光の彼方への旅立ち、ルーム章(1)
コーラン 第30章 ルーム章 ローマ 第1節~第8節
慈悲深く、慈愛あまねき、アッラーの御名において
第1節
「アリフ、ラーム、ミーム」(30:1)
(1) الم
第2節
「ローマ人は[イラン人に]敗北を喫した」(30:2)
(2) غُلِبَتِ الرُّومُ
第3節
「[アラブ人に]最も近い土地において。だが彼らはその敗北の後、すぐに勝利するだろう。」(30:3)
(3) فِي أَدْنَى الْأَرْضِ وَهُمْ مِنْ بَعْدِ غَلَبِهِمْ سَيَغْلِبُونَ
第4節
「数年のうちに。これ以前にもその後にも、物事のすべては神の手の中にある。その日、敬虔な人々は神の助けにより、喜ぶだろう。」(30:4)
(4) فِي بِضْعِ سِنِينَ لِلَّهِ الْأَمْرُ مِنْ قَبْلُ وَمِنْ بَعْدُ وَيَوْمَئِذٍ يَفْرَحُ الْمُؤْمِنُونَ
第5節
「神は誰でもお望みの者を助けられる。神は寛容で愛すべき方であられる」(30:5)
(5) بِنَصْرِ اللَّهِ يَنْصُرُ مَنْ يَشَاءُ وَهُوَ الْعَزِيزُ الرَّحِيمُ
歴史的な資料によれば、ローマ帝国とイランの王朝は、長年に渡って争っていました。イスラムの預言者ムハンマドがメッカにいたとき、アラビア半島の近くで、ローマとイランの戦争が起こり、ローマ人が敗北を喫しました。神は預言者に対し、ローマ人は敗北したが、次の戦争では勝利するだろうと伝えました。この予言が実現したため、敬虔な人々は、神による彼らの多神教徒に対する勝利という約束も実現されるという確信を得ました。全ての事柄は神の手の中にあり、神はお望みの者を助け、栄誉と慈悲を与えてくださいます。
節の教え
● コーランが、目に見えない出来事を明らかにしたり、予言したりしていることは、この偉大なる書物が奇跡である理由のひとつです。
● 敗北によって希望を失ってはなりません。常に神の助けに希望を抱きましょう。
● 神の行いは英知に基づいています。信仰を寄せた人々の勝利も敗北も、神の英知によるものです。敬虔な人間は、自分の責務を果たす必要がありますが、その行いの結果は彼らが決めるのではなく、神のみが決定するものです。
第6節
「これは神の約束であり、神が約束を破ることは決してない。だが、多くの人はそれを知らない。」(30:6)
(6) وَعْدَ اللَّهِ لَا يُخْلِفُ اللَّهُ وَعْدَهُ وَلَكِنَّ أَكْثَرَ النَّاسِ لَا يَعْلَمُونَ
第7節
「彼らは現世の生活の表面だけを知り、来世のことは考えず、何も知らない」(30:7)
(7) يَعْلَمُونَ ظَاهِرًا مِنَ الْحَيَاةِ الدُّنْيَا وَهُمْ عَنِ الْآخِرَةِ هُمْ غَافِلُونَ
前の節は、敬虔な人々が多神教徒に勝利するという神の約束ついて述べていました。この2つの節は、次のように語っています。「人々よ、神の約束を疑ってはならない。これは神の絶対的な約束であり、それが破られることはない」
とはいえ、神を信じていない人、あるいは信仰心が弱い人は、神の約束を信じていません。彼らは、神の英知や力、知識を正しく認識しておらず、表面的な物質的手段のみを目にし、勝利や敗北を物質的な要素で解釈します。彼らは来世のことをまったく考えず、すべてのことを、現世という限られた範囲で考え、世界の真理を理解することができないのです。
第6節と7節の教え
● 約束を破るという行為の根源は、通常、無知や無力、後悔です。しかし、神はこれら全てとは無縁の存在です。
● 現世や物質的な要素への執着は、浅はかで表面しか見ない人間を育てます。
● 現世の表面的な事柄に注目し、執着すれば、来世を忘れてしまいます。
第8節
「神は天と地、その間にあるものを、ただ正当に、決められた時期に創造したことを彼らは考えないのか?明らかに、多くの人々は、主との面会を否定する」(30:8)
(8) أَوَلَمْ يَتَفَكَّرُوا فِي أَنْفُسِهِمْ مَا خَلَقَ اللَّهُ السَّمَاوَاتِ وَالْأَرْضَ وَمَا بَيْنَهُمَا إِلَّا بِالْحَقِّ وَأَجَلٍ مُسَمًّى وَإِنَّ كَثِيرًا مِنَ النَّاسِ بِلِقَاءِ رَبِّهِمْ لَكَافِرُونَ
この節は、コーランの他の多くの節と同じように、人間に創造世界について考えることを呼びかけ、理性と良心に訴えかけるよう求めています。実際、天と地を創造したのは誰でしょうか?この創造は目的もなしに行われたのでしょうか?世界には明らかな始まりと終わりがないのでしょうか? 人間は理性を持ち、計画的に事を行います。それなのに、人間をその小さな創造物のひとつとする、これほど大きな世界が、理性と計画に沿って管理されていないはずはありません。私たち人間の生活は現世で終わり、別の世界は存在しないなどということを受け入れることができるでしょうか?
とはいえ、現世に執着する多くの人は、来世と神の審判を否定します。そうすれば、何の不安もなく、現世を楽しむことができるからです。しかし、考える人間は、創造世界には論理的で正しい目的があることを知っており、世界の創造には、創造主の英知を示す明確な秩序があることを信じています。
第8節の教え
● イスラムは、人間の信仰が、正しい認識と知識に基づいたものとなるよう、人間に創造世界について考えるよう呼びかけています。
● 創造は、目的に沿ったものであり、決められた時期があります。
● 最後の審判を否定する根本は、論理的な考え方ではなく、現世への執着にあります。