4月 08, 2018 16:53 Asia/Tokyo
  • カオジロオタテガモ
    カオジロオタテガモ

今回は、イランに生息するもう1つの珍しい野鳥、カオジロオタテガモをご紹介することにいたしましょう。

イラン自然保護機構の統計によりますと、イランには525種類の鳥類の存在が確認されており、これは世界の鳥類全体のおよそ3分の1を占めています。もっとも、イランで見られる野鳥の多くは渡り鳥です。調査の結果から、イランに飛来する渡り鳥の多くは、西ヨーロッパやシベリア西部からやって来て、イランで秋と冬を過ごします。

もっとも、中には1年中を通してイランで見られる野鳥もいます。そのうちの1種がカオジロオタテガモで、IUCN・国際自然保護連合が定める、絶滅危惧種の生物リストに掲載されています。

イランで見られる野鳥の多くは渡り鳥です。

 

カオジロオタテガモは水鳥の一種で、大きな青いくちばし、ぴんと立った黒い尾羽などから、他の種類のカモと比べて容易に識別できます。この水鳥の体の長さはおよそ46センチで、外見上オスとメスには違いがあります。

カオジロオタテガモ

 

カオジロオタテガモのオスの体は主に茶色ですが、背中から腰の部分は灰色に近くなっています。また、腰と臀部には、非常に細かい灰色と黄土色の斑点があり、これは近くから見てやっと分かるほどです。頭部と腹部は白く、頭頂部に黒い線があります。黒い尾羽はたいてい垂直に立っており、繁殖期にはこの尾羽を扇のように広げたまま維持し、求愛行動を行います。

カオジロオタテガモ

 

カオジロオタテガモのメスは、体が灰色に近い茶色で、背中から腰にかけての広い範囲に黄土色の斑点が沢山見られます。尾羽はこげ茶色で、普通はこれを水面に広げています。あごと喉の部分は白く、瞳の下に白い線があります。瞳の色は黒く、足は灰色です。なお、オスのくちばしが青いのに対して、メスのくちばしは茶色です。

カオジロオタテガモ

 

カオジロオタテガモは普通、特に汽水域を初めとする沼地、淡水湖や塩水湖、海岸地域、アシの映えている湿地に生息しています。また、甲殻類や軟体動物、おたまじゃくしのほか、小型の水生生物をエサとするため、水際に巣を作ることが多くなっています。さらに、水面近くを飛ぶことが多いため、メスは大抵尾羽を下げて水面上に広げたまま泳いでいます。

 

カオジロオタテガモの生息地域は、世界でもそれほど多くなく、アフリカ北西部、中東、中央アジア、そしてヨーロッパの南部と南西部の一部の地域に生息しているのみです。即ち、カオジロオタテガモの生息地域はロシア、カザフスタン、ウズベキスタン、モンゴル、アルメニア、アフガニスタン、トルコ、ハンガリー、スペイン南部、アルジェリア、チュニジアの各国の湿地や湖、芦原のみとされています。

カオジロオタテガモの生息地域

 

カオジロオタテガモの最も重要な繁殖地には、カザフスタン北部のステップ草原や湖、トルコ南部のブルドゥル湖、そしてイランの一部とされています。

 

イランにおけるカオジロオタテガモの生息地と繁殖地は、南部ファールス州、南東部スィースターン・バルーチェスターン州、北東部のミヤンカーレ湿原、北西部のグリギョル湖とオルミーエ湖、さらに西部マハーバード行政区にあるカーニーブラーザーン湿原となっています。

カオジロオタテガモ

 

最近、マハーバード行政区自然環境保護局の局長は、この行政区のカーニーブラーザーン湿原の野生動物保護区に、100羽以上のカオジロオタテガモが見られるとし、この野鳥がここ数年にわたり、カーニーブラーザーン湿原で目撃されているとしています。この野生動物保護区は、イラン発の野鳥保護区であり、地域で最も重要なエコツーリズムの拠点とされています。ここには、年間を通して各地から、特に野鳥に興味のある人々を初めとする自然愛好家が数多くやってきます。

カオジロオタテガモ

 

残念ながら、カオジロオタテガモは乱獲に加えて、世界各地にある生息地の50%以上を失ったことから生存が脅かされています。専門家の見解では、20世紀の初めにはこの野鳥の個体数はおよそ15万羽にも及んでいたのが、現在ではおよそ1万5000羽に減少しているということです。この野鳥の個体数が激減した原因は、生息場所が土地開発により農業用地などに転換されてしまったこととされています。

 

最近、莫大な費用をかけてのカオジロオタテガモの保護計画が成功裏に実施されており、また、イランではこの野鳥の生存を脅かす外来種の野鳥の存在は確認されていません。

カオジロオタテガモ

 

カオジロオタテガモは現在、国際自然保護連合により、絶滅危惧種のレッドリストに乗せられています。さらに、アフリカ-ユーラシア渡り性水鳥保全協定でも、保護措置を必要とする野鳥に指定されており、イラン憲法でもこの野鳥は保護措置の対象とされています。