ラマザーン月、聖なる月(5)
(last modified Wed, 13 Apr 2022 14:12:00 GMT )
4月 13, 2022 23:12 Asia/Tokyo
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今回はまず、ラマザーンという言葉の源を探り、それからこの聖なる月の慣習の一部についてご説明することにいたしましょう。そして、皆さまにコーランの教えに親しんでいただくために、実際にコーランの朗誦を放送してまいります。さらに、締めくくりとして、ラマザーン月における医学面や栄養面での注意事項についてお話しすることにいたしましょう。

ラマザーンという言葉はもともと、灼熱の太陽の暑さによる、焼け付くような石の熱さを意味します。さらに、夏の間のちりあくたや砂塵を洗い流す秋の初めの雨を指します。イスラムの預言者ムハンマドの伝承では、この月がラマザーン月と命名されたのは、この月が罪を拭い去ることに由来する、と述べられています。

一部の伝承では、ラマザーン月という命名の由来が、この月が人間の精神を罪や過ちという汚れや穢れから清める役割を果たしていることにあるとされています。また、そのほかの幾つもの伝承においても、この聖なる月は様々な名称や性質を持つ月とされ、それらはいずれもこの月の偉大さを示すとともに、人間が完成度を高め、神に服従し礼拝するための心と体の準備を整える上でプラスの役割を果たしていることを物語っています。

宗教の偉人たちの間でも、ラマザーン月の一連の習慣を守ることが奨励されており、このことは断食をする人々がこの聖なる月を有効に活用する上での助けとなります。例えば、宗教上禁じられている事柄を回避し、また宗教上許されている食物を摂取することが特に注目されています。また、日々の礼拝は早めに済ませ、日中に15分、夜に15分と言った具合に、1日のうちに何回もコーランを朗誦することが奨励されています。そして、昼夜を通して数回に分けて祈祷を行い、特に夜により多くの時間を祈祷に充てることが望ましいとされています。

さらに、断食をする人には、宗教の英知や掟に関する勉強会に参加することが求められています。それは、宗教的な集まりの場に参加することで、神の哀れみと言うそよ風に触れることができるからです。

 

それでは、ここからは実際にコーランの朗誦をお聞きいただきながら、お話を進めていくことにいたしましょう。まず、コーラン第2章、アル・バガラ章雌牛」285節をお聞きください。

”神の預言者は、創造主なる神から下されたものを信じる。信者たちも皆、神と天使たち、全ての聖なる啓典と使徒たちを信じる。そして彼らは、次のように述べた。『我らは、いずれの使徒たちをも差別しない。また、教えを聞き、服従した。主よ、あなたの御赦しを願います。我らの帰する所はあなたの御許であります』”

コーランの数ある章の中で最も大きな章は、第2章アル・バガラ章です。この章は、イスラム教徒に対し、神の唯一性や復活、天使たち、預言者たちといった信仰の基本原則や聖なる啓典を信じるよう呼びかけています。

アル・バガラ章のうち最も重要な節の1つは、第285節です。この節ではまず、預言者ムハンマドと信者たちの信仰心について触れています。しかし、大切なことは、預言者と信者たちの信仰心の実例を区別しており、預言者は神から下されたものを信じている、とした上で、信徒たちについて言及していることです。それは預言者ムハンマドに敬意を払うためであると思われます。

もちろん、コーランでは全体を通して適切な折に預言者ムハンマドに敬意を表するとともに、この偉人についてはそのほかの人物とは別途に考慮しています。例えば、コーラン第48章、アル・ファトフ章「勝利」、第26節では、神は使徒と信者に安らぎを下した、と述べられています。また、コーラン第66章、アッ・タフリーム章「禁止」、第8節では次のように述べられています。

その日、神は、預言者やかれに従って信じる者たちを、辱しめはしない

 

もっとも、預言者とほかの信者たちを区別して指名していることは、ほかの信者たちに比べてこの偉人の位置づけがより高いことの表れであるとともに、メッセージに篤い信仰心を見出す最初の人物は、メッセージをもたらす人物であることを指摘するものです。預言者ムハンマド自身、神の命令の実行者であったことから、信者たちも彼に従って行動していました。

