12月 05, 2016 18:47 Asia/Tokyo
  • 家庭に対する麻薬の影響

今回は、健康的で安全な家庭の崩壊に、麻薬の常習がどれほど影響を及ぼしているかについて考えることにしましょう。

麻薬の常習は、現在蔓延している社会問題の1つであり、毎年多くの犠牲者を出しているとともに、世界におけるその犠牲者の数は日々増加しています。薬物の犠牲者が非常に増加していることから、ある毒性学者は次のように述べています。

「食物を例外とすれば、薬物ほど各国の国民の生活に入り込んでいる物質はない」

国連は、2015年6月に次のように発表しています。

「現在、世界には2億4600万人の麻薬中毒者が存在しており、そのうち2700万人が深刻な状態にある」 国連のパン事務総長も、この点に関し、世界の麻薬中毒者の3人に1人が女性であるとしています。

専門家の見解では、世界でこれほど多くの人々が麻薬中毒に陥っている原因として、好奇心、快感への欲求、痛み止め、悩み事を忘れる、面白半分、スリルや興奮、大人の気分を味わう、特定のグループに所属するといった、一見重要でなさそうな事柄が、重要な原因と見なされています。

社会問題の1つである麻薬中毒に陥ると、麻薬に手を出した本人の社会的な地位が揺らぎ、その人は利己的で薄情な人間、人格のバランスのとれない人と見なされるようになります。麻薬中毒は、家庭を破壊し、家庭や社会の収入を減少させてしまいます。

しかし、研究者たちは多くの人々が麻薬中毒に陥る原因を探る中で、家庭がこの問題に関して重要な鍵を握っているという結論に達しました。家庭は人格が形成され、行動規範を学習する最も重要な場です。親の見識不足や親子関係の弱さ、家庭内の規律の欠如、家庭内の混乱やまとまりのなさにより、子どもが麻薬の常習を初めとする各種の犯罪行為に走る下地が出来上がってしまうことになります。

 

有識者の見解では、若者や青少年が麻薬に好奇心を抱く主な原因の1つは、麻薬の悪影響を体感する前に、家庭内で麻薬に触れたり、誰かが使用しているところを目にしたことだとされています。家庭内に麻薬が存在することで、若者はあらゆる口実により麻薬を使用してみたいと感じるようになり、初めてその条件が整うとすぐに、麻薬を体験することになります。

家庭環境に潜む、麻薬の常習に陥るもう1つの原因として、家庭の監視がおろそかなことが指摘できます。家族の監視が緩い、或いは暗黙のうちに麻薬の服用を認めてしまう原因として両親、或いはそのいずれかが仕事で忙しすぎて、麻薬の常習につながる行動に気づかないこと、親の人格に問題があることなどが考えられます。こうした家庭では、両親が然るべき責務を果たせないときに、子どもに自由を与えることになり、これが子どもの危険な行動のきっかけとなることには気づいていません。

しかし、その一方で家庭の管理が厳しすぎることも、若者を麻薬の常習に向かわせる原因となりえます。また、親子間での考え方の食い違い、親が子どもの正当な要求を無視することなども、こうしたものに含まれます。

親が躾に厳しい家庭の子供たちは通常の場合、自分の考えを自由に表明することが許されず、成長過程において自信を奪われます。また、決断力が不足しているために、些細な困難にぶつかった際に、安易に麻薬に手を出してしまいます。また、家庭で信仰心や宗教的な義務を遵守しないことによっても、子どもが麻薬を使用する機会が生み出されます。

親は、教育力を高めることで、子どもを本当の意味で自信のある人間に育て、彼らに生活の術を教え、麻薬仲間の誘いをきっぱり断るという考え方を身につけさせることができるのです。

このことが効果を発揮するのは、親自身が子供にとって適切な行動規範となり、子どもに正しい行動や誠実さ、謙虚さといったすばらしい道徳的性質の全てを示してみせるときです。麻薬中毒に陥っている親は決して、子どもにとっての良き指導者にはなりえないのです。

 

専門家は、麻薬中毒は事実上一種の病気であり、段階的に進行する、と考えています。このため、麻薬の使用を始めた人々の多くは、麻薬中毒という病気に陥ることを知りません。通常の場合、彼らは病気が進行していることには気づいておらず、気づいたときには既に手遅れの状態です。彼らの家族も、精神面での好ましくない異変が生じて初めて気づくのが普通です。

問題の初期の段階において、家族は普通、現実に向き合うことなく、これを些細な問題と見なし、段階的に当人も麻薬の使用を止めるだろうと思い込んでいます。しかし、麻薬中毒が進行することで、次第に家族ともコミュニケーションをとらなくなります。

こうした中、麻薬中毒者と麻薬の関係は、非常に現実的な家族問題となります。家族のメンバーはおそらく、一部の部分的な変化には気づくかもしれませんが、今何が起こっているかをきちんと認識することはできません。

麻薬中毒者を抱える家庭も、中毒者の人格が大きく変わってしまったことに反応し、その悪影響に対応するため、否応なしに独自の方法を取らざるを得なくなります。麻薬中毒でない配偶者や子ども、親たちは大抵、自分やほかの家族のニーズを無視して、家族間でいさかいが起きないよう、麻薬中毒者の行動を正当化したり、我慢しなければならなくなります。

 

多くの場合、麻薬中毒者を抱える家庭は特殊で病的な状況に従っていることになります。家族は、自分に課された役割を受け入れます。しかし、彼らは自分たちがこうした行動により、中毒者本人の病的な行動を支援してしまっていることには気づいていません。

この場合、家族の1人が麻薬中毒に陥る前には、家庭内の安全や家族の問題解決能力を支えていた、その家族の決まりごとはもはや機能を失い、次第に新しい決まりごとがそれにとって代わり、家族全員がそれに従わなければならなくなります。この新しいルールは事実上、家庭を維持するための強制力として生じたものですが、それらは大抵家族の安らぎと幸せにとって有害なものです。例えば、麻薬中毒者の配偶者はパートナーが放棄した家事の全てを背負わなければならなくなります。

両親がいずれも麻薬中毒者である家庭では、時としてこうした責務がその家庭の年長の子どもにのしかかってくることもあります。こうした状況により生活は変化し、家族が苦しむことになりますが、結果的にこの状態がその家庭を支配することになります。これこそはまさに、麻薬中毒という病気が家庭にもたらした悪影響の1つといえます。そして、遂にはその家庭は崩壊し、家族全員の健康と安らぎを害するのです。