家庭内における世代間の乖離
今回は、家族同士の世代間の乖離についてお話することにいたしましょう。
家庭における重要な問題の1つは、ジェネレーションギャップ、つまり世代の差です。現代の若者は、過去の世代の人々が持っていなかった新たな文明の利器に囲まれ、新しい知識を身につけています。さらに、過去の時代のように伝統的な慣習や家庭は、もはや社会的な生活に触れる唯一の手段ではなくなっており、周りの環境からの情報やバーチャル空間によるコミュニケーションも、社会性を身につける条件の一部を占めています。こうした手段は、家庭や伝統の影響をも薄れさせるほど強い力を見せ付けています。
一方、現代の世界は消費志向や広告宣伝と結びついています。経済的な利益を追求する思想は、消費を奨励する宣伝や流行、過剰な欲望や快楽主義など様々な手段を通して、社会関係に影響を与え、過去には例のない新たな欲望を生み出しているのです。
新しい世代も、自らの年齢や完璧を求める考え方にまかせて、こうした新たな欲求にかられ、自らの欲求が満たされない場合、彼らの不満は次第に増大します。こうして、若い世代とその親の世代の間には、行動面の矛盾が生じてくることになります。
時折、両親は、自分たちの若いころの時代と子供たちの世界との違いに気づかず、子供を将来の生活に役立つようには教育しません。親たちの教育の基準は、過去の時代のものです。彼らは、自分たちの模範により、子供を育てようとしますが、この場合、子供の年齢にそった要求が無視されてしまうことになります。
しかし、過去の世代の経験や指導が不要だということではありません。新しい世代が、親から行動や考え方についてサポートされない場合、彼らは現実を前に、何の経験もないままひとりで放任され、これにより道を踏み外す可能性があります。
大人は、若者たちが社会を形成し、社会の発展や健全が彼らの活動や成功にかかっている、という現実を受け入れる必要があります。生活の経験は、若者たちに伝えられ、活用されて、若者に何かが新しく加わって初めて、価値あるものとなるのです。
こうした現象に論理的に対処するために、親は柔軟性がある対話、折り合いの文化を学び、それにより物事への論理的な理解を示す必要があります。世代の差は、危機を生み出す脅威的な要素です。世代の差により、2つの世代の価値観や慣習は完全に異なったものとなり、最終的には互いに交流が途切れてしまうことになります。
家庭は、時代や社会の状況を把握し、人としての道に沿った基本的な価値観や原則を維持した上で、子供に活動の許可を与える必要があります。倫理的な教えが注目されない場合、時代の経過とともに子供に必要な教育や見識が伝えられず、彼らが家族や社会との交流の際に問題を抱え、文化的な断絶に遭遇する可能性があります。
子供を持つ親はまた、常に最新技術や新しい情報に対する見識を高めることで、子供を助け、また距離を置いて見守る役割を果たす必要があります。現在の世代のニーズや、IT時代の変化を把握することは、親が子供の置かれた状況やニーズを知る上での助けとなります。
家庭が疎遠になるのに大きな影響を及ぼす要素の1つは、インターネットなどの過剰な使用です。各種のメディアは次第に、対面によるコミュニケーションに代わっているのです。
理想的な家庭とは、親と子供が、愛情あふれる心のこもった相互の適切なコミュニケーションをとっている家庭を意味します。大学などの教育機関やマスメディアも、思考の分野における新しい発想と、人類の進歩を認識した上で、世代の差を緩和する調整役として、重要な役割を果たすことが可能なのです。