12月 07, 2016 19:40 Asia/Tokyo
  • 皮革産業
    皮革産業

今回は、世界でも古い産業のひとつであるイランの皮革産業についてお話ししましょう

皮革産業は世界の古い産業のひとつです。歴史的な資料によれば、原始時代の人類は、自分の体を自然の要素から守るため、さまざまな動物の皮を利用していました。時の経過とともに、人々は皮を加工する方法を学んでいきました。

イランをはじめ、古い文明を有する国々で見つかった彫像やレリーフ、絵画などは、皮や皮革製品が、人々の生活において重要な役割を果たしていたことを示しています。3000年の歴史を誇るイランの皮革産業は、イラン人の職人たちが、動物の皮から、靴や手綱、馬具などを作っていたことを物語っています。

イランの皮革産業

 

17世紀から18世紀の博物学者、エンゲルベルト・ケンペルやサファヴィー朝時代にイランを旅したフランスのジャン・シャルダンなど、一部の旅行家は、その旅行記の中で、イランの皮革市場の繁栄に触れています。シャルダンは、イラン人は皮革産業において他の民族よりも優れていたとしています。彼は旅行記の中で、1665年にイランからインドや中近東に輸出されていたイランの皮製品について詳しく語っています。

サファヴィー朝時代、イラン北西部のタブリーズでは、鮫皮(さめがわ)が生産されていました。鮫皮はブーツや靴を作るのに利用され、主にサファヴィー朝の政治家や富裕者に好まれていました。また、皮革は、本の装丁をはじめとするイランの伝統芸術でも利用されています。

1700年前のミイラ「ソルトマン」のブーツにもイランの皮革産業の技術が利用

 

イランの皮革産業の歴史の中で、タブリーズ、シーラーズ、ハメダーンといった一部の都市がその生産の中心地として知られてきました。18世紀末から20世紀にかけてのガージャール朝時代には、イランの文明的、歴史的な中心地として知られていたハメダーンが、皮革製品の生産の中心地でした。このハメダーンの革製品は羊の皮から作られていました。ガージャール朝時代、イスファハーンやタブリーズ、ハメダーンといったイランの多くの都市から、革製品がロシア、オスマン帝国、インドに輸出されていました。

 

革製品は、3つのグループに分けられます。一つ目のグループは羊やヤギなどの動物の皮から作られるものです。この種の革製品は非常に薄くて柔らかいため、手袋や衣服、靴や服の裏地などに使用されています。

 

二つ目のグループは、ワニなどの動物の皮から作られるもので、希少価値が高いため、装飾品などに用いられます。そして三つめのグループは、牛やラクダなどの動物の皮から作られるものです。この種の革製品は、耐久性が高いため、靴やカバン、財布、機械製品の紐などに利用されます。さまざまな動物の皮の中でも、牛の皮は、水牛の皮よりも柔らかく、羊の皮よりも厚いため、他の動物の皮よりも多く用いられています。

 

皮革産業の歴史は、他の紡績・繊維産業よりも古いものの、その技術や手法は、200年ほど前まで、ほとんど変化していませんでした。この産業の職人たちは、さまざまな過程を経て、化学物質などの助けを借りながら、動物の皮から革製品を作っていました。

動物の皮を加工するには、まず、革を自然な状態に戻すため、3日から6日、水につけて塩分をとばします。それを洗い、毛と肉の部分をはがすため、3日から10日、特別な液体の中につけておきます。この状態で皮が膨張し、毛が簡単にはがれます。さらに、肉などの余分な部分もはがします。

 

そのあと、皮を腐敗させる余分なたんぱく質を取り除き、皮が寒さや暑さなどに耐えられるようにするため、硫酸塩などの物質を利用します。そのあと、皮の状態が変わらないように保ち、腐敗を防ぐために塩を振ります。

 

この状態の皮を特別な水槽の中に置き、そこに特別な物質をふりかけ、2日から10日間つけておきます。その後、それを乾燥させます。こうしてできた皮を塩水に2日間つけておきます。そのあと、再び太陽の下で乾かします。この間、皮が半分ほど乾いた状態で、特別な石などを使い、塩の結晶を取り、皮が乾いてしまうのを防ぎます。それから再び、日光のもとで完全に乾かします。さらに動物の油を使って皮を柔らかくし、そのあとで洗い流します。革に色を付けるには、昔は植物を混ぜたものを使い、また、オレンジ色の革製品が作られていました。

 

現在は、さまざまな色が皮革産業に入っていますが、現在も、オレンジ色がその地位を失っていません。色を乾燥させた後、表面に光沢をつけるため、ヒスイが使われています。

良質な皮とは、簡単に燃えず、燃やした際には毛がこげるにおいがし、濡れても悪臭がしないものです。また、体のにおいを吸収せず、特別な保存方法を必要とせず、何年も使えるもののことを言います。

 

伝統的な方法では、皮革製品の生産にはおよそ3か月がかかります。現在は機械が使われているため、その速度も質も大幅に向上しました。

 

イランでは20世紀初め、タブリーズやハメダーンに初めて皮革製品の生産工場が造られ、伝統的な方法から脱却しました。時の経過とともに、工場の数が増えていきました。現在では、テヘラン、タブリーズ、マシュハド、ハメダーンなど、各地で工場が稼働しており、その土地の名前をつけた製品が、国内外の市場に出荷されています。

イランでは、年間200万枚、およそ5000万平方フィート分の牛革が生産されており、そのすべてから衣服や靴、カバン、敷物などに加工されています。またイランは、羊やヤギの革製品の生産において、世界の主要な3か国のひとつとなっています。