4月 17, 2018 20:29 Asia/Tokyo
  • イスラムと健康・預言者の食習慣
    イスラムと健康・預言者の食習慣

これまでの番組は、バラエティに富んだを摂取する必要性と、食事を取る時間帯、そしてイスラムの観点から見た食習慣の一部についてお話しました。今回は、イスラムの預言者の食習慣についてお話することにいたしましょう。

イスラムの預言者ムハンマドは、飲食においても、イスラムの教えの全てを守っていました。この偉人の言動や方法は、そのほかのイスラム教徒や、自由を求める全ての人々を導く原則です。預言者ムハンマドは、禁欲的で敬虔であったことから、1日に1回しか食事をとらず、また食事の量も神に礼拝し、人に奉仕する上で体に必要とされる分量にとどまっていました。彼は、空腹を感じたときに食事をし、また出来る限り他の人々と一食に食事をとることを強調していました。そして、食事を始めるときと終わったときに、必ず神の名を唱え、感謝の祈りを捧げていたのです。

 

預言者は、特別に豪華な食事にこだわらず、一般庶民と同様にごく普通のものを食べ、しかも最も粗末な食事で十分とし、それに感謝していました。12世紀のイランのシーア派法学者タバルスィーによれば、預言者は様々な種類の食事をしていたといわれています。

イランの伝統食物

 

預言者は、食事に関してえり好みすることなく、自分の体力の維持のために、手近にあるものを食していました。多くの場合において、預言者は大麦或いは小麦、さらにはふすまでできたパンを食べ、満腹する手前の状態で抑えていました。一部の伝承では、預言者の食事は大麦で出来たパンだったとされています。

 

預言者ムハンマドは常に、人々に対し贅沢を控え、質素な生活や今あるもので満足するよう奨励していました。預言者の質素な生活ぶりは、食事を初めとする彼の生活の全ての側面に明確に現れていました。彼は、特に食事を初めとする生活全般において、質素倹約を貫き、自らやイスラム教徒にとって経済状況にゆとりが出てきたときに、自分や家族の食事にバラエティをもたせ、有益な食物を摂取していたのです。

 

預言者の食べていたおかず(副食)は多くの場合、非常に質素なものでした。これについて、シーア派6代目イマーム・サーデグが語り伝える次のような伝承があります。ある日のこと、預言者が妻ウンム・サラマの部屋に入ると、彼女は預言者に一かけらのパンを持ってきました。これに対し、預言者が何か一緒に食べる物はあるかと尋ねると、妻はビネガー以外何もありませんと答えました。すると、預言者は次のように述べたのです。エ;“ビネーガこそ、よいおかずになる。ビネガーのある家には何もないとは言えない”

イランの伝統食物

 

預言者ムハンマドは、食物が安全で体のためによいものであることを強調していました。食物は、決して体にとって有害であってはならず、健康に弊害を与えるものであってはなりません。食物の中でもよくないとされているのは、火傷をしそうなほど熱い食事です。イスラムの教えでは、イスラム教徒に対し、火傷をしそうなほど熱い食物をとらないよう強調されています。また、預言者に関する伝承では、預言者に熱い食事が出されたとき、預言者はそれが冷めるまで待つことにしました。さらに、「神が食物の中に火をつけたことはなく、恩恵は熱くない食事の中にある」と語ったとされています。

 

一部の伝承によれば、預言者ムハンマドは食べた後に口の中に匂いが残るような一部の植物を食べないようにしていたと言われています。しかし、このことはそうした食物の匂いが残ると、家族や社会にも影響することによるものであり、それが体に良くないからということではありません。シーア派法学者タバルスィーによれば、預言者は普通、ニンニクやタマネギ、ニラの含まれた食事は、食べた後に口臭が残るため、食べなかったとされています。

食べすぎ

 

イスラムの教えでは、食べすぎも好ましくないとされています。宗教の先駆者や偉人たちは常に、人々に対し食べ過ぎを禁じ、食べることにおいても節度を守るよう呼びかけていました。預言者ムハンマドも常に、必要な分量のみ食物を摂取していました。預言者の妻によれば、預言者は決して満腹することはなかったとされています。

 

預言者ムハンマドは、空腹を感じたり、体のために必要と感じたとき以外に食事をすることはありませんでした。伝承において、預言者は「食欲があるときに食べるがよい。だが、まだ食欲が完全に満たされる手前で食べることを止めよ」と述べています。スンニー派のイスラム神学者、伝承学者のマーリク・イブン・アナスによれば、預言者は体に必要と感じたとき以外には、肉やパンを食べなかったとされています。

 

預言者ムハンマドは、賓客へのもてなしを好み、出来る限り一人では食事をとらないようにしていました。彼は、次のように述べています。エ;“あなた方のうちで、最も悪い人は誰かを明らかにしようか。最も醜悪な人間とは、1人で食事をし、奴隷をたたき、賓客を拒む者である” 預言者は、食事を完全なものにする方法として、集団で食事をすること、イスラム法で許されているものを食すること、そして食事の前と後に神の名を唱えて感謝することを挙げており、さらに次のように述べています。エ;“神のもとで最高の食事とされるのは、沢山の人々に食される食事である”

食習慣

 

シーア派6代目イマーム・サーデグによれば、預言者は次のように述べています。

“大勢の人々が集まることで恩恵につながり、1人分の食事で2人分のニーズを満たし、さらに2人分の食事が4人分のニーズを満たすことになる”

 

タバルスィーの伝承には、次のように述べられています。ある時、ある人物が預言者に対し、自分は食事をするが満腹感を感じないと告げました。すると、預言者は次のように答えました。エ;“それはおそらく、あなたが1人で食事をしているためだと思われる。食事の際に、互いに集まり神の名を唱えるがよい。そうすれば、あなたに恩恵が与えられる”

 

今日においても、他人と食事を共にすることは喜びを伴い、食事も進むこと、そして、食物の栄養の吸収が促進され、消化のバランスにつながることが証明されています・