1日1冊、本の紹介(60)
イスラムは、人道にそった教えの1つであり、人道的な基準に基づくものです。
このことから、イスラムでは、人々の間における誤った差別にそったものは存在しません。イスラムにおいては、特定の地域や人種、血統、言語といった概念は存在しないのです。イスラムでは、これらの要素は人間同士の間での有利な特典にはなりません。イスラムで人々の間の優劣の基準となるのは、人間的な価値観なのです。
イランの著名なイスラム哲学者モタッハリーが執筆した『精神性ある言葉』という著作は、イスラムのこうしたポイントにスポットを当てており、最近出版されました。この著作は、今からおよそ30年前に初版されていましたが、最近になっていくつかの章が新たに加えられ、数回にわたり再販されています。
この書籍には、精神性の自由や礼拝、祈祷、悔い改め、霊魂の偉大さや人間性の流派、そのほかの精神性関連のテーマに関する、モタッハリー師の13の演説が含まれています。そして、この書籍の全ての内容の骨子は、自己形成や自己の内面の浄化、即ち一言で言えば真の意味での人間になることとされています。
モタッハリー師は、この著作に収められた2つの演説において、自由という概念を定義づけるとともに、社会的な自由と精神的な自由のつながりについて検討し、精神的な自由、即ち色欲というくびきからの人間の解放を優先させるべきだとしています。彼は、本当の意味で自由な人間の実例として、シーア派初代イマームアリーの言行録『ナフジョルバラーガ』(雄弁の道)の一部を引用しています。さらに、「人間的な私」と、「動物的な私」の違いや、人間が精神面で束縛されている状態の分類や、人間の内面に存在する良心も、この書籍で扱われています。この書には、次のように述べられています。「預言者一門の最大のプロジェクトは、精神的な自由であり、それは原則的には自己の内面の浄化、即ち精神的な自由である。私たちが生きる現代における最大の害悪は、常に自由ということが叫ばれているものの、それはあくまでも社会的な自由に過ぎないという状況である。もはや誰も、精神的な自由について語ることはなく、そのために社会的な自由すら達成できていない」
この書籍の「礼拝と祈祷」の章では、イスラムの断食月ラマザーンの美徳に関する4カ条が提示され、礼拝の効果や禁欲、神に近づくこと、礼拝に当たっての極端な行為の悪影響、社会的な問題や正しい礼拝の特徴と条件について述べられています。
本書の特徴として、作者がハーフェズやモウラヴィーといった優れたペルシャ詩人の詩を活用していることがあげられます。
この著作は、サドラー出版社により出版されています。