この節における信者たちも、預言者と同じように神や大天使、神の下した聖なる書物や彼の使途たちを信じ、いつ何時も預言者を孤独にしておくことはありませんでした。彼らはまた、預言者たちのいずれをも差別することなく、聖なる啓示をもたらす全ての預言者たちに大きな注目を寄せ、その存在を認め、最終的には心から異口同音に、我らは神の命令を耳にし、それに服従した、と述べています。そのあと、彼らは神に自分たちを赦し、自分たちの欠点を覆い隠すよう求め、自分たちの帰るところは神のもとであるとしています。

エフタール・断食終了後の食卓

 

それでは、ここからは今回の最後のテーマである、ラマザーン月における医学面や栄養面で特に留意したい事柄についてお話することにいたしましょう。今夜は、非常に栄養価の高い有益な果物をご紹介してまいります。

既によく知られているように、エフタールと呼ばれる断食終了後の食卓を彩る食材の1つは、ナツメヤシです。断食をする人は、断食を終えるに当たってこの果物を取ることが望ましいとされています。ナツメヤシやその樹木は、聖なる樹木であるとともに非常に古い歴史を持ち、コーランにおいてもナツメヤシという言葉は42回繰り返されています。イスラム教徒の間では、ナツメヤシは天国の果物と呼ばれています。

宗教的な伝承においては、ナツメヤシの摂取が奨励されており、このことはラマザーン月におけるこの果物の摂取が極めて重要、かつ効果的であることを示しています。これについて、イスラムの預言者ムハンマドは、次のように述べています。

”宗教上許されたナツメヤシを、断食終了後の夕食に食べる者は、礼拝をしてもそのご利益が400倍に増える”

また、シーア派6代目イマーム・サーデグも次のように述べています。

“神の預言者ムハンマドは、断食をした際には常に、新鮮なナツメヤシの実を夕食に食べていた”

ここで興味深いことは、栄養学の専門家が断食終了後の食事エフタールをとる際には、ナツメヤシや白湯、薄い紅茶や牛乳などから始めるよう奨励していることです。それは、これらの食品をとることで、体に必要な糖分が急速に補給され、そのほかの食物を摂取する上で体のよりよい状態が整うからです。イランの栄養学の専門家、サーラー・アフマドプール博士は、これについて次のように述べています。

「ラマザーン月には、より多くのナツメヤシを消費することから疲労が解消され、喜びの感情がわき、食物が体内に消化、吸収されやすくなる。学問的な調査の結果からも、ナツメヤシはラマザーン月に断食をする人々にとって最高の食物であることが分かっている。1日の終わりには、血糖値の低下が脳に大きな影響を及ぼし、断食をしている人は倦怠感や集中力の低下を感じるようになる。だが、ナツメヤシを摂取することで、20分以内にそうした症状が解消される。栄養学の専門家としての立場からは、エフタール食には、3つから5つのナツメヤシを摂取することが望まれる。但し、そのほかの甘いものと同様に、過剰摂取は控えるべきである」

アフマディプール博士は、さらに次のように述べています。

ナツメヤシは、果物の一種であり、ビタミンA,B,C,Eが豊富に含まれている。およそ100グラムのナツメヤシに、14ミリグラムのビタミンCのほか、さらにリン、カルシウム、鉄分、ヨウ素、マグネシウムなどのミネラル類も含まれている。これらの栄養素はいずれも人間の健康維持に大きな役割を果たしている。ナツメヤシはまた、食物繊維を含みお通じをよくすることから、断食により活動が停止されていた消化器官の活発化を促す。このため、栄養価の点からラマザーン月にはナツメヤシを摂取することが望まれる。この果物によるそのほかの効能としては、感染症やそれ以外の病気に対する免疫を強化し、抵抗力をつけること、高血圧や貧血の予防、腸のトラブルの改善、妊娠中の精神安定、神経性のストレスや苛立ちの緩和などが挙げられる」

ナツメヤシ

 

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