12月 11, 2021 23:51 Asia/Tokyo
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    聖典コーラン

今回は、コーラン第4章アン・ニサーア、婦人章をご紹介することにいたしましょう。

慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において

コーランの4番目の章は、アン・ニサーア、婦人章です。この章は、女性の権利や戒律に関して多くのことが述べられていることから、「婦人」を意味する「ニサーア」という名前が付けられました。この章はメディナで下され、全部で176節あります。

 

メディナに新しい統治体制が誕生しました。イスラムの預言者ムハンマドは、過去の誤った考え方を人々の頭から消し去り、社会の改革に必要な原則や計画を示しました。そのため、社会の改革に必要な戒律や規定の多くは、アン・ニサーア章婦人にあると言うことができます。

 

「慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において。人々よ、神を畏れなさい。神はあなた方全てを一人の人間から創造された。そしてその人間のために同じ性質のものから配偶者を創造された。そしてその2人から、[地上に]多くの男女を作られた」

 

 

アン・ニサーア章の最初の節は、全ての人間に、神を畏れ、神に従うことを呼びかけ、社会関係における重要な原則への注目を促しています。これによれば、社会の全ての人は、一人の性質から、一組の男女から創造されました。それは、男性も女性も含め、人間は皆、同じ根源を持っており、互いに平等であることを意味します。このことから、他者より優れた人間はいないのです。コーランは、このような表現により、社会関係における優越主義や男女の間の不平等を否定しています。

 

社会や家庭における女性の問題、女性の役割は、歴史の中で、常に学者たちの注目を集めてきました。イスラムが誕生するまで、社会における女性の人格は軽視され、卑しい存在と見なされ、当然の権利を享受できていませんでした。コーランは、このような無明時代の古い考え方に対抗し、女性の高い地位を説明すると共に、女性の権利を確保するような法を定め、それによって、踏みにじられた女性の権利を復活させたのです。このことから、コーランの中では女性の戒律、権利、義務について述べられています。イスラムにおける女性の権利を見れば、女性や家族の権利体系について、コーランがいかに包括的な見方をしているかを知ることができるでしょう。

 

 

ニサーアという言葉は、この章の中で20回以上出てきます。この章では、女性への接し方や女性との付き合い方、家庭の問題、結婚や離婚、結婚資金、相続に関する一部の戒律、その他、家族に関する問題が提起されています。概して、こうした問題について、コーランは誤った伝統を改めようとしています。

 

アン・ニサーア章の第4節は、女性の明らかな権利として婚資金の問題が提起されており、「女性の婚資金は、完全に神からの贈り物として支払われるべきだ」と強調されています。無明時代、女性には全く価値が置かれなかったため、女性の権利であった婚資金は、ほとんどの場合、その保護者の手に渡っていました。イスラムは、このような圧制的な慣習を排除し、婚資金を明らかな権利、贈り物として女性のものとしたのです。

 

保護者のいない子供や恵まれない人への援助、公正な自然の法則に従った財産分与、これらの問題についても、アン・ニサーア章の中で取り上げられています。無明時代、アラブ人は、圧制的な慣習に従って男性のみを相続人として認めており、女性や幼い子供には、遺産を相続する権利が認められていませんでした。そのため、男性が亡くなっても、その妻や子供に遺産を相続する権利はなく、その財産は親戚の男性たちに分与されていました。イスラムは、このような不公正な慣習に反対しました。オウス・イブン・サーベトという名の、メディナの預言者の支持者の一人が亡くなったとき、彼のいとこたちがその遺産を分けましたが、彼の妻と幼い子供には何も与えられませんでした。彼の妻は、預言者の許に言って不満を口にしました。そのとき、コーランの節が下されました。預言者はすぐに彼らを呼び、亡くなった人の財産については関与してはならない。それは一等親族に委ねられると命じました。

 

この戒律は、実際、イスラムが女性の権利を守るために取った別の歩みでした。コーランはこれについて、第7節で次のように語っています。

「男性たちは、両親や親戚が残したものの一部を受け取る。女性たちにも、両親や親戚が残したものの一部を受け取る。それが多かろうが少なかろうが、その配分は定められている」

 

アン・ニサーア章(第5節ー9節)

アン・ニサーア章は、家庭の強化において重要な要素である夫婦の関係について触れています。コーランによれば、夫婦は共同生活の基盤を強めるために、互いに善い態度で接しあう必要があります。アン・ニサーア章の第19節には次のようにあります。

「彼女たちとはふさわしい形で接しなさい」

 

「また、彼女たちとはふさわしい形で接しなさい。またあなた方が彼女たちを嫌っても[、別れを決意してはならない]。あなた方が好まないことはある。神はその中に多くの善を与えるだろう」

 

コーランは、信仰のある清らかな女性との結婚を、健全で確かな家庭を築く出発点とし、無明時代とは異なり、血縁関係にある人との結婚を禁じています。家族の関係は、清らかで価値のあるものであり、あらゆる逸脱を免れていなければなりません。血縁関係にある人との結婚も、こうした逸脱に相当します。

 

創造の秩序は、様々な相違に基づいて打ち立てられています。人間の違いも英知に基づいており、人類社会の相互のニーズを満たすためのものです。しかし、こうした違いは、一方の優位性や利点を意味するものではありません。神は創造の中で、男女に異なる性質を授け、互いに補い合うことで、互いのニーズを満たせるようにしました。歴史的な言い伝えによれば、預言者の妻の一人、オンメ・サラメは、預言者に対し、「なぜ男性たちは神の道における戦い・ジハードに赴くのに、女性はジハードに行かないのか?私たちも男性だったら、彼らのようにジハードに行くことができ、社会的にも彼らと同じ状況にあったのに」と言いました。この質問に対し、アン・ニサーア章の第32節が下され、男性も女性も、それぞれが各々の努力を行うだろうと強調されました。

 

「神があなた方の一部を、他の人々よりも優れたものにする要因となったものを望んではならない。男性たちには稼いだもののうち分け前があり、女性にも、稼いだもののうちの分け前がある。神の恩恵を求めなさい。神は全てのことを知っておられる」

 

結婚により、夫婦の間に強い結びつきが生まれます。しかし、夫婦の間に意見の対立が生じる可能性があります。時には、互いに理解しあえず、それが高まり、共同生活が危機に陥るかもしれません。そのようなとき、コーランは、夫婦の対立を解消するための家庭裁判所のような提案を提示します。コーランは、双方の家族に対し、対立を解消するために働きかけ、彼らの共同生活を崩壊させないように求めています。こうして、男性の一族から一人、女性の一族から一人の調停人が、夫婦の間の問題を解消するために互いに意見を交換し合い、合意の余地があれば、問題を解消するのです。

 

アン・ニサーア章婦人、第35節には次のようにあります。

「夫婦の間に亀裂が生じるのを畏れるのなら、夫の家族から一人、妻の家族から一人、調停者を選びなさい。もし2人に改める気があれば、神は彼らの間を和解させる。神は全てを知る方である」

 

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