視点
OPECプラスによる200万バレルの減産、米の思惑に反する足がかり
OPEC・石油輸出国機構およびロシアなどの非加盟国で構成されるOPECプラスが、2020年の新型コロナウイルスの世界的大流行以来最大規模となる、1日あたり200万バレルの減産を発表しました。
OPECプラスによる今回の減産決定は、来たる11月より実施される見通しです。
ヨーロッパ産主要銘柄の北海ブレントは1%以上値上がりして1バレル93ドル近くに達したほか、米国産軽油は1.5%上昇して87.75ドルに達しました。
この合意は、米国およびその他の国が増産を迫っていた中で成立したもので、現在供給が逼迫している市場での石油の供給を制限しています。同時に、今回の減産により原油価格が上昇、回復する可能性もあります。原油価格は、世界経済の減速、金利の上昇、ドル高に対する懸念から、3 か月前の1バレル120 ドルから約90ドルに下落しました。
OPECプラスの今回の決定は、国内でのガソリンやその他の石油製品の価格上昇を懸念するアメリカの政府高官の間で、大きな不満を引き起こしています。米国は、市場の原則がOPECプラスの行動を支持しないという口実の下で、この一大石油組織に石油減産を踏みとどまるよう迫っていました。
バイデン米大統領は5日水曜、OPECプラスの大幅な減産決定について懸念を表明し、これを近視眼的であると述べました。また、「詳細を確認する必要がある。これは不必要な措置だ」としています。さらに、ブリンケン米国務長官もOPECの行動に反応し、「米国は原油価格を低く抑えることに力を尽くしている」と語りました。
OPECプラスの動きを受けて、アメリカのメディアも、石油価格の上昇により、同国でガソリン価格が上昇する可能性があると報じました。同時に、バイデン氏は米エネルギー省に対し、来月米国の戦略的石油備蓄から1000万バレルを放出し、石油増産に向けて可能な方策を検討するよう命じています。さらに、消費者の負担を軽くすべく、国内の石油会社に燃料価格の引き下げを求めました。
OPECプラスは、価格のバランスをとるために石油の生産と供給の削減を主張していますが、米国は価格を下げるために大幅な増産を強調しています。したがって、バイデン政権は、世界市場により多くの石油を供給し、その結果として原油価格の引き下げによる、米国の石油製品の値下がりを主張しています。ガソリン価格の上昇は、来たる11月の米中間選挙を見据えている民主党員にとって悲惨な政治的結果をもたらす可能性があります。ガソリン価格の上昇に伴い、前例のないインフレとエネルギー価格上昇に直面しているアメリカの消費者が、選挙で民主党候補に投票する可能性は確実に低くなります。
したがって、バイデン政権は現在、国際市場で可能な限り多くの石油の生産および供給に力を注いでおり、この点から、自らが制裁を行使している相手のベネズエラに対して一連の提案する事態となっています。米紙ウォールストリートジャーナルは、エネルギー価格が上昇すると同時に、OPECプラスが本格的な冬の到来を目前に大幅な産油量削減決定を下したことを受けて、情報筋の話として、「米国は、対ベネズエラ石油制裁の一部の停止により、米石油企業シェブロンがベネズエラで原油生産を再開できるよう取り計らう予定だ」と報じています。
石油の生産と世界市場での供給の増量というバイデン政権の要求は、特にロシアからの反対に遭遇しています。実際、様々な分野で進行しているロシアと米国の間の対立は、今や石油部門という新たな分野で結晶化しており、アメリカはロシアの利益のために動いているとしてOPECプラスを非難しています。ジャンピエール米ホワイトハウス報道官は4日水曜、OPECプラスの今回の減産決定を批判し、これをロシアに足並みをそろえた行動だとしています。
サウジアラビアなど、米のパートナーや同盟国の一部もOPECプラスに参加しているにもかかわらず、サウジは米の要求を呑もうとはしないようです。このように、世界の石油動向はアメリカの思惑に沿うものではなく、この問題自体が、アメリカの世界的な影響力の衰退のもう一つの兆候と考えられています。