家族形態の種類
今回は、家族形態の種類についてお話することにいたしましょう。
それではまず、コーラン第30章、ルーム章「ローマ」第21節からお聞きください。
"また、あなた方が彼女たちによって安らぎを得られるよう、彼が、あなた方自身からあなた方のための配偶者を創られたのは、彼のしるしの1つである。あなた方の間に、愛と慈しみの念を起こさせる。このことには、考える人々、賢い人々へのしるしがある”
心理学者の間では、幸せな結婚をするには、家族の絆を深め人と折り合うことを身に着ける必要があるとされています。人間は苦しい状況に置かれると、普通は自分の事だけを考えて利己主義的になるか、もしくは目の前にいる相手のことだけを考えるかの、いずれかの反応を示します。もし、前者のような反応を示すなら、その人はまだ結婚できる下地が整っていないことになります。
モラルや愛情に基づく動機ではなく、利己主義に基づく結婚は、世俗主義や物質主義的な動機をベースとしています。当然ながら、このような結婚が長続きする事はありません。
ここで、ある小話をご紹介する事にいたしましょう。
ある日のこと、キツネが、地面に座っているラクダを見かけました。キツネは、ラクダの話し相手になろうと思い、ラクダの元にやってきて、自分の尻尾をラクダの尻尾に結び付けました。ラクダが立ち上がると、キツネは宙に浮きました。ほかの動物たちがやってきてたずねました。「おい、どうしてお前はこんな事になったんだ?」
キツネはこう答えました。「自分より大きい動物にくっついたから、こうなったんだ。娘側の家族の高い地位や財産を目当てに結婚しようとすれば、こういうことになるのだ」
それでは、ここからは前回までにお話した家族の形態以外の家族形態についてお話することにいたしましょう。これまでにお話したように、過去数十年間でイランの家族形態は根本から変化し、時代や社会の変化とともに、様々な形態の家族が出現しています。伝統的な家族形態としての大家族も、依然として存在しているものの、核家族は、幅広く新しい形式の家族形態を生み出しています。社会学者の間では、これらの家族は「不完全な核家族」と呼ばれています。
不完全な核家族とは、何らかの理由により、核家族を構成する重要な基本要素としての夫婦、そして子供のいずれかが欠けている家族を意味し、現在、この種の家族は全世界に存在します。そして、もう1つは最低限の家族と呼ばれるものであり、若い夫婦が共同生活を営んでいるものの、子供を持つ意向がない状態を指します。そしてもう1つは、子供が結婚などで巣立った後に、高齢の父親または母親がのみが残っている家族です。また、子供のいない家族も、不完全な核家族の1つとみなされています。
さらに、もう1つの形態として、片親のみの家族があります。これは夫婦のいずれかが死亡したり、あるいは離婚やほかの土地への移住などで夫婦がそろっていない家族を指します。
イランの社会学者アーザーダールマキー博士は、次のように述べています。
「イラン社会では、ある種の文化が出現しつつあり、イラン人家庭は次第に、両親と少数の子供の完全な核家族という形態になっている。このような家族形態では、個人主義が出現はするものの、基本的には生活が重要だとする新しい社会的な哲学が形成されつつある。イランの社会では、生活が重要である」
アーザーダールマキー博士は、さらに次のように述べています。
「中には、このような変化が、イランの社会の現代化によるものだと言う人もいるかもしれない。確かにその通りである。だが、現代化とは混乱・崩壊を意味しない。私はあくまでも、現代化という概念を肯定的な意味で捉えている。現代的な家族は、イランの伝統や文化、倫理においてプラスの意味をもって形成されている、このような状態においては、家族は宗教的なモデルに根ざしたものとなるが、現代的な基盤がその基盤となる。現代の人々は、イランの社会であれ、西洋社会であれ、家庭の機能による存在であり、教育機関や政治、あるいは政府によって作り出される存在ではない。実際に、文化や習慣を次世代に伝承するのは家族である。教育機関などのそのほかの組織は、これに関してはあくまでも家庭の機能を補う存在にとどまる。特に、イランの家庭は、社会的、文化的なつながりを形成する宗教的な側面を有している。こうした家庭において次世代を担う人々が教育されていく。この明白な特徴は、現状における家族の存続と発展の方法を示している」
このことから、イランの各地では伝統的な家族、現代的な家族、さらにはポストモダン的な家族という3つのタイプの家族形態が見られる、といえます。核家族といえど、今なお両親との強い結びつきを持っています。このため、イランにおける核家族は非常にしっかりしたものだということになります。
さて、それではここでサーラーというイラン人の若い独身女性を例にとってみましょう。彼女は家族とはなれてカナダに留学しますが、国際電話や携帯電話、Eメールなどの手段により、常に家族と連絡をとっています。こうしたやり取りにより、家族の間に心理的に温かい関係ができるのみならず、様々なやり取りや交流、支援が生まれることになります。
サーラーの両親は、定期的に勉学以外に彼女に必要な費用を都合するほか、彼女の好むものを用意し、彼女に送っており、さらに彼女の友人たちにまでもプレゼントを購入しています。
もっとも、このような方法では、家族が直接会うことによる温もりは、幾分薄れてしまいますが、こうした家庭は子供たちが自分の生活文化や習慣から距離を置くことのないよう努めています。
時に、サーラーの家族は彼女に会いに行くために本格的に費用をかけます。それは、サーラーが家族にとって決して切り離せない一員であり、留学期間が過ぎたら彼女が家族のもとに帰ってくる事を知っているからです。次回は、イラン人家族の特徴についてお話しする予定です。今夜は最後に、配偶者との関係をみていくことにいたしましょう。
フランスの作家アレクサンドル・デュマは、次のようの述べています。
「女性の心は、布地のようなもので破れやすく、同時にまた繕いやすい」
女性にとっての喜びや生きる事の醍醐味は、男性の優しさにかかわっています。女性は、自らの感情や愛情を言葉で表現し、具体的な言葉を耳にする事で他人からの感情や愛情を感じる必要があります。女性は、やさしさにあふれた言葉や柔和さを必要としていますが、男性は具体的な行動により自らの愛情や感情を表現します。
女性の愛情面でのニーズは、何度も夫の自身の口から「愛している」という言葉を聴くことであり、これによって女性は自分に対する自身や精神的な安らぎを手に入れます。一方で、男性の特徴の1つは、自分の感情や愛情を余り表には出さず、妻に対する自らの愛情表現に少々苦労するのが普通です。ですが、男性が男女の違いに注目し、少々のやさしさを表に出す事で自分の生活の温もりが増すということに気づいたなら、ほんの少しの努力で自分の感情をもっとあらわにすると考えられます。
それでは最後に、イスラムの預言者ムハンマドの言葉をご紹介し、今夜の番組を締めくくる事にいたしましょう。
"男性が女性に向かって語りかける「愛している」という言葉は、決して女性の心の外へと消え去る事はない”
次回もどうぞ、お楽しみに。