしょう。乾いた砂漠や荒野を見れば分かります。このように、山は大地の安定の源になっています。この節はそれから、別の神の偉大な恩恵に触れ、次のように語っています。「我々はその大きな山の間に、谷や道を作り、彼らがそこを通って目的地に到達できるようにした」 もしこれらの谷間がなかったら、地上に据えられた大きな山々が、様々な地域を断絶し、それらが結びつくことはなかったでしょう。これは、全ての現象が定められた計画通りに創造されていることを物語っています。
アル・アンビヤー章の第32節には次のようにあります。
「また天を保護する覆いとした。だが彼らは、それらのしるしに背を向けた」
ここで言う天とは、地球の周りを覆っている成層圏のことであり、その厚さは数百キロに及びます。この層は、空気とガスでできていてやわらかいように見えますが、実際は非常に強固であり、地球に入り込もうとするあらゆる物体を消滅させます。この成層圏は、頑丈な盾のように、隕石の衝突から地球を守っているのです。一方で、有害な太陽光も、大気圏中で反射、散乱、吸収されて減衰します。このように成層圏は、太陽の有害な光線からも、また地球を脅かすその他の有害な光からも地球を守っています。さらに、地球の表面の温度を適切な状態で保っています。また、水や蒸気を海から陸へと移送させます。そうでなければ、大陸は乾いた砂漠となり、生物が生きていくことはできなかったでしょう。
これらの節は、天と地、山や成層圏、その他の自然現象が皆、神の英知と力のしるしであること、それらは皆、目的に沿って創造されたことを示しています。実際、自然を注意深く目にすることは、信仰と知識を得るための鍵です。人間は毎日、この驚異的な現象を目にし、それに触れていますが、残念ながら、それを管理する神の存在について忘れてしまいがちです。
アル・アンビヤー章の第48節から先は、教訓と共に、神の預言者たちの人生が述べられています。これらの節は、ムーサー、イブラヒーム、ヌーフ、ルート、アイユーブといった預言者たちの特徴を述べています。神は、これらの預言者に恩恵を与えたのは、彼らが、多くの苦難や災難に対して忍耐力を示し、数々の厳しい試練を堂々と潜り抜け、忍耐の模範であったからだとしています。
アル・アンビヤー章の第86節で、「神は彼らを自らの慈悲の中に入れた。なぜなら彼らは善良な人間だったからだ」とあります。興味深いのは、この節が、「我々は自らの慈悲を彼らに与えた」と語るのではなく、「我々は彼らを慈悲の中に入れた」と語っていることです。これにより、それまで困難の中にどっぷりと浸かっていたように、彼らの肉体と魂の全てが神の慈悲の中に浸りきったかのようです。
ダーヴードも預言者の一人で、タールートの後に力を得ました。彼は賢明なやり方で、社会の政治、経済問題を管理していました。彼にはソレイマーンという名の息子がいました。ソレイマーンも豊かな知識を持っていました。アル・アンビヤー章の第78節は、ダーヴードとソレイマーンの判断に関する興味深い物語が述べられています。
「また、ダーヴードとソレイマーンが、夜のうちに羊によって[作物を]荒らされた畑について判断を下したとき、我々は彼らの判断を見守っていた」
2人の人物が、口論になってダーヴードのところにやって来ました。彼らの一人は、もう一人の男の羊の群れが、夜の間に自分のブドウ畑を荒らし、その葉っぱや実を食べてしまったと主張しました。ダーヴードは、そのような大きな損害に対して、全ての羊をぶどう園の持ち主に与えるべきだと言いました。しかし、まだ幼かったソレイマーンは父親に言いました。「偉大なる神の預言者よ。その判断を変更してください」 ダーヴードは一体何のためだと言いました。するとソレイマーンは、この損害を償うための別の方法を提案しました。彼は言いました。「羊は畑の利益を損なってしまったのであって、畑自体を損なったわけではありません。だから、羊の持ち主は、それらを一変に渡すのではなく、乳や毛といった羊の利益を一年後まで、ブドウ園の持ち主に与えるようにしたらどうでしょう?」 このようにして、ぶどう園の持ち主の損害は償われ、羊の持ち主も、一度に全ての財産を失わなくてすみました。

次の79節は、このソレイマーンの判断を称賛しています。
「それから我々は、それ[、真実の判決]をソレイマーンに理解させた」
このように、神の承認により、ソレイマーンは、この問題を解決するための興味深い提案を示したのでした。
この節は続けて、2人の預言者の使命を強調し、次のように語っています。「我々は英知と知識をダーヴードとソレイマーンに授けた」
それから、神がダーヴードに与えた恩恵に触れています。「山や鳥たちも、ダーヴードの祈祷にあわせて神を称賛した」 とはいえ、これらがダーヴードの祈祷にあわせたのは、この預言者が本物であることを証明するための神の奇跡でした。ダーヴードは祈祷を行うような人物ではなく、好戦的な人物であり、戦士たちを敵の攻撃から守るために鎧を作っていました。ダーヴードは鉄を溶かし、最初に鉄の輪を作ってからそれらを互いに結びつけて鎧を作りました。これについては、アル・アンビヤー章の第80節に次のようにあります。
「我々はダーヴードに鎧を作る方法を教えた。それはあなた方を戦争の中での危害から守るためのものである。それであなた方は感謝をするのか?」
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