一日一冊、本の紹介(5)
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アボルハサン・サバー
アボルハサン・サバーは、ほかとは比較のできない音楽の巨匠であり、イランの音楽に多大な影響を与えた人物です。
イランの音楽は、サバー以前とサバー以後に分けることができます。最近発表された『サバーの伝説』という本は、彼の生涯について記した本です。この本の著者はアリー・デフバーシーという人物です。この本は10章に分かれていて、それぞれにサバーと親しかった人物や弟子の回想録などが掲載されています。また、この本では、歴史の中でのサバーの一族、サバーの芸術的な生涯、サバーの音楽や技術などについて記されています。サバーに関する論文、参考文献目録、写真などにより、この本はサバーに関して知るための良書となっています。
アボルハサン・サバーは1902年に音楽や文学に通じている一族に生まれました。若い頃は絵画を学び、その後、高等音楽学校に行き、音楽を学びました。彼は短期間でイランの音楽体系・ラディーフと、全ての楽器の演奏技術を身につけ、サントゥール、タール、セタール、トンバク、ネイ、キャマーンチェなどのイランの伝統的な楽器だけでなく、ヴァイオリン、ピアノなども大変巧みに演奏しました。
サバーは40年間演奏活動に従事していただけでなく、多くの高名な弟子を育て、数多くのオーケストラに参加し、本を執筆し、イラン音楽に肯定的、直接的な影響を与えました。音楽の巨匠、ダルウィーシュ・ハーンによって始まった新たなイラン音楽のスタイルは、サバーにより頂点に達し、サバーの弟子もこのスタイルに従いました。
多くのページでは、サバーがセタールやバイオリンなどの楽器にこの上なく精通していたことが示されています。また、サバーの音楽作品は70点以上が残されており、これらは彼がリズムやテクニック、深い芸術思想に通じていたことを示しています。サバーは1957年に死去しました。
それではここで、『サバーの伝説』の一部を読んでみましょう。それには、次のようにあります。「サバーは長年、イラン各地の地方音楽を精緻に研究しており、それとともに音楽を学術的に教えていた。このため、サバーは地方音楽の体系を集大成し、それらを用いてイランの音楽体系を豊かにすることを決意した。この貴重な業績により、これらの曲は永遠のものになり、地方音楽や大衆芸術の実質的な価値が上がるとともに、人々の民俗的な芸術や文化が芸術界のより大きな注目を浴びるようになったのである」
この本のページ数は688ページです。