騙されるべからず! スポーツは西側にとって完全な政治的代物
今年2月に行われた、アメリカンフットボールの最高峰・NFLの決勝戦(通称:スーパーボウル)で、試合のハーフタイムにシオニスト政権イスラエルからの注文により、パレスチナ・ガザ地区での大量殺戮を正当化する内容の30秒のコマーシャルが流されました。このコマーシャルが放映された最中にも、イスラエル占領軍はガザで人々を虐殺し、数十人のパレスチナ人が殉教しました。
この決勝戦は全世界で1億2300万人が視聴し、大会史上最多の視聴者数を記録しました。このイスラエルの広告に対する国民の反応は少なかったものの、アメリカの政治家がよく口にする「スポーツと政治の分離はどうなるのか」という疑問が提起されています。
誰のためか?
その答えは、政治とスポーツの区別が求められているにもかかわらず、実際にはスポーツが常に米国の政治課題の実現手段として機能してきたことにあります。これは、米国の同盟相手がクローズアップされている時、たとえそれが米国民の税金を使ってパレスチナで大量虐殺に手を染めているイスラエルであっても、スポーツの政治化が必要であるという意味です。
米国の支援を受けたイスラエルによる7カ月間のガザ攻撃において、3万3000人以上のパレスチナ人が殺害され殉教したほか、8万人以上が負傷、さらに200万人以上が難民となりました。こうした犯罪を目の前にしてスポーツ界が沈黙していることは、その偽善と二重基準を物語っています。
抗議と処罰のためのスポーツ
スポーツは常に、不公正に抗議するプラットフォームとして機能してきました。おそらくスポーツ史上最も強烈なインパクトを与えた事例の一つは、1968年のメキシコ五輪における米国代表の陸上選手トミー・スミスとジョン・カルロスの抗議行動でしょう。表彰台に立ったこの2人はひざまずき、拳を突き上げて人種差別に抗議しました。その結果、両選手はブーイングを受けて試合から追放されました。
米国はまた、これまでに何度も敵を懲罰する手段としてスポーツを利用してきました。ソ連がアフガニスタンに侵攻した翌年の1980年には、65カ国に対してモスクワ夏季五輪のボイコットを強制しています。これに対し、当時のソ連および、同国を盟主とした東欧諸国が結成したかつての軍事同盟・ワルシャワ条約機構の加盟国は、1984年の米ロサンゼルス夏季五輪をボイコットしました。
言行不一致
これらの歴史的な出来事に注目すると、スポーツと政治の間で仮定されていた分離がいかに頻繁に破綻するかが見て取れます。ヨルダンのバスケットボール代表チームのザレ・ナジャール選手は、「理想的な世界では、スポーツと政治はあくまでも分離しており、アスリートたちは試合への情愛をもって競技に打ち込める。しかし、歴史は、スポーツがしばしば政治上の情勢変化や表明のための強力な舞台として機能することを物語っている」と語っています。
二重基準
おそらく、ロシアの対ウクライナ攻撃に対する反応と、イスラエルの対パレスチナ攻撃に対する反応とを比較すれば、こうしたダブルスタンダードはより明白になるはずです。前者ではスポーツと政治が絡み合い、ロシアの行動は侵略として処罰に値すると判断されました。これに伴い、各スポーツ機関は西側の喧噪に追随し、声高にウクライナ支持に回りました。その一方で、スポーツの世界におけるパレスチナへの連帯アピールは一切禁じられており、それは今なおも続いています。
スポーツに対抗するイスラエル
2023年10月7日の時点で、イスラエルは250人以上のパレスチナ人を殺害し殉教に至らせました。同年は国連が記録を取り始めて以来、パレスチナで最も死者数の多い年となりましたが、それでもスポーツ組織は沈黙を決め込んでいました。
また、昨年10月7日から12月6日にかけて、イスラエル軍の攻撃により、パレスチナ・ガザ地区とヨルダン川西岸で85人のパレスチナのスポーツ選手が殉教しました。パレスチナ・サッカー協会によりますと、この統計にはサッカー選手55名に加えて他のスポーツの選手30名が含まれているということです。この報告書ではさらに、イスラエルがパレスチナ人のサッカー選手を筆頭とするアスリート、クラブ会長、監督、審判らを標的にしているとされています。
イスラエル軍はほかにも、ヨルダン川西岸のスポーツ施設4カ所および、ガザ地区の5施設を破壊しました。パレスチナ人選手を標的とすることは、長年にわたりパレスチナ人に対するイスラエルの暴力の一環とされてきました。
スポーツ界がパレスチナ人への犯罪には沈黙している一方で、対イスラエル支持は依然として根強いものがあります。NBA・全米バスケットボール協会は昨年10月8日に発表した声明で、イスラエルへの同情を表明し、領土回復を目的としたパレスチナの軍事行動に「テロ」のレッテルを貼り、これを非難しました。
それでも勇気ある人々はいる
しかし、プレッシャーやリスクにもかかわらず、スポーツの世界にもパレスチナ人を支持する人々が存在します。そのうちの一人が女子バスケットボールのスター、ナターシャ・クラウド選手です。
スポーツは政治的なものではないという欺瞞について語る時、あらゆる国際大会への参加を禁止されたロシアと、ガザでの大量虐殺継続にもかかわらず何の影響・処分も受けていないイスラエルの違いを常に頭に入れておく必要があります。
そして、スポーツが政治的なものとなった今、勇気ある人々と独立した各国政府が、イスラエルのスポーツやアスリートに対する大規模なボイコット運動を開始する必要があるかもしれません。