6月 24, 2018 22:52 Asia/Tokyo
  • コーラン第96章アル・アラグ章凝血による書道
    コーラン第96章アル・アラグ章凝血による書道

今回は、コーラン第96章アル・アラグ章凝血をお届けしましょう。

慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において

 

アル・アラグ章はメッカで下され、全部で19節あります。

 

アル・アラグ章の最初の5節は、イスラムの預言者ムハンマドが使命を授かったばかりの頃、ハラーの洞窟で下されました。この章では、預言者に対するコーランを朗誦するようにという指示、価値のない一滴の血液からの人間の創造、神の恩恵による人間の成長、知識と筆の強調、感謝をしない人間の特徴、人々を導き、善い行いをすることを妨げた人々への痛ましい処罰、神に近づき、ひれ伏すことへの指示が述べられています。

 

コーラン第96章アル・アラグ章凝血

 

アラグとは、固まった血液のことを差します。それは母親の胎内における人間の創造の段階のひとつです。この節は、人間の創造の始まりを取るに足らないものとし、それによって、これほど価値のないものから、人間という価値の高いものを創造した、神の偉大さを示そうとしています。

 

アル・アラグ章の第1節から5節を見てみましょう。

 

「読め、世界を創造された汝の主の名において。彼は人間を凝血から創造された。読め、汝の主はあらゆるものよりも尊い方である。彼は筆によって教えられた。そして知らなかったことを人間に教えられた」

 

 

イスラムの預言者ムハンマドに下された最初の数節は、筆と言葉の習得について述べています。これらの節は、最後の預言者の啓示の始まりが、新たな文明や文化の開花と知識を伴ったものであることを物語っています。実際、イスラムは、初めから、知識と筆に基づいたものとなっています。イスラム教徒が学問や知識の点で進歩し、それを世界中に広めたのも理由がないわけではありません。ヨーロッパの著名な歴史家たちが認めているように、イスラム教徒の知識と技術の光によって、中世のヨーロッパに明かりがともされ、彼らが文明の時代に入ったのでした。

 

イスラムの預言者ムハンマドは、いつものように、メッカの町の近くにあるハラーの洞窟を訪れていました。大天使ジブライールが降り立ち、言いました。「ムハンマドよ、読め」 預言者は言いました。「私は読み書きが出来ません」 ジブライールは再び、「読め」と言いました。預言者も同じ答えを繰り返しました。ジブライールは三度目に言いました。

 

そして預言者も読み始めました。

 

神の啓示の最初の光に驚いていた預言者ムハンマドは、妻のハディージャのところにやってきて言いました。

「休みたいので、私に布をかけてください」

 

著名な歴史家でコーランの解釈者であるタバルスィーによれば、預言者ムハンマドはハディージャに向かって、一人になると、声が聞こえ、不安になると言っていました。それに対して妻のハディージャはこのように言っていました。「神はあなたについてよいこと以外のことをしないでしょう。なぜなら、神に誓って、あなたは預かり物に対する責任を果たし、親戚を訪問し、正直であるからです」

聖典コーラン

 

ハディージャはこう語っています。「この出来事の後、ハディージャの親戚で、アラブの学識者であった人物のもとに行きました。預言者は自分が目にしたことを彼に話しました。彼は言いました。『あなたに吉報あれ。あなたに吉報あれ。あなたこそが、マルヤムの息子のイーサーが知らせていた存在であることを私が証言します。そして、あなたはムーサーと同じように宗教法を持っています。あなたは神の預言者であり、まもなく、神の道において戦いが命じられます。その日、私が生きていれば、あなたの傍らで私も戦うでしょう』」

 

 

アル・アラグ章は、感謝をしない人間たちの特徴に触れています。彼らは、自分は神の存在を必要としないと考え、反抗する人々です。これは、啓示や理性の思想の中で育っていない人々の性質です。そのため、彼らは神の存在を必要としないと誤って考えるとき、反抗に走ります。そして、神に服従することも、神の戒律を実践することもなければ、良心に耳を傾けることも、真理や公正を守ることもありません。

 

これらの節は、預言者に対し、人々がすぐに導きを受け入れてくれると期待すべきではないこと、それどころか、反抗的で高慢な人々の反対に備え、これから困難な道が待っていることを知るべきだとしています。

コーラン第96章アル・アラグ章凝血による書道

 

アル・アラグ章は続けて、導きや敬虔さ、また真理の道を歩む人を妨げる、高慢で反抗的な人々の行いの一部に触れています。アル・アラグ章の第9節から19節は、神の僕の礼拝を妨げる人について語っています。伝承には次のようにあります。

 

ある日、アブージャハルが周囲の人たちに尋ねました。「ムハンマドがあなたたちの前で土に顔をつけるというのは本当ですか?」 人々は本当だと言いました。彼は言いました。「もし彼がそのようなことをしているのを見かけたら、その首に襲い掛かろう」 ちょうどそのとき、ムハンマドが礼拝を行っていると誰かが声をかけました。アブージャハルは近づいていき、預言者の首に襲い掛かろうとしました。しかしすぐに後ずさりしました。そのとき、アブージャハルは顔を両手で覆いながら言いました。「突然、自分と彼の間に炎の囲いを見た。そして羽も見えた」 そのとき、預言者は言いました。「私の命をその手に握る神に誓って。もし私に近づいていたら、神の天使たちが彼の身体を切り刻み、それらを持ち去っていただろう」

 

コーランは、厳しい口調で忠告しています。「彼は神が彼を見ているのを知らないのか?」 続けて、その過ちを犯した反抗的な人物に強い警告を与え、神の預言者に対し、ひれ伏し、礼拝を行い、神に近づくようにとしています。

 

アル・アラグ章は、サジダ・ひれ伏すことが義務とされるコーランの4つの章のひとつです。