8月 18, 2018 16:11 Asia/Tokyo

コーラン第28章 アル・ゲサス章 物語り 第33節~第37節

慈悲深く、慈愛あまねき、アッラーの御名において

第33節

「ムーサーは言った。『神よ、私は彼らのうちの一人を殺しました。私は彼らに殺されるのを恐れています。私の兄弟のハールーンは私よりも言葉が達者です。」 (28 :33)

قَالُوا نَحْنُ أُولُو قُوَّةٍ وَأُولُو بَأْسٍ شَدِيدٍ وَالْأَمْرُ إِلَيْكِ فَانْظُرِي مَاذَا تَأْمُرِينَ (33)

 

第34節

「だから私の援助者として彼を私とともに送り、私の言うことが真実であると認めさせるようにしてください。なぜなら私は否定されるのを恐れるからです』」 (28 : 34 )

قَالَتْ إِنَّ الْمُلُوكَ إِذَا دَخَلُوا قَرْيَةً أَفْسَدُوهَا وَجَعَلُوا أَعِزَّةَ أَهْلِهَا أَذِلَّةً وَكَذَلِكَ يَفْعَلُونَ (34)

 

前回の番組でお話したように、神はトゥールの山で、預言者ムーサーに、フィルアウンの宮廷に行き、彼とその側近たちを唯一神信仰へといざなうという使命を与えました。この2つの節では次のように語っています。「預言者ムーサーは、この任務の遂行における2つの問題を挙げた」

ひとつは、ムーサーがイスラエルの民の人間を助けてコプト人を殺してしまったため、フィルアウンの役人たちに追われていることでした。そして二つ目の問題は、ムーサー自身は弁舌が巧みなわけではなく、一人ではそのような重大な責務を果たすことが難しいように思われることでした。そこでムーサーは、兄のハールーンを同行させ、フィルアウンの仲間たちに否定された際には、自分を助け、説得力のある言葉で真理を守れるようにしてほしいと神に求めたのです。

 

第33節 ~ 第34節の教え

•             責任を受け入れる際には、自分の弱点や問題を正確に提起し、それらを解消するのに適した提案を示しましょう。

•             雄弁さは、人々をひきつける上で有効な要素であり、宣伝に必要な手段です。

•             重大な責務を遂行する際には、他人の能力や可能性を利用しましょう。そして、適材適所を心がけましょう。すべてのことを一人でやり遂げる必要がありません。

 

 

第35節

「神は言った。『[ムーサーよ、心配することはない。]我々はあなたの兄に[よって、]あなたの腕を強くする。またあなたたちに優れた地位を授けよう。だから我々のしるしによって、あなた方に危害が加えられることはない。あなた方と誰でもあなた方に従う者は成功するであろう』」(28:35)

وَإِنِّي مُرْسِلَةٌ إِلَيْهِمْ بِهَدِيَّةٍ فَنَاظِرَةٌ بِمَ يَرْجِعُ الْمُرْسَلُونَ (35)

 

神は、預言者ムーサーの要求をかなえ、その危険を伴う道に兄を同行させました。こうして、ムーサーの問題は2つとも解決することになります。第一に、誰も、ムーサーを攻撃したり、殺そうとすることができなくなります。そして第二に、ハールーンの存在によって、フィルアウンの会合で、明白な論理をもとに真理を述べ、神の奇跡を示すことで、彼らに勝利できる条件が整いました。

 

ハールーンはムーサーよりも年上で、弁も立ちましたが、ムーサーにも優れた点があり、それゆえに神はムーサーを天啓の宗教をもたらす預言者に選びました。兄のハールーンもまた、預言者でしたが、その役割は補助的なものでした。

 

第35節の教え

•             偽りとの戦いにおいて、真理と偽りの数が同じである必要はありません。時にたった2人であっても、強力で明白な論理によって、大勢の偽りの勢力に勝利することができます。

•             宗教の指導者たちが圧制者によって危害を加えられ、支配されないようにするため、彼らを助けましょう。

•             神の預言者たちでさえ、真理のメッセージを届け、偽りと戦うために、未来への希望と確信を必要としています。神は預言者ムーサーとハールーン、そして彼らの信奉者に勝利を約束し、彼らに希望を与えました。

 

第36節

「ムーサーは、我々の明白なしるしを持ってフィルアウンの仲間たちのところに行った。彼らは言った。『[これは]作り上げた魔術に過ぎない。我々はそのようなことを祖先からも聞いたことはなかった』」 (28:36)

فَلَمَّا جَاءَ سُلَيْمَانَ قَالَ أَتُمِدُّونَنِ بِمَالٍ فَمَا آَتَانِيَ اللَّهُ خَيْرٌ مِمَّا آَتَاكُمْ بَلْ أَنْتُمْ بِهَدِيَّتِكُمْ تَفْرَحُونَ (36)

 

第37節

「ムーサーは[フィルアウンの仲間たちの否定に対し、]言った。『私の主は、彼から導きをもたらした人物と、良い結果が待っている人物のことをよりよく知っている。明らかに、圧制者は救われない』」 (28:37)

ارْجِعْ إِلَيْهِمْ فَلَنَأْتِيَنَّهُمْ بِجُنُودٍ لَا قِبَلَ لَهُمْ بِهَا وَلَنُخْرِجَنَّهُمْ مِنْهَا أَذِلَّةً وَهُمْ صَاغِرُونَ (37)

 

預言者ムーサーとその兄のハールーンは、どうにかしてフィルアウンの宮廷にたどり着き、宮廷の人間たちの前に立ちました。彼らはフィルアウンたちを唯一の神へと誘った後、神の奇跡を示しました。杖は蛇になり、手は脇から出すと、白く輝きを放ちました。しかし、ムーサーとハールーンの論理や言葉を聞き、彼らの奇跡を目にしていながら、フィルアウンの仲間たちが行ったのは、中傷と否定のみでした。フィルアウンの仲間たちは、唯一神の信仰は、先人たちにも例のないものだったため、容認できないと主張しました。彼らは、「奇跡は、ムーサーが自分で作った魔術であり、偽って神のものだと言っている」と言いました。

 

このような否定に対し、預言者ムーサーは言いました。「もし私がこのような言葉や行いを自分で勝手に作り上げ、偽って神のものだと言っていたとしたら、神はあなた方よりもよくご存じである。だから神は何らかの方法で私に恥をかかせ、私が自分は預言者だとして、人々を導く代わりに、彼らを迷わせるのを許していなかっただろう。あなたたちが否定する根源は、私の根拠や論理が不十分なことにあるのではない。それどころか、あなたたちが続けようとしている圧制にある。あなたたちはそうすれば、統治を存続できると考えている。そのために私の言葉を受け入れないあなた方は、現世と来世で救われることはない」

 

第31節 ~第32節の教え

•             宗教を受け入れることにおいては、理性や論理が基準となり、先人たちの言葉ややり方ではありません。

•             中傷と否定は、歴史の中で、預言者や改革者に反対する人々が用いてきた最大の手段です。

•             神の預言者の導きに従えば、幸福、救済、良い結果が待っています。