7月 03, 2018 20:59 Asia/Tokyo
  • アーダムの子孫ハービールとガービール
    アーダムの子孫ハービールとガービール

今回は、預言者アーダムの子孫つまりハービールとガービールの物語をお届けしましょう。

アーダムの子孫の物語は、常に、人間の生活に存在してきた争いの例です。それは、信仰を持つ清らかな人々と、利己的で真理に敵対し、善良で清らかな人々との戦いに立ち上がる人々の争いです。今回紹介する物語は、神に対する服従の重要性を述べる一方で、人間に、醜い性質の結末について警告し、人間が損害を被ることのないようにしています。しかし、教訓を得るのは、本当にわずかな数の人々です。

 

ハービールとガービールは、アーダムとハッワーの最初の子孫でした。ハービールは敬虔で、優しく賢い若者でしたが、ガービールは反抗的な精神を持ち、頑なで激しい気性の持ち主でした。

 

ある日、アーダムが子供たちを呼びました。

 

「神は、あなたたちがそれぞれ、何でも好きなものを神に捧げるようにと命じられた。そしてより相応しい方の贈り物が受け入れられることになる。さあ、最高の捧げ物を用意しなさい」

 

ハービールは大喜びで自分の家畜の群れのもとに行き、その中から最高のラクダを選び、それを捧げに行きました。そのとき、このように囁きました。

 

「神よ、あなたの栄誉に恥じ入ります。私が持っている物は、すべて、あなたからのものです。これ以上に良いものを私は持っていません。私をお赦しください。あなたの恩恵により、この取るに足らない私の捧げ物をどうか受け入れてくださいますように」

 

一方、ガービールは自分の畑で迷っていました。

 

「こんなに良質の小麦が燃やされてしまうのは残念でならない。あまり質のよくない収穫物がある別の畑から、わずかな量を捧げることにしよう」

 

彼らは二人とも、自分の捧げ物が受け入れられるのを期待して待っていました。どちらが受け入れられるかは、神からの稲妻によってあらわされることになっていました。少しのちに、ラクダの周辺で火が起こり、ハービールが感謝のしるしに地面にひれ伏しました。純粋な心で捧げ物をしなかったガービールは、混乱し、心に憎しみを抱きました。そして怒った様子でハービールに向かって言いました。

 

「お前を殺してやる。お前の幸せなど見たくない」

 

ハービールは落ち着いた様子で言いました。

 

「兄弟よ、あなたの捧げ物が受け入れられなかったのは私のせいではない。神は善良で敬虔な人間の行いのみを受け入れられるのだ」

 

ガービールは答えました。

 

「お前を殺さなければ、私の心が安らぐことはない」

 

ハービールは言いました。

 

「あなたはそのような決意によって、自分自身に不義を行うことになる。血を流すことは大きな罪だ。もしあなたが私を殺そうとしても、私は決して、あなたを殺そうとはしない。私は世界の創造主を畏れている。他人の罪の重荷を背負うつもりはない。あなたはそのような行いによって、自分の罪と共に、私の罪をも背負うことになる。そして地獄の人間となるだろう。それが圧制者への報いである」

アーダムの子孫ハービールとガービール

 

数日が過ぎました。復讐の炎は、まだガービールの心の中で燃え盛っていました。ある日、彼は兄弟を追って山に行きました。すると遠くから、安らぎの中で草を食む家畜の群れが見えました。ガービールが近づいていくと、ハービールは大きな岩の横で休み、眠りに陥っていました。ガービールは絶好のチャンスを得たとばかりに、大きな石を手にし、兄弟の頭上に立ちました。次の瞬間、世界における圧制の最初の礎が築かれました。ハービールは利己的な兄弟のガービールによって、不当に殺害されてしまったのです。

 

ガービールは何が起こったのか分からず、魂のない兄弟の姿を見つめました。膝ががくがくし、後悔と悲しみに襲われました。両親の前に立つことを考えると、彼は恐怖を感じました。兄弟の遺体をどうしたらよいのでしょう。突然、ガービールの目の前にカラスが現れました。カラスは地面を掘り、そこにクルミを隠しています。ガービールは驚いて考えました。

 

「きっと神が、このようにしてハービールを土に埋めるよう、私を導いてくださっているのだ」

 

そのとき、ガービールは深い後悔の念と屈辱感に駆られました。

 

「ああ、何ということをしてしまったのだ。私はこのカラスのようにもなれないなんて」

 

コーラン第6章アル・マーイダ章食卓、第30節は、この物語についてこのように語っています。

 

「彼の性質が兄弟の殺害を促した。そして彼を殺し、損害を被る人間の一人となった」

 

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