イランの古代史跡、ファラコル・アフラーク城砦
イラン西部ロレスターン州にある城砦、ファラコル・アフラーク(ペルシア語で「諸天の天」の意)は、西暦7世紀に遡る壮観な史跡で、毎年イラン国内外から多くの観光客が訪れています。
ロレスターン州ホッラムアーバードの丘の上にあるこの城砦は、イランで最も重要な史跡の一つです。この史跡は同国の国定文化財に指定されているほか、ユネスコ世界遺産への登録を現在申請中です。この壮観な城砦の歴史はサーサーン朝時代 (西暦3世紀~7世紀) に遡り、毎年国内はもとより国外からも多くの観光客が訪れます。
パールストゥディの本記事では、ロレスターン州の宝石とも称されるファラコル・アフラーク城砦の魅力をたっぷりとお伝えしてまいります。
立地と歴史
ファラコル・アフラーク城砦は「12本の塔」城砦としても知られる、国内有数の史跡・観光名所の1つで、ホッラムアーバード市内中心部にある古い丘の上に位置しています。この城砦はサーサーン朝時代の西暦651年に建設され、史料によれば、各時代の王たちの統治の拠点とされていたほか、一時期は刑務所としても使用されていたました。
城砦の名称
この城砦は総面積が5300m2にも及び、石、焼成レンガ、日干しレンガ、石膏、石灰が資材として使われています。
この城砦は史料の中で、シャープール ・ハースト砦、ホッラムアーバード城砦などの様々な名称で登場しています。「諸天の天」を意味するファラコル・アフラークという名は、ガージャール王朝(1789~1925年)に付けられたもので、以降はこの名称が広まりました。ファラコル・アフラークの名は、この城砦が12の星座を現す12本の塔を有することにちなんでつけられた説があるほか、容易に手が届かない場所という比喩的意味があったという説があります。
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城砦の構成
この城砦は大きめの広い空間、2つの静かな中庭、複数の小さな空間や室、そして北側にある複数の門で構成されています。またその最も重要な部分として古代から残る12本の高い塔があり、現在ではそのうち8本が残されています。
城砦の建築的特徴
城砦の建築において最も重要なことは、適切で丈夫な障壁を造ることだと考えられています。ファラコル・アフラーク城砦は、さまざまな時代に統治政体の要塞として使用されてきました。そのため、この城砦の周囲は南東部の川沿いの10ヘクタールにも及ぶ防護壁が築かれています。また城砦の南部を流れるホッラムアーバード川も、堀に代わる存在としてこの城砦を防衛する役割を果たしていました。
この城砦の全体的な形状は正五角形で、複数ある塔の規模はまちまちです。城砦の壁は石灰でできているため、湿気が内部にとどまる仕組みになっています。城砦内には、古代イランの技術者の発案・工夫により、排水用の地下道が掘られています。また、城壁の防護効果をさらに高めるため、多数の木製の枠やつっかえ棒が使用されているほか、ひし形状に施されているレンガ造りが目を引き、さらに、城砦内の第一の中庭の西壁には、モルタルをふんだんに使った唐草模様も見られます。敷地内の一角に建つ複数の塔は、そのうち2本だけが見張りや監視に使われていたということです。
時代を経ても残る城砦内の井戸
ファラコル・アフラーク城砦で最も神秘的な部分は、第1の中庭の北東に位置する、深さ40m以上に達する井戸です。この部分に井戸が掘られたのは、この城砦が水源に近いことが理由だったと見られています。
この城砦の井戸の壁には、150個もの立方体状の穴が開けられており、井戸を上下できるように造られています。井戸の石壁に使用されたモルタルや陶材は、サーサーン朝以前の時代のものとされています。興味深いのは、この井戸の底には今でも水が流れており、その水は飲料水として利用できるということです。
城砦内の博物館
ファラコル・アフラーク城砦の敷地内には、充実度の高い博物館であるロレスターン民族博物館が設置されています。この博物館は、古代部門と民族部門の2つの部門に分かれており、古代部門には12の展示ケースがあって、非常に古い石碑や石製の発掘品、陶器といった50の遺物が並べられています。
多数の観光客が見学
驚かされる見所に溢れたこの城砦には、毎年国内各地はもとより国外からも多数の観光客が訪れます。城砦の建物は、イランの建築技術分野の価値ある数百の建物の1つに数えられ、昔より驚きと注目の的となっています。