イラン音楽の種類と特徴(音声)
これまで、IRIBラジオ日本語では、開局以来いくつか音楽に関する番組をお届けいたしました。
それぞれの内容に特色がありましたが、今回の番組では、これらの番組よりさらに踏み込んだ内容を皆様にお伝えすることにしましょう。
この番組では、主にイランの古典音楽のシステムや構成について、ある程度詳しい説明を行うとともに、地方音楽のシステムの一例などについても触れていく予定です。
まず、現在、イラン音楽と一概に言っても、イランという国の多様性という点から、ひとつの音楽として定義するのは難しいでしょう。もっとも大雑把なカテゴリーでイラン音楽を3つに分けるのであれば、19世紀末の宮廷音楽を基本とする、イランの音楽体系ダストガーに基づいた古典伝統音楽、各地方に伝えられてきた地方音楽、そしてポップスやクラシックなど、西洋音楽の影響を受けた音楽の3つとなります。
イラン独自の音楽、つまり西洋音楽や西洋音楽の影響を受けていない音楽の特徴とは、どのようなものでしょうか。そもそも伝統音楽、とりわけイランの古典音楽は、どういった点で世界に満ちている西洋由来の音楽と違うのでしょうか。これについて、いくつかの点を上げて指摘したいと思います。
まず、第1の要素として、西洋の音階にはない微分音が、特にイランの古典音楽に存在することです。これは、ピアノでいうと、黒鍵と白鍵の間に、別の鍵盤が存在することになります。この微分音が、イランの旋法体系「ダストガー」の中に、ごく普通の音階として組み込まれています。これは、西洋音楽の影響を受けた新しい音楽の中には、ない要素です。場合によっては、イラン音楽の伝統的なメロディを基本として、微分音を半音とし、西洋的なテイストの作品を作ることもあります。
微分音については、イランの音楽だけでなく、トルコやアラブ諸国の伝統音楽にも存在しますが、この微分音の取り方は、地域によって高くとったり、低めにとったりする傾向があります。たとえば、トルコ音楽で使用されている微分音は、イラン音楽で使用される微分音に比べて、若干高い傾向にあるようです。また一部の地方音楽においては、微分音は使われません。
さらに、曲が単旋律、つまりひとつの旋律で進むことも特徴です。このため、合奏する場合、楽器ごとに和音の構成に従って別のパートが演奏されることは少なく、基本的にはひとつの旋律を追っていく形のユニゾン形式になります。