政府、外国人技能実習制度の見直しにようやく着手 人権侵害に国内外から批判
古川法相は、「外国人技能実習制度」について、年内にも有識者会議を設置し、見直しに向けた議論を始める方針を明らかにしました。
外国人技能実習制度は1993年から導入された制度で、主に発展途上国の外国人を「技能実習」という在留資格で受け入れ、職業上の技能習得を支援することを目的としています。法務省によると、昨年末時点で27万人以上がこの資格で滞在しています。
制度による外国人実習生の保護・支援を目的とする外国人技能実習機構によれば、技能実習制度の理念は、日本の技能・技術または知識の開発途上地域等への移転を図るもので、日本国内の労働力の需給の調整の手段として行われてはならないと定められています。
しかし、実際には、実習生が受け入れ先で暴力をふるわれる、パスポートや給与を取り上げられる、最低賃金以下の給与で長時間労働をさせられるなど、深刻な人権侵害が起きていることがかねてから報告されてきました。また、こうした現状により、実習生の死亡や失踪も相次いでおり、法務省によれば、昨年だけでおよそ7000人が失踪したということです。
読売新聞によりますと、古川法相は29日の記者会見で、技能実習制度について、「国際貢献という目的と人手不足を補う労働力としての実態が乖離しているとの指摘がある」とし、年内にも政府として有識者会議を設置し、見直しに向けた議論を開始することを明らかにしました。
古川法相は今年1月から、技能実習制度に関する勉強会を省内に設置し、大学教授や弁護士などからも意見を聞き、問題点を整理していました。
技能実習制度に関しては、国外でも批判の対象となっています。2020年8月には国連人種差別撤廃委員会が、「外国人技能実習生が劣悪な労働条件のもと、搾取や虐待の危険にさらされているという他からの情報があるにもかかわらず、政府からはその実施状況や影響について何も情報がない」と指摘し、日本政府に改善を求めました。
また、米国務省が年次で発表している世界の人身売買に関する報告書でも、技能実習制度は毎年言及されています。7月19日に公表された今年の報告書でも、技能実習制度により「強制労働」が行われていると指摘し、「制度による実際の強制労働件数は、日本政府が把握している数よりもはるかに多い」「被害防止に向けた政府の意志が弱い」などとされています。