ペルシャ語ことわざ散歩(173)「猫は新婚部屋の入り口で殺さなければならない」
皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語の生きたことわざや慣用句、言い回しなどを毎回1つずつご紹介してまいります。
今回ご紹介することわざは、「猫は新婚部屋の入り口で殺さなければならない」です。
ペルシャ語での読み方は、Gorbe raa dam-e hejle baayad koshtとなります。
このことわざは、特に誰か他人と何か新しい物事を始める際に、自分の確固たる方針や考え、厳しくとることなどを示し、今後途中で相手や関係者などが自分に逆らったり、脱落したりしないよう最初から宣言しておくこと、また後になって誤解や問題、トラブル、不当な期待や過剰な要求が生じないよう、混乱や問題の元凶、紛争は最初の段階で取り除いておくことを意味しています。
このことわざはかつては、特に結婚する際に男性が女性に対し、絶対に逆らわないことや特に何か大きな買い物などの際に不当な要求をしないよう、最初に厳しい態度を示すことなどに使われていたそうです。
しかし、最近では逆に女性側が最期のときまで誠実に自分に尽くすよう男性側に約束を求める場合も指しているということです。
このことわざは、ある物語に由来しているとされています。
ある若い男がある女性と婚約しました。彼は相手の女性を時折訪問していましたが、訪問する前にあらかじめ肉や食料を彼女に届けていました。
女性は、それらの肉を売って嫁入り道具を買い揃えていました。
それから、しばらく経ったある日の夜、夕食の際にこの女性は猫に肉を食べられたと言い訳をし、婚約者の男性にサトウキビとチーズを出しました。
さて、結婚式の当日に花嫁が花婿の自宅にやって来て、大勢のお客さんを呼んでの宴会が催されました。そこに、1匹の猫がひょっこり現れます。
花婿はそこで、今後は猫に肉を取られないようにするため、即座にその猫を捕まえ、地面にたたきつけて殺しました。
当然、居合わせた来客たちは花婿のこの行動にひどく驚きました。しかし、花嫁は夫のこの行動により何を伝えたかったが分かっていました。それは、食事には肉を出してほしいということだったのです。
そこで彼女は、皆の前で誓いを立て「猫は新婚部屋の入り口で殺された」と告げたということです。
現代でも、特に誰かと何か物事を始めるとき、約束事や契約を交わす時など、どんなに相手や自分にとって厳しく辛いことだったとしても、最初から大切なことを伝えておく必要があると思われます。
まさに、「後だしじゃんけん」ではなく、あえて「猫は新婚部屋の入り口で殺す」ことが大切なのではないでしょうか。それではまた。