原油価格が下落、供給過剰と貿易摩擦の激化めぐる警告で
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中国外務省の林剣報道官
原油価格がアジア市場で約0.5%下落し、3週連続の下落を記録しました。この現象は、IEA国際エネルギー機関が2026年における世界的な供給過剰を警告したこと、並びに世界最大のエネルギー消費国である米国と中国の間で貿易摩擦が激化していることが主な要因となっています。
今週の初め、世界の原油市場は売り圧力に直面しました。専門家らは「景気後退の兆候が見られる中、需要の見通しは暗い」と指摘しています。米国における掘削リグ(採掘装置)稼働数が増加していることも、市場の飽和状態への懸念を高めています。一方、ロシア産原油購入をめぐる地政学的緊張から、西側諸国とアジア諸国の勢力図が再びクローズアップされ、市場は複雑さを増しています。【ParsToday国際】このニュース記事では、アジアにおける最も重要な経済ニュースを取り上げていきます。
価格下落の詳細と週次傾向
主要原油指標は20日月曜、下落しました。ヨーロッパ産主要銘柄のブレントは24セント(0.4%)下落し、1バレル61.50ドルとなりました。アメリカ産経由ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)は21セント(0.4%)下落し、1バレル57.33ドルに達しています。注目すべきは、両指標とも3週連続で下落し、合計の週次下落率が2%を超えることです。
IEAが警告、「2026年は原油供給が過剰に」
価格下落の最大の要因は、IEA国際エネルギー機関が警告を出したことです。IEAは最近の報告書で、2026年には原油の供給過剰がさらに深刻化すると警告しました。この予測により、投資家らは世界市場での供給過剰の継続に対する懸念をつのらせています。
米中貿易摩擦と景気後退への懸念
原油価格の下落を招いたもう1つの重大な要因は、中国とアメリカの間における貿易摩擦の激化です。WTO世界貿易機関は米中両国に対し、緊張緩和を正式に求めるとともに「経済面での米中の乖離は、長期的に世界のGDP国内総生産を最大7%押し下げる可能性がある」と警告しました。米中が国際貨物を輸送する船舶に追加の港湾使用料を課すことは、世界の物流のかく乱や貿易コストの上昇をまねき、石油などのエネルギー輸送手段の需要に直接的な影響を与える可能性があるとされています。
供給過剰と政治の先行き不透明への懸念
売り圧力を強めているのは、産油国の生産増加に伴う供給過剰への懸念に加え、米中貿易摩擦の激化による経済成長の減速への懸念です。米国がロシア産原油の買い手に対する圧力を強める一方で、トランプ米大統領とプーチン・ロシア大統領の会談が迫っていることで、世界経済の成長は益々不確実性を高め、一部の投資家にとって取引の成立が困難になっています。
米国の原油供給とロシアの地政学的な石油戦略
エネルギーサービス会社ベーカー・ヒューズの報告書によれば、米国のエネルギー企業が3週間ぶりに石油・天然ガス掘削リグの稼働数を増加させていることから、供給過剰の深刻化を懸念する声が高まっています。一方、欧米諸国がロシア産エネルギーを購入するアジアの顧客に圧力をかけていることから、インドのロシア産原油輸入は今年12月から制限される可能性があります。これに対し、中国に対するロシア産原油の供給量が増加して価格が下がり、市場バランスが変化する可能性が指摘されています。
中国、ロシアとの「合法的な」協力を擁護
西側諸国からの圧力が高まる中、中国外務省の林剣報道官は記者会見で、中国によるロシア産原油の購入を「完全に合法」なものであると強調しました。林報道官は米国の行動を「一方的な威圧と経済的圧力」の明確な例だとし、「中国はロシアを含む世界各国と正常かつ合法的な経済、貿易、エネルギー協力を行っている」と断言しています。原油市場は、短期的に相反する二つの力の板挟みになっているように思われます。世界の経済成長の鈍化と将来の供給過剰に関する度重なる警告が下押し圧力を生み出している一方で、地政学的緊張と制裁による供給バランスの崩れという可能性が、いつでも価格を押し上げる可能性があります。このため、投資家は自らの取引調整のために、経済指標と政治情勢を同時に監視していく必要があるのです。