10月 18, 2023 19:00 Asia/Tokyo

皆様こんにちは。シリーズでお届けしております「ペルシャ語ことわざ散歩」、今回は建物の建設にまつわることわざをご紹介してまいりましょう。

今回ご紹介するのは、「壁の隙間を埋めることだけの役に立つ」です。

ペルシャ語での読み方は、Faqat be dard-e laaye jerz-e diivaar mi-khoreとなります。

この表現は、「無用で全く機能せず、役に立たない、使いものにならないこと」、さらには「何の特徴もないこと」や「無力で何もできない、情けない状態」を意味しています。

さて、冒頭でもお話しました通り、この表現は建物の建設に由来しています。

昔、家屋やそのほかの建物を造る際には木材や石、泥やレンガなどといった天然の素材が使われていました。また、旧来の建築方式では建物を丈夫にするため、壁は厚めに造り、こうした壁は1軒の家屋内に一定の間隔ごとに設けられ、家を支える重要な役割を果たしていました。

恐らく、このことわざは非常に古い歴史を持つとみられていますが、その理由として、イラン国内にある古い城塞の一部では、分厚い壁の中から古い人骨が見つかっていることが一説に挙がっています。そして、歴史学者らによれば、これらの人骨が当時、働きの悪いことを理由に罰として家の壁の間に埋められた労働者や奴隷だちだったと考えられています。また、一部の歴史学者は、太古の昔には亡くなった人を家の壁の中に埋葬する習慣があり、特に紀元前のメディア王朝時代やアケメネス朝時代に、この方式が一般に広まっていたとしています。

イランはその昔、現在よりもはるかに広い領土を有し、人々の生活様式も地方により大きく異なっていましたが、それでも全体としては伝統的な家父長制度にのっとり、家族の中でも男子が重要な責務を担っていました。このことから、一家の男の子が身体能力が低く労働をこなせなかったり、何か特別な技術がなかったりすると、「壁の隙間埋めにもならない」といって蔑んでいたと伝えられています。

そして時代が下るにつれ、この表現は次第に一家の男子だけではなく、一般的な人材や労働力、さらには物品などに関しても「役に立たない、使えない、有用でない」という意味で使われるようになったとされています。

以上、今回はイランの長い歴史に関係すると思われることわざをご紹介しました。それではまた。

 


ラジオ日本語のソーシャルメディアもご覧ください。

Instagram     Twitter     urmediem