キャシュク
今回は、「キャシュク」と呼ばれるイランの乳製品について、お話し致しましょう。
イランの領土は、さまざまな気候風土を有しています。そうした自然の特徴は、人間の生活のさまざまな面、社会的、経済的、文化的な側面にも影響を及ぼすものです。一般に、気候風土は、人間の生計を立てる方法や食べ物の種類、食に影響を与えます。
イランには西部のザグロス山脈をはじめ、数多くの山々が存在しますが、このことはイランでの畜産業の拡大に繋がっています。畜産業は、畜産品の生産という点で、この地域の経済に影響を及ぼしている他、山岳地帯やその周辺の町の食文化にも重要な役割を果たしています。
この地域の住民は、牛乳、ヨーグルト、生クリーム、チーズ、バター、油といった畜産品を一年を通して、食に取り入れています。こうした中、重要な食材と見なされる乳製品は、そのまま、あるいは他の食材と一緒に人々の口に運ばれています。乳製品は地域の人々の手による伝統的な方法と、工場での機械を使った方法の二つによって、生産されています。
牛乳は、最も重要な乳製品で、殺菌消毒したものがそのまま飲まれたり、乳製品に加工されたりしています。牛乳を沸騰させ、ヨーグルトを少量加え、適切な温度で保存すると、ヨーグルトが出来上がります。ヨーグルトに水を加えたものが、ドゥーグで、イランではポピュラーな飲み物となっています。
ヨーグルトやドゥーグは、昼食や夕食時に、メインの料理とともに出されます。また、牛乳を加工して、バターや油、チーズが作られます。今日、チーズは、多くが機械化された工場で生産され、さまざまなパッケージで市場に供給されています。
キャシュクは、ドゥーグを沸騰させ、攪拌して脂肪分を取り除いた後に、凝縮、乾燥させたもの、あるいは脂肪分なしのヨーグルトを煮詰めて乾燥させたものです。
キャシュクの原料は、羊、ヤギ、牛の乳、あるいはそれらを混ぜたものから出来ています。キャシュクはわずかな量に、乳に含まれる全ての成分が凝縮されています。キャシュクには、カルシウム、脂質、塩、タンパク質、ナイアシンが含まれており、100グラムでおよそ105から120キロカロリーになり、エネルギー源のひとつとして、日々の食生活に取り入れることが出来ます。また、有機酸が含まれるため、胃や小腸、大腸の殺菌も行います。
キャシュクに乾燥ミントを混ぜたものは、消化を助けるとされています。さらに、カルシウムとリンが多く含まれるため、骨粗鬆症の予防にも効果的です。一般に、キャシュクは栄養価の高い食材として、少量でも満腹感を感じさせます。また、うどん入りイラン風スープ「アーシュ・レシュテ」や大麦のスープ、茄子の煮込み料理に添えられたり、イランの伝統料理の主要な材料に使われたりします。
しかしながら、キャシュクは、動物性タンパク質を豊富に含む食材であることから、さまざまな細菌を繁殖させ、多くの場合、激しい中毒を引き起こしたり、死に至る可能性があります。このため、キャシュクは工場で殺菌消毒されて、パッキングされています。殺菌消毒されたキャシュクは、必ず冷蔵庫で保存します。イランの農村地帯などでは、キャシュクの材料を丸めて、太陽の下で乾燥させ、年間を通して利用出来るようにしています。使用するときには、乾燥させたキャシュクを数時間水に浸し、それを器の中で潰して、液体にします。
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