4月 21, 2022 21:02 Asia/Tokyo

皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語のことわざを毎回1つずつご紹介してまいります。

今回ご紹介するのは、「神も欲しいしナツメヤシも欲しい」です。

ペルシャ語での読み方は、Ham khodaa raa mi-khaahad ham khormaa raaとなります。このことわざは、貪欲に全てのものを欲しがる人や、他人に害悪を与えてでも自分だけが利益を得たい人、過剰な要求を押し付けたり自己中心的な人やその状態を意味します。

この表現は、まだイスラムが出現していなかった無明時代、アラブ民族が唯一神ではなく偶像を崇めていた時代の物語が元になっていると言われています。

ある男が大きなナツメヤシ園を経営しており、その年に収穫された最も品質のよいナツメヤシを沢山使って、自分が崇める偶像の形に作り上げました。この男とその家族はそれ以来、毎日この偶像を崇めていました。

さてその後しばらくして大飢饉が訪れ、人々はもちろん、この男と家族はその日の食事にも事欠くようになりましたが、男はどれほど空腹であっても、決してナツメヤシでできたこの偶像には手をつけませんでした。

そんなある日、この男のまだ小さい息子が空腹のあまり、誰もいない間にこっそりこの偶像の体の一部をとって食べてしまいます。男はいつの間にか偶像の体の一部がなくなっているのに気づき、誰の仕業かを見届けることにしました。すると、自分の息子が偶像の一部をとって食べたことに気づきます。息子は、このことを父親にとがめられると、「お腹がすいても食べるものがなかった。だからあの偶像の一部からとって食べた。お父さんはナツメヤシも偶像も欲しいの?」と言ったということです。

この出来事から、何でも自分のものにしたい、欲望の強い人や状態を指して、「神もナツメヤシも欲しい」という表現ができたとされています。これは、ケーキを食べたらなくなってしまうのが惜しい、といったことに似ているのではないでしょうか。何かを手に入れたら何かを失う、という原理はいつでもどこでも共通しているようですね。それではまた。

 


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