ペルシャ語ことわざ散歩(55)「オスマーンのシャツに仕立てあげる」
皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語の生きたことわざや慣用句を、毎回1つずつご紹介してまいります。
今回ご紹介するのは、「オスマーンのシャツに仕立てあげる」です。
ペルシャ語での読み方は、Piiraahan-e Osmaan kardan となります。
この慣用句は、7世紀に西アジア地域を支配していたイスラム国家の3代目カリフ・オスマーンに由来します。この人物は、クライシュ族ウマイヤ家の出身で、後にウマイヤ朝を創設したシリア提督ムアーウィヤと親戚関係にありました。ムアーウィヤは、かのシーア派3代目イマーム・ホサインをイラク・カルバラーの地にて残忍に殺めたヤズィードの父親に当たります。
さて、このムアーウィヤは自ら支配者たるカリフの地位に就くことを狙っていました。しかし、西暦656年に当時のカリフ・オスマーンが暗殺された後、後継者に選ばれたのはシーア派初代イマームとなるアリーでした。当然ながらムアーウィヤにとってこれは面白からぬ出来事でした。そこでムアーウィヤは、アリーに対する民衆の反乱を煽るため、自らの同族のオスマーンの血痕のついたシャツをモスクに吊るし、オスマーンを殺したのはアリーであると人々に吹聴します。この出来事から、「何かをオスマーンのシャツに仕立て上げる」という表現が生まれ、根拠のない正義をかざして言いがかりをつける、不当な手段を得て自らの目的を達成しようとする意味を表すようになりました。
今回は少々歴史的な内容となりましたが、このように歴史的な出来事を由来とする慣用表現もよく使われています。ことわざや慣用表現をきっかけに、イスラムの歴史を紐解いていくのも興味深いと思われます。それではまた。
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