AfD候補者の不審死が独政治にもたらすもの
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AfD候補者の不審死が独政治にもたらすもの
独ノルトライン=ヴェストファーレン州での地方選挙が間近に迫る中、右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の候補者6人が相次いで死亡し、ドイツ政治の先行きに不穏な空気が漂っています。
【ParsToday国際】ドイツで最も人口が多いノルトライン=ヴェストファーレン州で今月14日に地方選挙が迫る中、右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の候補者6人が相次いでしました。いずれの候補者も、選挙で勝利する見込みが高かったと言われています。
州警察と内務省は、いずれも事件性はないと強調し、プライバシーの観点から詳細は公表しないとしています。しかし、同じ党の候補者が6人も同時期に死亡するという出来事は、同州の選挙に影響を与えています。すでに始まっていた不在者投票では、死亡した候補に投じられた少なくとも133票が無効となり、再投票が行われました。
また、候補者が死亡したことで選挙は弔い合戦となり、同州ではAfDが躍進するとみられています。事件前の7月にフォルサ研究所が行った世論調査では、ノルトライン=ヴェストファーレン州でAfDの支持率が8.9ポイントという前例のない増加を記録し、同党の支持率は14%に達していました。
また、INSAが8月22日の実施した調査でも、AfDの支持率は16%に達し、2023年から7ポイント上昇したことが示されています。一連の現象は、AfDが今年2月の総選挙で約20%の支持を得て、第2党に躍進した勢いを維持しているものです。今後の地方選挙では、州政府にとっての試練であり、ドイツの連立与党の支持基盤を測る指標となるでしょう。
メルツ首相は「安定を取り戻し、ドイツの統一を強化する」というスローガンで政権を握りましたが、現在は厳しい状況に直面しています。ドイツの中道左派と中道右派の連立は、ノルトライン=ヴェストファーレン州の選挙を健全で透明性をもって管理しなければならず、AfD候補者6人の死を利用した弔い合戦となることを警戒しています。
欧州のポピュリスト右派政党はしばしばこのような機会を利用してきたことを示しています。フランスのマリーヌ・ルペン氏は、有権者が無視されていると訴え、イギリスの「リフォームUK」を率いるナイジェル・ファラージ氏も公的機関への不信をあらわにしています。イタリア、スウェーデン、ハンガリーの極右政党も、似たような物語を用いて社会的支持を確立しました。
こうした右派ポピュリスト政党の選挙活動においては、物語の形成と情報の操作がしばしば重要な役割を果たしています。AfDの候補者の突然の死は公式には犯罪または政治的な説明を受けていませんが、政治と世論の場への影響は明らかです。
ドイツのSNSでは、この出来事について多くの憶測が流れています。AfD支持者の一部は、候補者の相次ぐ死を党への「攻撃」と見なしており、事件の調査と情報公開が透明でなければ、この不信感は政治システム全体に波及する可能性があります。 過去のドイツの選挙経験は、選挙過程における小さな変化が最終的な結果に大きな影響を与える可能性があることを示しています。特に、小規模で周縁的な政党がより高い権力層に進出しようとしている地域では、その影響が顕著です。
実際、AfDは2020年にはノルトライン=ヴェストファーレン州でわずか5%の支持率でしたが、現在はこの州がAfDのドイツ西部における長期的なプレゼンスを左右する重要な場にまでなっています。
ノルトライン=ヴェストファーレン州は1800万人以上の人口を抱え、ドイツの経済において重要な役割を果たしています。この州はしばしば、国の政治的な動向を示すリトマス試験紙として機能してきました。もしAfDがこの州で目に見える成果を上げれば、同党の国内政治における影響力は増し、移民政策、安全保障、文化問題に関して政府に圧力をかけることになるでしょう。
このような変化は、国政の構図を変える可能性があり、メルツ首相はキリスト教民主同盟(CDU)の右派に譲歩せざるを得なくなるかもしれません。また、欧州全体における右派の台頭という広範な傾向にも注目する必要があります。フランスでは、ルペン氏率いる「国民連合」が2024年の選挙で相対的な多数を獲得し、国内のアイデンティティや移民問題に焦点を当てた政治的な対話を推進しています。イギリスでも、ナイジェル・ファラージ氏のリフォームUK党が保守党の独占を打破し、政治的な影響力を手にしました。イタリアとハンガリーでは極右政党が現在も権力を握っており、スウェーデンでも移民や安全保障政策に直接的な影響を与えています。AfDのノルトライン=ヴェストファーレン州での躍進は、こうした傾向を強化し、他の国々の同様の政党にも影響を与える可能性があります。