ペルシャ語ことわざ散歩(100)「子ヤギよ死ぬな、春が来れば、瓜がキュウリとともに育ってくる」
皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語の生きたことわざや慣用句、言い回しなどを毎回1つずつご紹介してまいります。
今回ご紹介するのは、「子ヤギよ死ぬな、春が来れば、瓜がキュウリとともに育ってくる」です。
ペルシャ語での読み方は、Bozak namiir bahaar miyaad, komboze baa khiyaar miyaadとなります。
この表現は、「中身のない空約束」を意味し、次のような物語に由来しているといわれています。
ある男が子ヤギを飼育し、その子ヤギを毎日牧草地に連れて行っては草を食べさせていました。ある日、その男は病気になり、1ヶ月間寝込んでしまいます。その間に、この男と暮らしていた祖母が、毎日この子ヤギに、それまで保存しておいた飼い葉を食べさせ、世話をしていました。
さて、この男が病気から回復したときには、もう緑豊かな季節は過ぎており、しかもその年は運悪く冬が早く訪れます。保存してあった飼い葉はすでに使い切ってしまい、子ヤギは冬中、毎日お腹をすかせてメエメエと声を上げていました。そこで、男はこの子ヤギに「春になるまで待て、その時は野原に草が生えてきてお腹いっぱい食べられる」と言い聞かせて励まします。これを聞いていた祖母がこの男に対し、「そのような言葉ではヤギは満腹しない。それは“子ヤギよ死ぬな、春が来ればウリがキュウリとともに育ってくる”というようなものだ」と言ったということです。
つまりこの男は子ヤギに飼い葉を与えずに、数ヶ月先の当てにならない約束をしたことになります。実際に、牧草が生い茂る春から夏にかけては、キュウリやウリのシーズンとされています。
ちなみに、このことわざに出てくるウリとは、完熟する一歩手前のウリを指しており、しかも未熟なウリを意味するペルシャ語kombozeには、bozという、ヤギを意味する言葉が含まれています。この表現は、そうしたペルシャ語の面白さを利用したものとも言えそうですね。それではまた。