光の彼方への旅立ち、ナムル章(5)
コーラン第27章 ナムル章 蟻 第23節~第28節
慈悲深く慈愛あまねきアッラーの御名において
第23節
「[ヤツガシラは言った。『サバーの土地で]本当に私は一人の女性が人々を治めているのを見ました。彼女には全てのものが授けられ、大きな王座を有しています。』」 』」 (27:23)
إِنِّي وَجَدْتُ امْرَأَةً تَمْلِكُهُمْ وَأُوتِيَتْ مِنْ كُلِّ شَيْءٍ وَلَهَا عَرْشٌ عَظِيمٌ (23)
第24節
「『また彼女とその民は、神ではなくて太陽にひれ伏し、悪魔が彼らの行いを彼らにとって美しいものに見せ、彼らを[真理の]道から遠ざけています。そのために彼らは導かれていません』」 (27:24)
وَجَدْتُهَا وَقَوْمَهَا يَسْجُدُونَ لِلشَّمْسِ مِنْ دُونِ اللَّهِ وَزَيَّنَ لَهُمُ الشَّيْطَانُ أَعْمَالَهُمْ فَصَدَّهُمْ عَنِ السَّبِيلِ فَهُمْ لَا يَهْتَدُونَ (24)
前回の番組でお話したように、ヤツガシラは自分がソレイマーンの宮廷にいなかった理由をこのように説明しました。「私はサバーの土地に行き、そこから重要な情報を持ってきました」 この2つの節は、ヤツガシラの報告を次のように述べています。「そこでは他の土地とは異なり、女性が人々を統治しており、多くの可能性に恵まれ、彼女は壮麗な宮殿の持ち主です」
預言者ソレイマーンが、ヤツガシラが報告で述べたような統治体制の存在に驚いていると、ヤツガシラは次のように言いました。「重要なのは、この女性の王座ではありません。あなたが神の預言者として知っておくべきなのは、その土地の人々が皆、太陽を崇拝しており、様々な罪に穢れていることです。なぜなら悪魔が醜い事柄を彼らに美しく見せているからです。そのために、彼らが導かれるというのは、難しく不可能なことになっています」
第23節~第24節の教え
・神の恩恵に授かっているからといって、それだけでその人が良い人か悪い人かを示すわけではありません。預言者ソレイマーンと、サバーの女王ベルゲイスは、どちらも多くの可能性を享受していましたが、一方は神の預言者で、もう一方は不信心の支配者でした。
・人々は、大抵、その支配者が信じる教えや信条を受け入れます。そのため、統治体制は、人々の宗教的な信条の形成に大きな役割を果たします。
第25節
「[悪魔が彼らを欺き、]彼らが神にひれ伏さないようにしました。天と地の隠れたことを現し、あなた方が隠すことも、明らかにすることも知っておられる神を。」 (27:25)
أَلَّا يَسْجُدُوا لِلَّهِ الَّذِي يُخْرِجُ الْخَبْءَ فِي السَّمَاوَاتِ وَالْأَرْضِ وَيَعْلَمُ مَا تُخْفُونَ وَمَا تُعْلِنُونَ (25)
第26節
「アッラー以外に神はいません。神は偉大な天の王座の主であられます」 (27:26)
اللَّهُ لَا إِلَهَ إِلَّا هُوَ رَبُّ الْعَرْشِ الْعَظِيمِ (26)
ヤツガシラは、サバーの人々の太陽崇拝に関して報告した後、驚いてこう言います。「私には分かりません。なぜ彼らは、天と地の目に見えない事柄を現し、人々の隠すことも明らかにすることも知っておられる神を崇拝する代わりに、太陽を崇拝するのでしょうか?」
天と地の隠れたことを現す、という言葉が指しているのは、雨を降らせ、植物を芽生えさせることです。私たちは皆、最初は種の中に実が隠れていますが、神の力によって、その種の中から美しい芽が出ることを知っています。ヤツガシラの考えでは、神の預言者でもあり、偉大な王でもあるソレイマーンでさえ、崇拝の対象にはなりえません。なぜなら、ソレイマーンの知識は限られたもので、サバーの土地で何が起こっているかを知らないからです。創造世界や人間の全ての隠れたことを知り、いつでも望むときに、隠れたことを明らかにしたり、他人にその存在を知らせたりすることのできる神こそが、崇拝ふさわしいと言います。
第25節~第26節の教え
・崇拝は本能的な行為です。人類は歴史を通して、無生物、動物、人間などの存在物を神聖視し、それらを崇拝してきました。
・太陽などの自然の要素は、植物や動物の成長に大きな役割を果たします。とはいえ、それらには創造主がいます。そのため、神の創造物である太陽自体にひれ伏すのではなく、その創造主である神にひれ伏さなければなりません。
・悪魔が、悪いものを人々の前に美しく映るようにするのは、人々が世界の創造主にひれ伏すのを妨げるためです。しかし、世界の唯一の神にひれ伏すことは、神への崇拝の象徴です。
・世界は偉大なる神の前にあり、誰も、また何ものも、神の目を逃れることはできません。
第27節
「[ソレイマーンはヤツガシラに]言った。『まもなくあなたが本当のことを言っているのか、それとも嘘をついているのかが分かるだろう。』」(27:27)
قَالَ سَنَنْظُرُ أَصَدَقْتَ أَمْ كُنْتَ مِنَ الْكَاذِبِينَ (27)
第28節
「『この私の手紙を持って行き、彼らの方に落としなさい。そして彼らから顔を背け、どんな返事が来るかを待ちなさい』」 (27:28)
اذْهَبْ بِكِتَابِي هَذَا فَأَلْقِهِ إِلَيْهِمْ ثُمَّ تَوَلَّ عَنْهُمْ فَانْظُرْ مَاذَا يَرْجِعُونَ (28)
預言者ソレイマーンは、ヤツガシラの報告を聞いた後、彼がいなかったことの理由を認め、そのために彼を罰することはしませんでした。しかし、彼の報告は重要で熟慮に価するものであったため、それについて自分の意見は述べず、この問題を調査することが必要だと考えました。そのため、自分で書簡をしたため、ヤツガシラに、それをサバーの女王のもとに持って行き、彼女がどのような返事をするかを見届けるよう求めました。いずれにせよ、他者に神への崇拝と導きを勧めるための書簡を記すことは、神の預言者たちのやり方の一つです。歴史では、イスラムの預言者ムハンマドも、ローマとイランの皇帝を導くため、彼らに書簡を送りました。
第27節~第28節の教え
・人々を真理の教えに導くためには、相手の状況や望む事柄に注目し、演説をしたり、書簡を送ったり、あるいは代表を派遣するなど、様々な手段を活用すべきです。
・他人の主張や宣伝をうのみにし、調査を怠ってはなりません。ヤツガシラは自分の知らせは絶対に正しいものだと主張しましたが、預言者ソレイマーンは、それが事実であるかを調べる必要があると言いました。
・反対者に対してあらゆる決断を下す前に、彼らを導くための行動を起こし、その返答や対応に応じて必要な措置を講じましょう。