ハマス政治局長・故シンワル氏が書いた人気小説とは?
(last modified 2024-10-20T08:58:16+00:00 )
10月 20, 2024 17:58 Asia/Tokyo
  • 故シンワル・ハマス政治局長の著作小説『棘とカーネーション』
    故シンワル・ハマス政治局長の著作小説『棘とカーネーション』

16日に殉教したハマスのシンワル政治局長は、小説『棘とカーネーション(The Thorn and the Carnation)』を自ら執筆したほか、ヘブライ語や英語の書籍5冊も翻訳しており、政治犯として囚われたことのある人物としては、世界で最も多作な文学者です。

【ParsToday西アジア】シンワル氏は現場の指揮官として、優れた文化・文学的ビジョンを持っていました。彼は翻訳者であるとともに、数冊の書籍も執筆しています。イランの評論家アリー・サリーミー氏はこの点について、イランのオンライン新聞「ハムシャフリー」において次のように綴っています。

シンワル氏は軍人・政界の要人としての顔の一方で、思想、文化、文学界の人物でもあり、数冊の編纂や翻訳書も有する芸術家としての顔も有している。彼はこれらの文学作品を、シオニスト政権イスラエルの刑務所に長らく収監されていた間に執筆、出版している。

シンワル氏は10代の頃からパレスチナ解放を求める民衆闘争に参加しており、1988年にはイスラエル軍の作戦中に逮捕され、4回の終身禁固刑を言い渡されている。最終的に彼は2011年までイスラエルの刑務所に収監され、人生の約22年間を劣悪な環境で過ごしましたが、その間も手をこまねくことなく、刑務所内でヘブライ語を学び、文学作品を書き始めた。

中でも小説『棘とカーネーション(The Thorn and the Carnation)』は、彼が獄中で執筆した文学の結晶といえる。この作品は、アマゾンのベストセラーリストに掲載された後、イスラエルの圧力により削除された小説でもある。

2024年4月18日、UKLFI(イスラエルのための英国弁護士)はアマゾンに対し、シンワル氏のこの著作について英国の反テロ法に違反しているとしてアマゾンを告発し、翌日アマゾンは販売リストから削除した。

もっとも、シンワル氏はこの小説に加えて、ヘブライ語や英語の書籍5冊も翻訳しており、政治犯として囚われたことのある人物としては、世界で最も多作な文学者である。サンワル氏の周囲の多くは、彼を英雄伝に出てくる壮大な武闘家かつ戦士の姿で現れた文化人だとみなしている。

 

『棘とカーネーション』

この小説は2004年、イスラエル占領地ベエル・シェバにある刑務所の1つにおいて執筆された。この小説のタイトルは、ガザでの生活を象徴している。ガザでの生活は、棘を表す痛みと困難で構成されており、著者はそれを歓喜を表すカーネーションと組み合わせている。

この作品の一見平凡そうな題名は、近年のアラビア語の自伝文学で非常によく見られる二重タイトルで、人生の相反する経験を見事に表現している。この小説には、愛と暴力、希望と絶望、優しさと強さが描かれている。

この小説はアフマドという名の男性の視点から語られる学びの旅と精神的成長の物語で、パレスチナ・ガザとイスラエル占領地ヘブロンの二つの家族の物語、及び二つの抵抗運動が絡み合っている。つまり、著者シンワル氏の生涯そのものに関わるストーリーとなっている。

著者は序文において次のように綴っている。「この作品を小説たらしめている要素の他は、私が直接経験し、または聞いたりしたのと同じくらい現実的であり、その語り手は我らの親愛なる地パレスチナにおいて生き、聞いてきた」

この小説の中の出来事は、1967年のいわゆる第3次中東戦争でアラブ側が敗北する直前、つまりはガザ地区がエジプトの管轄下にあった頃から始まる。

小説の語り手・アフマドはエジプト兵士に対して友好的な見方をしており、アラブ軍がイスラエルを粉砕し、難民が故郷に帰れるようにパレスチナを解放すると信じている。しかし、それが失敗し、ショックに打ちひしがれる。アフマドはイスラエル占領に対する抵抗運動の開始やイスラエル軍への爆弾投擲を語り、アル・シャティ難民キャンプ(小説の舞台)の狭い通りや路地に進入するために、どれほどひどい目に遭ったのかを語っている。

アフマドの父親と叔父はイスラエル軍との戦闘中に殺され、その後、彼は母親、兄弟、妹、祖父、そしていとこたちと一緒に暮らしている。しかし、母親は再婚後に彼らをおいて立ち去ってしまい、家族の生活の全責任はアフマドにかかっている。

アフマドは兄マフムードを通じてPLO・パレスチナ解放機構に参加するが、エジプトから帰国後に逮捕される。彼の父方の叔父のいとこであるイブラヒムは、2004年にイスラエルによって暗殺されたハマスの創設者の一人であるシェイフ・アフマド・ヤシン師と親交があった。

この小説は、英雄伝的な抵抗の舞台を創出しただけでなく、パレスチナ人の社会問題の一部も表現している。たとえば、一部のパレスチナ難民がイスラエルで働くという苦渋の選択について、これは一部の人々の間では家族の生活条件を改善する機会と見なされる一方で、裏切りだと考える人もいる。

一方、アフマドと他の登場人物との会話では、一部の信条的問題や、他の抵抗組織に対する一部のパレスチナ人や彼らの見解の間の言説的相違が描写されている。多くの評論家は、シンワル氏もこの著作の中で自分自身について語っていると考えている。

イスラエル・スパイの特定を担っていたシンワル氏のあだ名は「アブ・イブラヒム」だ。これは、小説の中で重要な役割を担う人物の名前である。シンワル氏はこの著作において、パレスチナ人の生活の質素さと貧困を詳しく取り上げている。

 

 


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